見出し画像

【血液検査データを見て考えよう!】コレステロール値が少し高い場合

前回は、粒子が小さいスモールデンスLDLの数が増え、酸化LDLとなることの危険性を学びました。

今回は、コレステロールシリーズの最終回、健康診断などで高めの値が出た時に結局どう考えればいいのか、について、まとめてみました!


コレステロール値が少し高い!と言われたら?


健康診断や分子栄養学的な血液検査で、「コレステロール値が少し高い!」と言われたら、どうすればいいのでしょうか?

とにかく、数値を下げなくっちゃ!!って思えばいいのでしょうか?

結局、健康診断の血液検査でコレステロール値を見るのは、動脈硬化の進み具合を調べたいからです。直接知りたければ、頸動脈エコーなどで実際の血管の様子を調べればいいのですが、普通の健診ではそこまでしないですよね。

血液検査データから推測するときのお勧めは、まず数値の「比率」を見るということです。

「LDL/HDL比」と「TG(中性脂肪)/HDL比」を計算すれば、自分のLDLが「酸化しやすい危険なスモールデンスLDL」なのかどうかが、ある程度推測できるのです。

「LDL/HDL比」が1.5以下なら健康、2.0以下なら一般的な正常値、2.0以上になると動脈硬化が疑われ、2.5以上だと血栓ができやすい危険な状態、と考えます。「TG/HDL比」は1.3以下だと理想的と言われているようです。

今までの記事で、LDL-コレステロールやHDL-コレステロールという、リポタンパク質の中のコレステロールの量を測るよりも、リポタンパクの粒子数、特にスモールデンスLDLの粒子数をはかるのが動脈硬化のリスク予想として一番感度がいいのでは?とお伝えしてきました。

しかし、現状では測定に手間とお金がかかるので、測定環境が整っている安価なコレステロール測定を用いて類推するのです。コレステロールの値と動脈硬化の関連に関しては、昔から非常に多くの研究がなされ、その膨大なデータ蓄積からかなり良い予測ができるのは事実です。

ちなみに、私の直近の検査値は、TG(中性脂肪)は46でした。分子栄養学の視点では、これは交感神経が優位になりすぎてエネルギー不足になっている可能性を心配されてしまう低値です。LDL-コレステロールは118で、分子栄養学界隈では、理想値100より高めで、甲状腺機能低下の可能性を心配されたりするかもしれません。HDL-コレステロールは81でした。これらの値から、LDL/HDL比=1.46、TG/HDL比=0.57となるので、おそらく、動脈硬化はあまり心配しなくてもいいかな?と考えています。

そういえば、学会の企業展示ブースなどで血管年齢を測ってもらったりしますが、いつでも「お若いですね!」と称賛されます。(血管のことを、ですよ。。)


LDL-コレステロール値が高くなるわけ


さて、LDL-コレステロール値が高くなるのはどのような機序からでしょうか?

主なものは、以下の通りです。

①女性ホルモン(エストロゲン)の減少: 更年期以降の女性は、エストロゲンが減少することで肝臓のLDL受容体が減り、取り込まれなくなるため、血中のコレステロールが高くなりやすいという生理的な変化があります。

②甲状腺機能の低下: 甲状腺ホルモンは全身の代謝を活発にし、コレステロールの処理(胆汁酸への排泄など)も促進します。これが低下すると、代謝が落ちてコレステロールが血中にダブつきやすくなります。

③ストレスとステロイドホルモンの需要増加: コレステロールは抗ストレスホルモン(コルチゾールなど)の原料です。過度なストレスがあると、体がホルモンをたくさん作ろうとして、肝臓でのコレステロール合成を亢進させる可能性があります。

④胆汁の排泄低下(便秘や食物繊維不足): コレステロールの唯一の排泄経路は胆汁酸として便と一緒に体外へ出ることです。便秘がちであったり食物繊維が不足していると、腸肝循環で再吸収される割合が増え、数値が高止まりしやすくなります。

