日本社会では「困窮は自己責任」「若者支援は薄い」のに、「高齢者への医療・介護は異様に手厚い」という大きなねじれがあるのか?儒教社会のせいなのか?



よく言われるように、日本社会では
「困窮は自己責任」「若者支援は薄い」
のに、
「高齢者への医療・介護は異様に手厚い」
という大きなねじれがある。

韓国も自己責任論が強いのに、日本ほど高齢者福祉は手厚くない。
儒教文化だけでは説明できない。

実はこれ、日本社会の歴史的構造の“ねじれ” が原因である。

以下、整理する。


◆ 1. 高齢者優遇は「儒教」では説明できない

直感的に「儒教の長老尊重」と考えがちだが、これは日本には当てはまらない。

比較すると:

  • 儒教が最も強い中国 → 高齢者福祉はそこまで手厚くない

  • 儒教文化圏の韓国 → 高齢者貧困率は OECD 最悪レベル(46%)

  • 儒教が弱い欧州 → 高齢者も若者もバランス良く支援される

つまり、日本の高齢者優遇は儒教文化では説明できない。


◆ 2. 日本には「家制度(家父長制)」という儒教より強い文化装置があった

日本の場合、儒教よりも 家制度(家父長制) の影響が圧倒的に強い。

家制度の特徴:

  • 長男相続

  • 家長が家族を代表する

  • 年長者が優先される

  • 家の維持が最優先(個人の幸福より上)

家制度は戦後に法的には廃止されたが、価値観としては ほぼそのまま残り、昭和の政策形成に強く影響した。

つまり、

日本の高齢者優遇は、“儒教”ではなく“家制度”の遺産。

韓国は日本以上に儒教が強かったが、家制度の構造は日本ほど絶対ではなかった。


◆ 3. 「55歳以上=過半数」という政治状況:Gray Power(灰色の権力)

決定的な違いがここ。

1990年代後半から日本は、

国民の半分近くが55歳以上(高齢者予備軍)

という世界でも異常な人口構造になった。

  • 高齢者の投票率:70〜80%

  • 若者の投票率:30〜40%

  • 65歳以上人口:すでに30%以上

政治的には:

「高齢者に手厚い政策 → 選挙で勝つ」
「若者支援 → 票にならない」

という構造が完全に成立してしまった。

いわゆるシルバーデモクラシーだ。

韓国は高齢化のスピードは速いが、「高齢者が政治を支配するレベル」には達していない。


◆ 4. 日本は“国が一番金持ちだった時期”に高齢者制度を作った

これも大きい。

日本の主要な高齢者制度はすべて 高度成長期〜バブル期 に作られている。

  • 1961 国民皆保険・皆年金

  • 1980年代 老人医療費ほぼ無料

  • 2000年 介護保険制度

要するに:

「国にお金がたくさんある時代に、高齢者制度だけ完成した」

しかし、若者支援・子育て支援を作る頃には、もう財政難+少子化+高齢者多数派が進行しており、若者向け制度は作れない構造になってしまった。

韓国は通貨危機(1997)などが続き、日本のように潤沢な財政で高齢者福祉を作るタイミングがなかった。

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