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【男2人の出会い】出会いの朝の話

ある土曜日。

その日は不思議と早く目が覚めて、朝から珈琲を淹れてみたりなんかして。普段滅多にやらないけど。

新しく買ったわけでもなく、前から持ってたのに読んでなかった本がなんとなく目に付いて、スタバでも行ってみようかななんて思い立った。
さっき珈琲飲んだけどなとか思いながら。
まぁいいや、どうせ暇だし。って。

外に出ると朝の空気はひんやりしていて、そろそろ本格的に秋だなって。そんな季節だった。

土曜日だったけど朝が早いこともあって店内はまぁまぁ空いていた。
コールドブリューを頼んで窓際の1人掛けの席で本を開いた。

環境ってすごい。わざわざスタバで読書。しかも朝から。それだけで自分がお洒落な人になった気がしてくる。
無意識に多分、ちょっと格好つけてた。と思う。

どのくらい読んだ時だろう。
隣の席に人が座る気配がしたけど、気にせずそのまま読み続けた。

すると、「突然すみません、それって〇〇のグッズですよね?」って声が。まさか誰かに声を掛けられることがあるなんて思ってもいなかったから驚いて、というか最早びびってそちらを見た。

そこには男性が立っていて、珈琲片手に俺のバッグを指差していた。その指が差す先には確かにグッズのキーホルダー。

本当に驚いた。
声を掛けられたこともそうだけど。
それだけじゃなくて。
すごく、なんていうか、まぁ、タイプの男性で。好きな顔というか。

「あ、そうです。」としか答えられず。
「ですよね!俺好きなんです!お好きなんですか?」って目を輝かせながら聞いてくる。
眩しい。眩しすぎるだろ。色んな意味で。

多分、一目惚れだったと思う。というか、そうだな。うん。

社交的じゃない性格も相まって最初はかなり辿々しくなってしまったけど、でも好きな物が同じってデカい。
話はまぁまぁ盛り上がった。と思う。

お互い1人掛けの椅子に座っていたから椅子と椅子の間には少し距離があって。
その人はナチュラルにこちらに少し身を乗り出しながら話す。
初対面だけど。でもこちらに全く嫌な感情を抱かせない絶妙さというか。パーソナルスペースはしっかり守りつつ、でも親近感は湧かせる。みたいな。

休日出勤の前に立ち寄ったというその男性は、スーツをびしっと着こなしていて。
出来る男って感じ。
やっぱり出来る男は仕事の前にスタバに寄ったりするんですね。したことないわ。とか思いながら。

終始ニコニコと、笑顔の素敵な人だった。
「いやー、まさかこんなところでそれを持ってる人に会えるなんてびっくりだし嬉しいです!」なんて笑ってた。

10分くらい話した後、「そろそろ行かないと。あの、もし良かったらなんですけどLINE交換しません?」って。

かなり驚いた。コミュ力が高いとスタバでLINE交換したりするんですね…?とか思いつつ、驚いたけど、正直嬉しくて。

でも「あ、いいですよ。」とかちょっとクールぶった返事したくらいにして。
気持ち的には「え、いいんですか?!そんなことアリなんですか?!嬉しいですこちらこそ交換したいです頼みます!!」って感じだったけど。

そしてその男性は最後までニコニコしながら去っていった。こっちに手振ったりなんかしちゃったりして。
こちらは会釈しか返せなかったけど。

それからは茫然というか、何これ。みたいな。
ちょっと現実ではない感じ。
もちろん本なんて読んでも意味がなくて、内容が全く入ってこない。

きっとあちらはただただ自分が好きなグループのグッズを俺が持ってたから嬉しくて、ただそれが嬉しくて声を掛けてきたんだと思う。
話してみたら盛り上がったし、友達になれんじゃね?的な軽い気持ちだったと思う。

俺も同じ気持ちではあるんたけど。
それはそうなんだけど。

問題は俺の恋愛対象が男だということで。

そして多分、一目惚れしてしまっているということ。
これまで一目惚れなんてしたことないのに。
そんなことなんて自分に起こり得ないと思ってたのに。

もし友達として仲良くなれたとしても、このことが分かってしまったら。
後々嫌な思いをさせてしまうかもしれない。
気まずい気持ちにさせるかも。
知ってたら友達になろうとしなかったのに。とか思われるかも。

だからって最初にわざわざ話すのもなんか違うし。

でも仲良くなれたら嬉しいし、あわよくば、とか。

そんな気持ちが行ったり来たりしてた。

LINEは交換したけど俺から送る勇気はない。
そう思ってたらあちらからLINEが。

『さっきは突然すみませんでした!これから仕事なので終わったら改めてラインさせてください!』

嬉しかった。
嬉しかったけど。
あんまり期待、というか、舞い上がらせないでほしい。
あちらはそんな気さらさらないんだろうけど。
ただただコミュ力が高くて律儀な性格なんだろうな。うん。

ぐるぐる考えて、珈琲の味も分からなくなるくらい。

結局何も手に付かず、でもなんだか帰る気にもならず、スタバにかなり長居して。
落ち着かないから本屋に移動してひたすらぷらぷら歩いた。
本なんて目に入らず。ひたすら歩くだけ。

そしたらまたLINEが。
『今休憩中です!あのあとどこか出掛けたりしたんですか?』
って。

連絡マメ系男子?コミュ力高い人ってこんなもん?なんか勘違いしそうになるしやめていただきたい。って感じだった。もう。
スタバで長居して本屋うろうろしただけだし。

結局ぐるぐる考えながら散歩して帰宅。

夜、風呂から上がるとまたLINE。

『今日はもうだらだらするだけなんでゆっくりライン出来ます!』

こんなに逐一状況報告してくれるってカップルかよ…。
ただただマメすぎるってだけ?
ゆっくりLINEって何?

深い意味なんてないって分かってるけど。
分かってるけどちょっと浮かれちゃうし。
勝手に翻弄されてるっていうか。
自惚れてしまうからやめてほしい。

もしかしたら何かの勧誘かもしれないという気持ちももちろんあって、とりあえずちゃんと警戒心は持っておこうと自分に言い聞かせていた。

『休日出勤お疲れ様でした。俺は今風呂上がりました。』
って事務的な返ししか出来ない俺。


“出会いの夜の話”へ  つづく


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