カウンセリング&メンテナンス | 掌編小説
「先生、聞いてください。最近文章がうまく書けないんです」
『そうですか。ちなみに、いつ頃から書けなくなりましたか?』
「だいたい一ヶ月前からですかね」
『ほう。ところで、書けなくなったと感じたきっかけはありますか?』
「…実は正直なところ、どうしてこうなったか、自分でもよくわかっていなくて」
『うーん、例えば何か詰まっているような感覚を持ったとか』
「そんな感じかもしれないですね。ただ、書きたい気持ちは今も湧いているんですけど」
『なるほど。ただ、なんらかの事情が膨れ上がっては、色々ともつれて出てこなくなっていると』
「はい。掘り深く取り下げると細かくなってしまうのですが、だいたい先生のおっしゃる通りです」
『では、そこから抜け出そうと、何かを試みたりはしましたか?』
「実際に、それなりにやってはみたんですけど、どれもこれも自分の思い通りにいかなくて」
『ふむふむ。であれば、一度くらい自分の心を解き放ってみてはいかがでしょうか』
「心を解き放つ…ですか?」
『ええ。話を一通りお聞ききしたところ、今のあなたは長い時間をかけて、心を解放しておく必要がありますね』
「それは、どうやったらいいでしょうか?」
『それこそ、たとえば窓を開けて空気を入れ替えるように、これまで自分の身の回りに置いていなかった新しいものを、一つでも取り入れてみるとか』
「新しいもの…ですか」
『そうです。これは個人的な見解ですが、先ほども説明したように、あなたは様々な既存の物事や先入観にとらわれすぎて、身動きがとれていないのではないかと』
「ああ、そうですね。たしかに、ここ最近は八方塞がりでどうすればいいのかと思うばかりでした」
『いずれにせよ、今のあなたの「その」もつれたままじゃ、文章を書くことどころか私生活にも大きく影響を及ぼしかねませんよ』
「ええ、まあ。本当にお恥ずかしいかぎりで」
『いやいや。別に恥じてしまう必要なんてことはない。むしろ、ここで弱音を語ったことについては、今後姿勢を正そうとしているあなたにとって、プラスになるかもしれませんよ』
「はい、どうもです」
『とりあえず、こちらの処方箋…なるものを出しておきますので、だいたい一ヶ月くらいは様子を見たり試しにやってみてください』
「わかりました」
『それで、どうしてもよくならないと感じたら、またいつでもいらしてくださいな』
「はい、ありがとうございました。先生」
『ええ、お大事にどうぞ』
(1,000文字)
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