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【レビュー】「オールドガード2」:脱エンタメ老害のススメ

ポリコレ演出批判への違和感

noteで映画レビューを書き始めた時に
一つだけ決めたことがある。

「つまらなかった」と言うだけのレビューは
絶対に書かないこと。

その理由は放送作家という私の仕事にある。

テレビ制作の現場には
ディレクターが撮ってきたVTRを見る
プレビューという仕事がある。
VTRを観て感想を言い合い、
どのように手を加えれば
より面白くなるのかを議論する。

VTRがつまらない場合、
ただ、つまらない、と言うだけでは
何も事態は改善しないので、
我々、放送作家たちは修正案を出しまくる。

もちろん面白くても同様に
より面白くなるように意見を出し合って
納期ギリギリまで
ブラッシュアップしていく。

そんな日常を過ごしているせいで
時々、うまくいっていない映画を観ると
この映画はどこで問題が起きてるんだろう?
どうすれば良くなるんだろう?
とアレコレ考えてしまう。

最近、映画レビューを見ている中で
辛辣な内容を目にして驚いてしまうことがあって
本作「オールドガード2」へのレビューでも
幾つか違和感を覚えたモノを見かけた。

それらは要約すると
ポリコレ的な演出がお気に召さないという内容で
「エンタメにポリコレは必要ない」とか
「ポリコレが露骨すぎる」という指摘だった。

ポリコレの定義をおさらいすると
ポリティカル・コレクトネス
(英: political correctness)の略称で
社会の特定のグループのメンバーに
不快感や不利益を与えないように
意図された政策などを表す言葉の総称である。

簡単に言えば「差別を無くしましょう」
という意味合いで
SDGsにも含まれるこの思想は
この数年で一気に浸透した。
だが映画の世界では時々、
このポリコレが歓迎されない場合があるようだ。

「オールドガード2」では
確かに主要キャラクターを女性が演じ
男性にはゲイのカップルが登場するが、
果たして、一部のレビュアーが指摘するように
このようなポリコレ的演出は必要だったのだろうか?

私の職場であるバラエティ番組の制作現場では
コンプラによって変化を強いられてきたわけだが
そんな放送作家の視点で
ヒロイン映画の歴史を紐解きながら
エンタメにおけるポリコレについて論じていきたい。

作品概要

オールド・ガード 2The Old Guard 2
(2025年製作の映画)
製作国:アメリカ 
ジャンル:アクションアドベンチャー
監督:ビクトリア・マホーニー
脚本:グレック・ルッカ
出演者:シャーリーズ・セロン、キキ・レイン、ユマ・サーマン、マティアス・スーナールツ、マーワン・ケンザリ、ルカ・マリネッリ、ゴー・タインヴァン、キウェテル・イジ

Fiimarks

あらすじ

裏切りの罰として追放されたブッカーと、海中の牢獄から逃れて復讐を誓うクインが不穏な動きを見せる中、アンディは「死ぬことができる存在」となった自身と向き合っていた。そんな彼女に新たな危機が迫り、数千年にわたって築いてきたすべてが危険にさらされる。「不死者」とはいったい何なのか。その謎を解き明かすため、アンディ、ナイル、ジョー、ニッキー、ジェームズ・コプリーは、不死の秘密を解き明かすカギを握る、かつての仲間トゥアに協力を求める。

映画.com

本作の評価

本シリーズで主演を務めるシャーリーズ・セロンは
「モンスター」(2003年)でアカデミー主演女優賞に
輝く一方で
「マッドマックス 怒りのデス・ロード」(2015年)
「アトミック・ブロンド」(2017年)
「ワイルドスピード」シリーズ など
最近はアクション映画を牽引する俳優の
一人となっている。

そんな経験豊富なセロンが
プロデューサーにも名を連ねて挑んだ本作。

49歳とは思えないほどに鍛え上げられた肉体から
繰り出される多彩なアクションシーンは
モデル出身の生まれ持った美貌と相まって
芸術的な美しさを印象付けていたし
ヴィランとして登場するユマ・サーマンも
感慨深いものがあった。

「オールドガード2」より

前作同様、不死身という設定を
巧妙に活かしたシナリオは
昨今のアクション映画の中でも新しさを保っていたが
ラストシーンについては
3作目へのつながりを意識しすぎたことで
カタルシスの欠如が気になったりはした。

この辺はさまざまなレビューで書かれているが
よくある続編の壁だったりするので
3作目での巻き返しを期待するほか無い。

で、本題のポリコレ的演出についてであるが、
私は何も気ならなかった。

そもそも前作で既にゲイのカップルは登場していたし
女性が男性に立ち向かうという構図はあったし
今回、ヴィランが女性という点にも
ポリコレ的なジェンダーロール以上に
「キル・ビル」を意識した役を
ユマ・サーマンが引き受けたサプライズに
十分な価値を感じられた。

