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泣き虫ユニバース 第3話|研究者、涙の初速を追え!

⏰ 17:55の魔法、泣き虫ユニバース第3話をお届けします。
月曜の涙と笑いを、あなたのひとときに。

プロローグ

 泣き虫村のはずれに、白い小屋がある。
 外壁には大きく「研究室」とだけ書かれているが、村人はそこを「涙小屋」と呼ぶ。
理由は単純だ。中に入ると、床まで涙でひたひたに濡れているからだ。

【研究者】「本日の実験テーマ:“感動の初速”。涙が心に芽生えてから、頬を伝うまでの速度を測る!」

 白衣の胸ポケットにはスポイトと塩分計。机の上には分厚いノート。ページはどれも涙でしわしわに波打っていた。

実験開始

【研究者】「では、サンプルを採取します」

 そう言って、研究者は自分で昔の日記を読み始める。
 数行で嗚咽。スポイトを構える間もなく、涙が床に滴る。

【研究者】「……失敗! サンプル採取前に涙腺決壊!」

 机の端に置かれた砂時計は一秒も経っていない。

【研究者】「dT/dt=∞……つまり、“感動の初速”は測定不能。だが、それこそが研究の価値……!」

 彼は再び涙を拭い、次の実験に移る。

仲間の訪問

 そこへ、泣き虫外交官が訪ねてきた。手にはチョコアイス。

【外交官】「休憩条約を結びましょう。アイスは心を落ち着かせます」
【研究者】「ありがたい……しかし実験中に甘味はデータを乱す! Δ塩分濃度が一定でない!」

 外交官は首をかしげる。

【外交官】「データより大事なのは、あなた自身の心の安寧では?」
【研究者】「それも……真理だ……」

 あっという間に涙。スポイトが震えて塩分計を落とす。床でカシャンと音を立て、さらに涙が増えた。

暴走するデータ

 やがて探検家とコレクターも入ってきた。

【探検家】「半額シールの譲り合いデータ、持ってきました!」
【コレクター】「“お先にどうぞ”ポイント、本日20件分です!」

【研究者】「なんという……! Σデータ=∞……処理不能!」

 ノートに書き写そうとするが、涙でインクがにじむ。文字は読めず、ただ模様のように広がる。

【研究者】「この模様すら……フラクタル……! 涙はカオスの集合かもしれない……!」
【探検家】「ポジティブすぎない?」

 床の水位がじわじわ上がり、足首までひたひたに浸かる。

スポーツ選手の乱入

 ドアがばーんと開き、泣き虫スポーツ選手が飛び込んできた。

【スポーツ選手】「涙リレーに使う涙を探してたら、ここだー!」
【研究者】「やめろ! 研究中のサンプルが……!」

 しかしもう遅い。スポーツ選手は床の涙をバケツで汲み上げ、走り出す。

【スポーツ選手】「涙は走れば蒸発しない! ゴールに届ける!」

 部屋の中はさらにびしょ濡れ。実験器具も何もかも水浸し。

【研究者】「私の……大切な……データが……! ∆V<0……!」

 肩を落とす研究者。その頬を、また新しい涙が伝った。

クライマックス

 全員で必死にタオルを持ち寄り、研究室を拭く。
 だが拭けば拭くほど、誰かが泣き出し、また床は濡れていく。

【外交官】「これはもう、終わらないループです……」
【探検家】「でも、それこそ冒険!」
【コレクター】「やさしさポイント、∞(無限)です」
【スポーツ選手】「涙マラソン、世界記録更新!」

 研究者は机の上にしゃがみ込み、震える手でノートを開いた。

【研究者】「結論……“感動の初速”はゼロ秒。思考より速く、涙は落ちる」

 その言葉に、全員の涙が一斉にあふれ出す。

エピローグ

 夕暮れ。研究室の窓から、オレンジ色の光が差し込む。
 床はまだ濡れていたが、どこかきらめいて見えた。

【研究者】「今日もデータは失われた……だが、心には残った。これもまた研究成果だ」

 そう言って彼はノートに一行、滲む文字で記した。

《lim Δt→0, Δ涙/Δt=∞》
※泣き虫村の数式訳《ほんの一瞬で、涙の流れる速さが無限大になる》の意。

【司会(私)】「研究者のソロ回、これにて閉幕──」
【誰か】「……なんのはなしですか」

 笑いと涙の声が、涙小屋にこだました。


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つなぐ|HIROMI🌸  
平和の種を蒔く人


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