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【全3回・第2回】阿蘇特有の品種「あか牛」の繁殖を手掛け、地域の畜産の持続性を高めるために奮闘

畜産農家(黒毛和牛/あか牛)
阿蘇市/木之内勇樹さん

最初の2年あまりは無収入に近い状態…

 中学時代の原体験をきっかけに畜産の道を志し、20歳で念願の就農を果たした木之内さんでしたが、ゼロからのスタートだったので、その道は決して平たんではありませんでした。最初は牛舎を建てる資金もなく、阿蘇市波野の畑だった場所にハウスを建て、その中で数頭の牛を飼育することから始めました。その後、牛舎を建て、牛も増やし、少しずつ規模を拡大していったものの、種付けを始めて最初の出荷までに2~3年かかるため、それまではほぼ無収入でした。「私は実家のいちご農園の仕事を手伝ったり、妻がアルバイトをしたりして、どうにかやり繰りしていました」と、当時の苦労を振り返る木之内さん。

 その後、ようやく経営は落ち着いたものの、当初は黒毛和牛中心の繁殖を行っていました。その理由について、「経営的なことを考えると、どうしても高く売れる可能性がある黒毛の方が多くなります。あか牛は、底値が高い代わりにそこまで高く売れることがなく、利幅が少ないのです」と説明します。

消費者の嗜好の変化であか牛の頭数も増加

 経営的な安定を優先し、当初は全体の1~2割程度しかあか牛を飼育していなかった木之内さんですが、その後、徐々にあか牛の比率を増やしていくことになります。そのきっかけとなったのは、消費者ニーズの変化。
 
 「以前は消費者のニーズが霜降り中心で、以前は貴重だったA5ランクやBMS(ビーフ・マーブリング・スコア=牛肉の霜降り度合いを評価する指標)が10~12の肉が珍しくなくってきました。そうした中で、消費者の健康志向などもあり、徐々に赤身が見直されるようになって需要が高まってきたので、あか牛の頭数を増やすようになりました」と木之内さん。その結果、現在ではほぼ全体のほぼ半数まであか牛の比率が増えています。

 あか牛は、元々は農耕や運搬用に飼われていた牛で、暑さや寒さに強く性格がおとなしいため、放牧に適した品種として阿蘇地域で多く飼われています。

希少な品種ならではの飼育の難しさも

 一方で、あか牛特有の飼育の難しさもあります。その一つが、ほぼ熊本県内のみで改良が完結している点です。一般的にあか牛と呼ばれている牛は、「褐毛(あかげ)和種」という和牛の一種で、日本で飼養されている和牛の約1~2%程度。しかも主な産地は熊本県と高知県と限られています。そのため、黒毛和種に比べて血統分散が難しく、遺伝的な病気が増えているのです。また、元々農作業や物資の運搬に使っていたので大柄で頑強なため、表面的には体の不調が見分けにくく、気付いた時には悪化していることもあるとか。

 そうなる前に対処できるよう木之内さんが大事にしているのは、「一頭一頭をしっかり見ること」。エサやりなどで日々あか牛を目にする際に、些細な変化も見逃さないよう細部まで観察することで、病気や体調不良の早期発見につながります。「牛舎が3カ所に点在しているので毎日全部の牛を見ることはできませんが、それでもできる限り足を運んで自分の目で確認するようにしています」と、牛たちへの愛情を込めて話します。

 経営の安定、あか牛の飼育の難しさ、そして一頭一頭の小さな変化を見逃さない日々の積み重ね。木之内さんの畜産は、牛たちと真摯に向き合う時間の上に成り立っています。では、そうした現場を次の世代へ、そして阿蘇の未来へどうつないでいくのか。

 最終回となる次回は、木之内さんが考える地域畜産のこれから、担い手育成への想い、そして消費者に伝えたい畜産の価値についてご紹介します。

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