東大医学部で何が起きたのか:相次ぐ不祥事から見えた「ガバナンス不全」という本当の問題



「東大医学部でまた不祥事?」

そんなニュースを目にした人も多いと思います。

しかし、実は近年の東京大学医学部・東大病院では、単発の事件ではなく、複数のコンプライアンス問題が続いています。

そして大学自身も、

「個人の問題ではなく、組織全体のガバナンスの問題だった」

と認める方向へ舵を切っています。


① 医療機器メーカーとの癒着・収賄事件

最初に社会を驚かせたのが、東大病院の准教授による収賄事件です。

医療機器メーカーから賄賂を受け取ったとして逮捕・起訴されました。

その後の大学調査では、

  • 奨学寄付金の私的流用

  • 親族のための物品購入

  • 研究費等の不適切な管理

なども認定されました。

つまり問題は単なる収賄だけではなく、

研究費・寄付金管理そのもの

にも及んでいました。

参考:
https://www.todaishimbun.org/prosecutioncomment_20251227/


② 社会連携講座(臨床カンナビノイド学)の問題

さらに発覚したのが、

社会連携講座「臨床カンナビノイド学」

を巡る事件です。

教授が企業から高額接待などを受けた疑いで逮捕されました。

この事件では、

  • 社会連携講座

  • 企業との関係

  • 利益相反管理

そのものが問題となりました。

近年、大学では企業との共同研究が増えています。

だからこそ、

利益相反(Conflict of Interest:COI)管理

が極めて重要になります。

参考:
https://www.todaishimbun.org/settaiarrest_20260126/


③ 東大執行部も責任を認めた

今回特徴的だったのは、大学執行部も責任を認めたことです。

東大では、

  • 総長が報酬自主返納

  • 担当理事が報酬自主返納

  • 医学系研究科長を訓告

  • 東大病院長が辞任

という対応が取られました。

大学トップまで責任が及ぶのは比較的珍しい対応でした。

参考:
https://www.todaishimbun.org/desolee_20260129/


④ 「Three Lines(三線防御)」への改革

東大は、

「もう個人任せではダメだ」

として、

Three Lines(3線防御モデル)

を導入すると発表しました。

これは企業でも広く採用されている内部統制モデルです。

第一線

現場

(研究室・病院・事務)

第二線

管理部門

(法務・コンプライアンス・利益相反管理)

第三線

独立監査

(内部監査・監事)

という三層構造で、

互いにチェックする仕組みです。

日本企業でもJ-SOX以降、導入が進んでいます。


外部委員会の評価は非常に厳しかった

東大が設置した外部委員会は、非常に厳しい報告書を公表しました。

例えば、

  • 他人への無関心

  • 「東大だから大丈夫」という思い込み

  • 公務員は不正をしないという過信

  • 自浄作用の不足

などを指摘。

さらに委員長は、

「自浄作用がないなら大学自治を語る資格はない」

という強い言葉で東大を批判しました。

参考:
https://www.todaishimbun.org/kenshoubunsho_20260408/


そして、もう一つ気になること

私はここで一つ疑問があります。

監事は何をしていたのでしょうか。

収賄事件では、

  • 総長

  • 理事

  • 医学系研究科長

  • 病院長

の責任は一定程度問われました。

一方、監事個人が責任追及されたという報道はほとんど見当たりません。

さらに最近報じられた、

東大工学系関連財団の約9000万円横領事件

でも、長年にわたり不正が続いたにもかかわらず、現時点では監事の責任が議論されている様子はあまりありません。


ガバナンスとは「誰かを処分すること」ではない

本来、ガバナンスとは、

不正を起こさせない仕組み

を意味します。

つまり、不正が起きた後に、実行犯だけを処分して終わるのではなく、

「なぜ監督機能が働かなかったのか」

まで検証して初めて、組織は学習できます。


日本は「監督する側」の責任を問わなさすぎではないか

もちろん、監査には限界があります。

巧妙な不正を100%見抜くことはできません。

しかし、

  • 長期間

  • 高額

  • 組織的

な不正が続いたのであれば、

監査や監事の機能は十分だったのか

という検証はもっと行われてもよいのではないでしょうか。

東大は日本最高峰の大学です。

だからこそ、今回の一連の事件は

「東大の問題」ではなく、日本の大学ガバナンス全体の課題

として考える価値があると思います。



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