私は本作を語る上でポリコレを引き出すことに
違和感を覚えているわけだが

その理由は、女性が主要キャストを固めたり
男性をマイノリティーとして描く演出が
ヒロインアクションものにおける
古典的なアプローチだからである。

ヒロインアクション映画の現在地

ということで
ここからは映画史を少し遡ってみたい。

時は1979年。
当時、女性が男性と肩を並べて
働くようになったアメリカで
革新的な映画が誕生した。

「エイリアン」

シガニー・ウィーバー演じる
宇宙船の女性クルー、リプリーが
エイリアンとの死闘を繰り広げる
SFサスペンスの金字塔。

翌年に公開された「グロリア」では
ヒロインが男だらけの世界に踏み込んでいく。

「グロリア」

本作ではジーナ・ローランズが演じる
グロリアという女性が、
マフィアに追われる少年を助け、
共に逃亡するのだが
マフィアにアジトに乗り込む勇敢な姿が
印象的に描かれている。

リプリーとグロリア。
彼女たちが同時期に登場したのは偶然ではない。

女性が社会進出を果たしていく
時代の変化をエンタメに落とし込む中で
彼女たちは必然的に誕生したのだ。

そんな背景がゆえに
肉体的にも精神的にも男顔負けの強靭さを誇る
新ヒロインの活躍に観客たちは胸を躍らせた。

この流れに強い影響を受けた二人の巨匠がいる。

ジェームズ・キャメロンとリュック・ベッソンだ。

ジェームズ・キャメロンは
「エイリアン2」(1986年)で
リプリーを不屈のヒロインとしてアップデートさせ
「ターミネーター」(1984年)で登場させた
可憐なヒロインのサラ・コナーを
「ターミネーター2」(1991年)では
ハードボイルドなヒロインとしてアップデートさせた。

一方、祖国フランスで女性の殺し屋が主人公の
「ニキータ」(1990年)を成功させた
リュック・ベッソンはアメリカに渡り
前述の「グロリア」をモチーフに
当時12歳のナタリーポートマンを主演に起用して
「レオン」(1994年)を完成させる。

その後も「フィフス・エレメント」(1997年)
「ジャンヌ・ダルク」(1999年)、
「ルーシー/LUCY」(2014年)といった
いまに続く強くて美しい女性が活躍する
ヒロインアクション映画の礎を築いていく。

その後、このジャンルが
さまざまな人気俳優や監督によって
進化してきたことは言うまでもないが、
そんな偉大な歴史を持つこれらの作品を
最近登場したポリコレという物差しで測るのは
どうなんだろうか?

今年で「エイリアン」の誕生から46年経つ。

ヴィランも女性、男性がマイノリティとは
「エイリアン2」における
ラスボスがクイーンエイリアンで
ビショップがアンドロイドという点に共通する。

つまり「オールド・ガード」シリーズは
ハリウッドの伝統的な
ヒロインアクション映画の系譜に基づきながら
“望まずして不死身になった者たち”という
独自の世界観を有する作品であって
決してポリコレを意識して作られた物語ではない。

ちなみにシャーリーズ・セロンは2005年に
「同性愛者同士の結婚が
 法的に認められるまで結婚はしない」
と発言するなどLGBTの権利を
支持する立場を表明しているが
こういった活動に対する反感が
本作を過剰なポリコレとみなしているのかもしれない。

だが、そうだとしたら過剰なポリコレという指摘は
作品自体に対するものではなく
個人の排他的思想でしかないことになる。

オールド価値観のアップデートを

エンタメにポリコレは必要か?

と冒頭で提起したこのトピックに戻ろう。

答えはYESだ。
きっと世界の価値観はポリコレに進んでいく。

エンタメは現実を映す鏡である。
女性が社会で活躍するようになれば
ヒロインアクションは必然的に誕生する。

映画界ではMeToo運動を皮切りに
女性やLGBTQの権利を支持する流れは進み
旧態依然とした姿勢は批判の対象となる。

そうなるとマジョリティは
これまで享受していたモノを
手放さなければならない場面が出てくる。

そういう意味では昔ながらのエンタメ表現を
楽しむ機会を失う場合もあるだろう。

テレビ業界では
この10年ほどコンプラが叫ばれ
変化を余儀なくされてきたし、
私自身も戸惑いもした。

だが、ふと最近コンプラという言葉を
制作現場で聞かなくなったことに気づいた。

アップデートが順調に進んでいる証拠だと思う。

昔のバラエティは何でもありで楽しかったなー、
という嘆きの声を以前は酒の場でよく聞いたが
今となってはそんな事を言う
番組制作者はほとんどいない気がする。

エンタメを作る我々は
時代と向き合っていかなければならないのだ。

エンタメは時代に合わせてアップデートしていく。
それを享受するためにはアップデートが必要だ。

時代は急速に変化していく。

アップデートできない人たちがエンタメ老害として
時代に取り残されてしまわないことを心から願う。


最後まで読んで頂いてありがとうございました。
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