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荒川に跨がる橋を大きな音を立てて走る東西線。窓に映る建物が詰まるように並ぶ都会の景色。都会の象徴スカイツリー。

埼玉の田舎で寮生活をしていた大学一年の冬、初めて物件の内見に行った。市ヶ谷駅で降りて不動産屋さんに行き、バイトのお兄さんに案内されて一緒に飯田橋で乗り換えて東西線に乗った。お兄さんにとっては日常的な都会の電車移動も、私にとっては遠足だった。西葛西の物件を内見して、七階のベランダから見える景色に身を乗り出しながら即決した。高校一年生からの寮生活がやっと幕を閉じるという嬉しさと、憧れの東京生活に、目に映る世界全部が光って見えた。

内見した物件とは違って実際に住むのは五階だった。私が心を奪われた景色は見えなかった。ガーン。まあ初めてなんてそんなもん。気を取り直して母に手伝ってもらいながら一緒に荷解き。ベッドや家電、これが全部自分だけものって生活。それだけで既に最高。初めの一週間はマットレスが届いていなかったので段ボールを敷いて寝た。満員電車に毎朝絶望しながら、でも当時はこれぞ東京の醍醐味なんて思って自分のバキバキの身体を東西線に押し込めた。いつの間にか立って寝る技も習得した。テスト期間中はテスト勉強と称して、仲良し5人、うちの家の前にあるすき家で牛丼を買って帰り、テスト勉強の腹ごしらえなんて言いながら女子大生らしい可愛さのかけらもなくバクバク食べて、腹を満たした後は「恋仲」を見て女子大生らしくキャーキャー言って寝た。

念願のサークルに入り、飲み会のあとはよく一人で駅前のラーメンを食べて帰宅した。あっという間に太った。サークルの男子とちょっといい感じになってきて、夜の葛西臨海公園に行って男子と二人で観覧車に乗った。初めて怖さより緊張が勝った。朝まで電話を繋いだまま寝るということも初めてした。高校生の頃は寮生活で寝る時間は携帯を触ってはいけないルールだったし、そもそも同室の先輩やら後輩が一緒に寝ているので不可能で、彼氏がいてもそんなことできなかったのだ。当時は、もうこのまま付き合う以外何があるんだろうなんて浮かれていたけど彼は一向に告白してこなかった。今思うと、相手は生粋のチャラ男だったし、私が未経験なあまり、電話がかかってきても切ったり、寝落ち電話なんかを最初は断ったりしていたので、それが逆に相手には「おもしれぇ女」的な感じになったのかもしれないが、相手に好かれたいと思ってしまった時点で私は「おもしろくねぇ女」になってしまったので、まんまと沼に落ちて痛い目にあった。

ある日、仲良くしてくれていた、1年の頃からサークルに入っていた友達に恋愛相談をされて、相手がその男子だと知った瞬間、あっという間に私の恋は朽ちた。私は友達と敵対してしまうような恋愛が昔から好きじゃない。友達の好きな人のことは好きになれないし、誤解されるようなことは絶対にしないと心に決めている。というのも小6の時、学校のボス女子が私の幼馴染を好きになったことがあったのだが、私が親友と教室で会話していてパッと振り返ったら、座っていた幼馴染の膝の上に乗るように私が転んでしまったところを登校してきたボスに恋愛ドラマかってくらいのベストタイミングで見られてしまい、しばらく嫌な顔をされた経験があるからである。好きな人と自分が結ばれたとしてもその裏で嫌な気持ちになる人がいるって考えるとそれは途端に恋ではなくなってしまう。とはいえ、朽ちたことにより一定期間はやっぱり凹んだので、自主休講!なんて言って頭が痛くなるくらい寝て、ゴロゴロしてTSUTAYAで借りた「永遠の0」を見てボロボロ泣いてまた頭が痛くなって、お腹が空いたから牛丼食べたりしてたら割と元気になった。

自分の心をデトックスした次の日の朝、久しぶりに洗濯物を外で干すかと窓を開けたらベランダにあいつが一匹死んでいるのが見えた。私は一匹なら自分で殺せる男前な面もあったけど死んでいたので何事もなく箒でサッとやるかと思い箒を持ってもう一度ベランダに出ようと思った時、よく見たら一匹だけでなく、そこには五匹以上死んだあいつが転がっていた。流石にヒィ!ってなって窓を完全に閉め、ベッドの上からしばらく動けなくなった。足がサワサワする感じ。当時はTwitterに出来事を呟いたら大学生一人暮らしあるあるすぎて恰好のネタになりいいねをもらったが私が欲しかったのはいいねではなくそういう時にすぐ駆けつけてくれる心強い彼氏だったかもしれないと思った。結局、父と母が茨城から来てくれて、父が箒で全部掃いて捨ててくれた。母はタバコを吸う人だったので、うちに様子を見に来てくれていた時よくベランダで吸っていたのだけれど、そのたびに隣の家のベランダから少しうちにはみ出ているゴミ袋が気になっていたらしい。恐る恐るのぞくと隣人のベランダはゴミ袋でパンパンだった。まさか自分が隣人ガチャを外すなんて思っても見なかったのだけど、近くに飲み屋も多くて夜中うるさかったのでまあいい機会だと思い潔く引っ越した。引っ越しの日、何もない初めの状態に戻った家は引っ越してきた日と違う匂いがした。

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