⑤糖質制限やエネルギー不足: 厳格な糖質制限を行うと、体が脂質を主なエネルギー源として利用しようとするため、脂質の運搬船であるリポタンパク質の血中動態が変化し、結果としてLDL-コレステロールが高く出る人(Lean Mass Hyper-responderなど)がいます。

⑥家族性高コレステロール血症(FH): 遺伝的にLDL受容体の働きなどが弱く、若年期から著しい高値を示すケースです。これは生活習慣に関わらず医療介入(投薬)が必要な典型例です。


スタチンの光と影


何はともあれ、LDL-コレステロール高値が出ると薬(スタチン)が処方されますよね。

スタチンは、家族性高コレステロール血症(FH)の人や、すでに心筋梗塞を起こした人にとっては、強力にLDLを減らし、プラークを安定させて命を守る素晴らしい薬です。

しかし、上述のような様々な機序を無視して、ちょっとだけ高いLDL-コレステロール値を、基準値上限より下回るようにするためだけにスタチンを服用し、ずっと続けていると、副作用の影響も考えなければいけないと思います。

スタチンにより、コレステロール合成代謝経路が止まってしまうので、その下流で作られるコエンザイムQ10の合成も止まってしまいます。

コエンザイムQ10は、細胞のエネルギー産生工場(ミトコンドリア)の最終工程である『電子伝達系』において、絶対になくてはならない物質ですので、これが少なくなればエネルギー産生に問題が出てきて、筋肉痛や疲労感が起きやすいとも言われます。

それから、一般的な健康診断の血液検査では、コスト削減のためにLDL-コレステロールを直接測らず、以下の「フリーデワルドの式」を用いて推計していることがあります。(式が長くなるのでコレステロールをCと表します。)

 LDL-C=総C−HDL-C−(中性脂肪 ÷ 5)

近年では中性脂肪が低い場合でも、より正確に推算できる「マーチンの式」などが提唱されていますが、一般的な健診ではまだフリーデワルド式が主流とのことです。

もし、中性脂肪がかなり低い場合、引き算する数値が小さくなりすぎるため、実際のLDL値よりも不当に高く計算されてしまう現象が起きますので、気を付けてみてください。

薬で数値を下げることだけを目的とする前に、「LDLを小型化させない」「酸化LDLを作らない」ような根本的なアプローチがなによりも血管の健康に必要と考えられますね。健康を保つ基本中の基本、食事と抗酸化が、やはりカギとなると思います。


いかがでしたでしょうか?

少し難しい専門用語がたくさん出てきて、読みづらかったかもしれません。

私自身が現在の職に就いて、「管理栄養士のための解剖生理・病理学のテキスト」を勉強した時に「???」と疑問を感じ、分子栄養学を学んで「根本原因」に目を向け、次第に分かってきた様々な事実。これらを、いつかまとめたいと思っていて、今回、備忘録のように書いてみました。

お付き合いいただきありがとうございました!!


血液検査は病気の診断のためだけにあるのではありません。自分の体の状態(栄養状態や代謝の傾向)を知るための大切なツールです。 この記事では、あくまで『健康管理(セルフケア)』の視点から、検査値が持つ意味を一緒に学んでいくことを目的にしており、特定の栄養療法・サプリ摂取を推奨するものではありません。検査値の解釈は、測定法・年齢・筋肉量・服薬・腎機能・飲酒等で変動します 。症状がある/治療中/妊娠中/薬を服用中の方は、自己判断での変更を避け、医師・管理栄養士等に相談してください。また、病気の診断や治療については、必ず医師の判断を仰いでください。


いいなと思ったら応援しよう!

つかもとゼミのヒト@分子栄養学・解剖生理学・神経科学 よろしければ応援お願いいたします!いただいたチップはクリエイターとしての活動費に使わせていただきます!