晴れた日に 2389字
晴れた日に青空を見上げると、直感が解放される。大きな空に私の感性がすべて吸い込まれる心地がするの。心身がのびのび出来てうれしい。私の感性が無意味と思えてうれしい。
青空から視線を下ろすと、途端に直感が働き出す。多くの情報が波のように押し寄せて、心身は委縮して、自分の感性に蓋をしてしまう。現実と名付けて。
世の中、いい事も悪い事もあって、フラットな物を求めて、お花だったり木だったりを探す。ニュートラルな私を探す旅。
バンプ・オブ・チキンの歌詞を思い出す。生きている、場所を取る。あるいは、宇多田ヒカルの歌詞を思い出す。誰かの願いが叶う頃、あの娘が泣いてるよ。
私の体の容積と、心の大きさの変えられる可能性に感謝する。生きていいのだ、と信じる事で、現実と遊ぶ覚悟を決める。
希望は誰のためにあるのだろう。
昨日の夕方、私は帰宅して、自転車を押して自分のアパートに入ろうとした時だった。40メートルほど先の並びの家の玄関前で、郵便局の配達員さんがバイクを止めて、何やら片付けをしている模様だった。散らばった植木鉢の割れた破片などを。
私は瞬時に、『ああ、おそらく運転していたバイクが植木鉢に当たってしまったのだろうな』と直感した。私には関係ない、このまま自転車を駐輪場に止めて、2階に上がって家に入ろう。玄関まで来て、もう1度だけ、現場を見た。すると斜め向かいの家から、初老の男性が一軒家の玄関からのそのそと出て来て、玄関先に釣ってある箒を持って、そちらへゆっくり歩いてゆくのが見えたのだった。
『ん~、あの兄さん、チリトリ持ってないな』。私は思い直して、家の鍵を開けて、中から小さな箒とチリトリを取り出して、現場に向かうことにした。郵便局の配達員さんに「お困りですか?」と尋ねると、「いやね、バイクで植木鉢の棚にぶつけてしまって」と仰る。初老の男性は、黙って散らばった植木鉢の破片や土を箒で掃いて、一か所に集めていた。
おそるおそる、その男性に「チリトリ使いますか?」と尋ねると「いや、いいです」と仰った。夕方5時台で、現場の家の人は帰っていないよう。留守のようだった。
配達員さんは、その日の内に配達しなければならない仕事が残っているだろう。携帯電話を取り出して、おそらくは配達元の郵便局に電話をしているようだ。連絡をして、上司にも判断を仰ぎたい旨を伝えていた。家の人に会えない限り仕方が無い。またのちほど、再びその家に伺わなければならない事にするしか無いようだった。
初老の男性は、簡単に片づけを終えると、黙って自分の家の方に帰ってゆく。私はしばらくその場に残ったけれど、そこでじっとしていると寒くなって来た。私が居ても拉致はあかない。「一旦帰りますね。寒くなってきたので」。配達員さんは「ありがとうございます」と仰った。家に入ろうとする男性に「ありがとうございます」と告げて、私も帰ることにした。しばらく配達員さんは仕事に戻るだろうから、現場の家の人が帰って来るのを、時折見れたらと思った。私の家の玄関先から現場は見える。
いったん首を突っ込むと、自分事のように思えてきて、気になる。とりあえずは、自分のすべき事をする。家に帰って、荷物を片付けて、少し休む。今日も何かと疲れた。いつもなら家の中でホッとする時間だけど、どうにも気になって仕方が無い。3~40分後に、玄関先に出て様子を伺うことにしよう。午後6時も過ぎれば、家の人も仕事などから帰宅しているかも知れない。現場を目の当たりにする事になるだろう。
こたつに入って暖を取る。note を眺める。今日の事を書きたいが、まだ私の一日は終わっていなくて、すっきりしないまま書けないのだった。
便意を催して、トイレでゆっくりする。その間も気になって仕方が無かったけれど、自分の生活ペースを意識して、お手洗いをゆっくり済ませた頃に、玄関先へ出てみようと思った。丁度、小1時間は経っている事だろう。
お手洗いをゆっくり済ませて、まさか、なんて思いながら玄関先へ出てみた。外はもう真っ暗だ。家々の明かりがぽつぽつと光っていて、道は見えない。現場の方に目を遣ると、そのまさか、丁度若いお姉さんらしき人影が、その現場の家に帰って来る事のようだった。
しばらく見つめていると、やはり現場にとどまって何かしている。おそらくは家の人だろうと決めて、私は現場に向かった。
暗い道から、素性の知らぬ私が若い女性に話し掛けるのは不審者がられるとは思ったけれども、お知らせする以外に無い。意を決して「ごめんください。あの~、この状態について、郵便局の方から何か連絡とかありました?」
論理だてて順序良く説明が出来ず、いきなりそういう聞き方をしてしまった。しかしながらお若い女性は落ち着いた声で「いいえ」と答えた。
私はかいつまんで、自分の見た事、した事を説明した。大方はご理解くださったようで、私は伝えるべき事だけは伝えたと思い帰る事にした。しどろもどろだった私は、なんだかバツが悪かったけれど、「ありがとうございます」と言われて。女性はひとまず、初老の男性の家に向かった。呼び鈴を押して「ありがとうございました」と仰っていた。おそらく普段から親交のあるようだ。多分、あとは何とかなる(する?)だろう。配達員さんのお名前も伝えてある。
私は自分の家に入り、やっと一日を終えた気分になった。もやもやが消えて、ホッとした。
夕飯を食べ終えたら、疲れがどっと来て、今日もすぐ寝てしまった。目覚めると午後11時になろうとしていた。今日も丸いお月さん見えるかな。玄関先へ出てみる。夜空のてっぺん、およそ午前11時の方向に丸い月が見えた。おとといの夜に見た月よりは、少しぼやけた月だった。私はお月さんに感謝した。ありがとうございました、と心の中でつぶやいた。
(おしまい、2389字)
☆彡
シロクマ文芸部にお世話になります。つる です。今回のお題は『晴れた日に』から始まる詩歌やエッセイ、小説などを書くことのようです。
気が付いたら、一所懸命に昨夕あった事を逐一書いておりました。今は早朝ですけれども、疲れましたのでもう一度寝ます。それではまた。みなさまのご無事を。ご自愛くださいませね。日々感謝、ありがとうございます。
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