とある作家と某編集者の… | 掌編小説
「先生、まだ原稿上がらないんですか?」
『いやー、これが困ったことに全然上がらないんだよぉ』
「困っているのはこちらも同じです!むしろ、こっちの方がかなり困っているんですよ!」
『え~、そんなに深刻なことなのぉ?』
「深刻も何も、原稿の〆切が明日までなんですよ!」
『あ~、そうなんだぁ。それは深刻だねぇ』
「そう悠長に事を構えている場合じゃないんですってば!」
『ズズズー……』
「ちょっとぉ!何やってんすか!」
『ああ、紅茶が美味い』
「呑気に優雅に紅茶を啜っている暇があるなら、一刻も早く原稿上げるためになんとかしてくださいよ!」
『まあまあ、落ち着きたまえ。そんなふうに焦って急いでやっても、出てこないものは出てこないものなのだよ、ワトソンくん』
「ワトソンくんって誰ですか!?っていうか私、そんな名前じゃないですよ!?」
『はっはっは、ちょっとしたジョークだよ。そう、言い換えるなら、イッツ・ア・アメリカンジョークさ』
「そんなドヤ顔して語るのやめてください!アメリカンのアの字すらかかってないし!」
『いやぁ、いつにもなくツッコミが冴え渡ってるねぇ。さすが、ボクとバディという名のコンビを長年組んでいることだけはある』
「いやその前に、ただ一人の先生と某出版社の雑誌の一編集担当者の関係だけですからね。勘違いしないでください」
『あ…その自分の肩書きはちゃんと説明するのね…』
「当たり前です。どこの誰かさんに誤解されたくありませんし」
『えー、誰?誰なの?どこにいるの?先生、すごく気になるー』
「そのミーハーみたいなノリで質問攻めしてくるのやめてください。なんかいろんな意味でムカついてくるので」
『ほほほ。ムカつくのはいいけど、先生に手を挙げたらそこで試合終了だよ?』
「こんなくだらない事で振り上げるわけないじゃないですか。これでも一応はちゃんとした大人ですから」
『おー偉い偉い。さすがボクの知っている大人達とはワケが違う』
「煽てても何も出ませんよ。というか試合終了って、いつ試合自体始まったんですか?」
『えーとねぇ~……』
「って、そんなことより早く原稿あげないと。〆切が間近に迫っているんですからね!?」
『まあまあ落ち着きたまえ、ワトソンくん。いくらなんでも焦りは禁物ー』
「ってまたこの話を繰り返すんかーい!」
『…という話を思いついたんだけど。どうかな、ワトソンくん?』
「…却下です。っていうか私、ワトソンくんじゃないし」
[了]
(1,000文字)
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