019_サザ◯さんのお父さんより年上ですが
昨年末、ついに「360度カメラ」という文明の利器を買ってしまった。
周囲には「いやぁ、風景を撮るときに全方位を残しておけば、撮り漏れがなくて便利だからなぁ……」と、いかにももっともらしい理由をドヤ顔で語っている。
だが、ここで正直に白状しよう。
本当の目的は、「自撮り」である。
気がつけば私も57歳。年齢的には、あの国民的アニメ「サザ◯さん」のお父さん(永遠の54歳)を完全にすっ飛ばして、年上になってしまった。
少し前までは、街中で若者たちがスマホを掲げてキメ顔で自撮りしているのを見て、
「そんなに自分の写真が撮りたいのかねぇ〜」
なんて、ちょっと斜に構えて見ていたのだ。頑固オヤジの一歩手前である。
だが、人生どこで転がるかわからない。最近になって「自撮り、めちゃくちゃアリだな」と180度方針転換することになった。
きっかけは昨年9月、ふと思い立って出かけた小豆島旅行だ。
お目当ては、ある大人気マンガ(アニメ化もドラマ化も映画化もされた、あの甘酸っぱいやつ)の舞台。あのお父さんの年齢を超えてから、まさか自分が“聖地巡礼”デビューするなんて、人生の予定には一ミリも入っていなかった。
現地で山の上に立つと、瀬戸内の風景が本当に美しくて「すべてを写し取りたい!」と胸が熱くなった。
……というのは建前で、本音を言えば、その聖地である神社や階段、高台で、
「ついに憧れの聖地に立てた! この場所にいる自分をしっかり残しておこう」
という、少し高揚した大人のワクワク感を、どうしても形にしておきたくなったのだ。
その時はまだ360度カメラを持っていなかったので、スマホを必死に伸ばして、通行人の邪魔にならないようコソコソと自撮りした。50代男の限界ソロ自撮りである。
ところが、帰宅後にその写真を見返してみると、これがもう、たまらんほど立派な思い出になっていたのだ。
写っているのは、ちょっと照れくさそうに笑う私の顔と、お気に入りのミラーレスカメラ、日除けのためにかぶっていたちょっと大きな帽子、そして「長い距離を歩くには、どの靴が最適か……」と、出発前に自宅で散々迷った末に選んだ一足。
風景だけの写真よりも、自分の姿がそこに 1ピース 入るだけで、旅の記憶の解像度が爆上がりする。
「そうそう、あの時はあれこれ悩んで、この靴を選んで大正解だったんだよなぁ」
画面の中の自分と答え合わせをしながら、部屋で一人、ニヤニヤと笑ってしまった。客観的に見れば、ちょっと危ないアラ還一歩手前の男だっただろう。
そんなこんなで、禁欲の神さまと物欲の女神が激しい脳内会議を重ねた末、年末に「えいやっ!」と360度カメラを購入した。
実際に使ってみると、これが思っていた以上に楽しい!
自分の周囲すべてが写るから、不自然に腕を伸ばす必要もないし、なんならちょっと未来のガジェットを使いこなしている感があって所有欲も満たされる。詳しいレビューはまた別の機会にじっくり書くけれど、今のところ「買ってよかった」と素直に大満足している。
いい歳のオヤジが、最先端のカメラをぶん回して自撮りを楽しんでいる姿を見たら、もしかするとあのお父さんから「バッカも〜ん!」と一喝されるかもしれないが……。
まぁ、怒られたっていいじゃない。
だって、一度知ってしまったこの楽しさ、もうやめられない…。
