名文の呪文「カンカラコモデケア」が、寒風に舞う。
1:いい文章を書くにはどうするか
「カンカラコモデケア」という言葉を、知っていますか?
これは文章術のひとつで、「いい文章が備えている条件」の頭文字を、つなげたもの。
1.カン:「感動」感動したことを書く
2.カラ:「カラフル」色を入れることで鮮やかになる
3.コ:「今日性」旬な話題を取り上げる
4.モ:「物語」ストーリー性をもたせる
5.デ:「データ」データや資料による裏付けで説得力を出す
6.ケ:「決意」書き手の強い思いをにじませる
7.ア:「明るさ」暗いものではなく、明るくプラス思考な文章に
これらを文章に入れると、説得力が出て、人の心を打つ文章になる、ということ。
発案者は、毎日新聞の記者で、ジャーナリストだった山崎宗次さん(故人)。彼は、マスコミ志望の学生たちに、文章の書き方やジャーナリストとしての心構えを教える「山崎塾」を主宰されていた。
「山崎塾」でギャグを披露した男
僕も一度行ったことがある。旅館の大広間のようなところに、マスコミ志望の若者が数十名集い、彼らの先輩格として、時事通信社などのマスコミ企業に見事入った人たちもヘルプで来ていた。
塾の内容は、入社試験に出ることを想定したペーパーテストと、そのほかに、宴会芸を見せるコーナーもあり、短期合宿のような雰囲気だった。
僕はペーパーテストに対しては、自分が学力不足なのを知っていたから、ハナから重要視していなくて、自分が何かやれるのは、宴会での1発芸だろうと思っていた。
大広間に集まった数十人の受講生たちに向かって、山崎さんが、「何かやりたい人いる」みたいなことを呼びかけたので、僕は「はい!」と手を上げ、大広間前のステージに向かった。数人くらいで、打ち解けて話すのは苦手だけれど、まとまった人数の前で話したり、何かやったりするのは苦ではない。
どこで覚えたか忘れたが、「グリコの歌」というのがあって、🎵グリコ、グリコ、グーリーコー🎵と歌いながら、腕を動かし、フレーズが終わると、ギャグをやる。アンガールズの”ジャンガジャンガ”みたいなもの。
これをやった。
僕がステージに出る前に、メガネをかけたエリートっぽい先輩が、吉本隆明かなんかの「現代詩を暗唱する」というのを、大真面目にやった。僕は”これだ”と思い、勝手に作ったそれらしい現代詩を、彼の喋り方をマネながら口にした。そんなものを予想していなかった観客はどっと笑った。
塾長の山崎さんは笑顔で見てくれていて、そんな僕に「敢闘賞」をくれた。
講習の最後に、ある先輩が、講評を述べた。
彼は、「テストの結果を見ると、中には”問題外の外にいるような人”もいた」と話した。その「問題外の人」というのは、僕だろう。なぜならその人が、僕が真似をして笑いをとった人物だったから。内心、かなり怒っていたはず。
余談が長くなりました。

では、「カンカラコモデケア」。
実際に、どんな文章が、この条件を満たしているのか。
そういう文例が見当たらない。
でも今は、AIというツールがある。
AIに、「次の「7つの要素(カンカラコモデケアの説明)」が入った文章を、自由に書いてみて」と雑な指示を出して、丸投げしてみた。
出てきた文章を元に、リライトしたものが、これ。
モノクロの日常を塗り替える「光」の饗宴。
かなり疲れた仕事帰り、職場から駅に向かう途中の代々木公園。歩いていると、冷え切った空気の中で、アート・イベントの開催を知らせるフラッグが揺れていた。「記憶の海へ船出する・・AIとプロジェクション・マッピングの夕べ」と書かれている。さほど興味は持たなかったが、いつもの帰り道にステージが組まれていたので、見るともなく近づいていった。
ステージの上に、簡単なデスクがあり、PCを操作する人と、司会進行役がいた。進行役が観客に、「どなたか、ご自分が、『一番幸せを感じた瞬間の色』について話してくれませんか」という。ある老夫婦が、マイクを持ち「新婚旅行の時に見た、別府湾の夕日」と言うと、司会者は、「それはどんな印象の夕日でしたか。何時頃だったでしょう?」などと、なるべくAIに与えられる情報を多くしようと質問を重ねる。やがてAIは、それらを解析し、広場の壁面に映像を投影した。波ひとつない別府湾の海と、その上に広がる空の全体が、柔らかな桃色に染まっている。老夫婦は顔を見合わせて、何か話している。会場は優しい静寂に包まれた。僕は、それを自分の新婚旅行の思い出であるかのように受け止めている自分に気づいて驚いた。
次にマイクを手にした人は、「一度でいいから見たいと思うのは、雄大なオーロラの景色です」と言う。会場の周囲の闇は深くなり、その中で、地平線近くの針葉樹の影が浮かび上がる。夜空に星が散りばめられ、その闇の中で光の帯が動き出す。空に揺れるような色彩の帯が漂い出すと、緑色の光のプラズマは、見る間に空を覆いつくし、地表までも染めた。
自分が今いる場所を忘れて見入っていると、コートの胸ポケットのスマホが震えた。一瞬で、現実に引き戻される。職場のグループ・ラインからの通知で、帰宅後の作業についての修正箇所と確認事項が記されていた。僕はコートの襟元を押さえながら、帰路についた。
どうでしょう。「感動」「カラフル」「今日性」「物語」は入っていますね。それ以下の要素もAIは生成してきましたが、かなり取って付けたような浅いものだったので、それは全削除。
でも、「カンカラコモデケア」って言うけど、そんなテンプレみたいなもの、イヤじゃないですか。
世にある名文とか、心に残る文章も、特にこういう条件など、満たしていない。
ただ、山崎さんも、「一文に、コレら全部を入れよ」と言いたかったわけではなくて、「作文する時の方向性、心がけ」くらいのことだったかもしれない。
ともあれ、「文は人なり」って言うから、ぼちぼちと自分磨きでもしようかな。
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