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育成・機会探索・実践の3本柱で愛媛県の推進都市構想に貢献【株式会社松尾研究所|成果報告】

株式会社松尾研究所(以下、松尾研究所)は、東京大学 工学系研究科 松尾・岩澤研究室に伴走する組織であり、AI(人工知能)技術の研究・開発を主軸としながら、社会実装の推進や人材育成にも力を入れている。特に、データサイエンスや機械学習といった分野において、日本国内の産業界と学術界をつなぐ重要な役割を果たしており、これまでに多くのAI人材を輩出してきた実績を持つ。

近年では、地域社会におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進を目的として、各地方自治体や企業と連携しながらAI技術の活用を促進する活動を展開している。2024年度には、愛媛県においてもAI人材の育成と地域企業とのマッチングを主軸とした取り組みを実施し、地域経済の活性化やデジタル技術の普及に貢献する大きな成果を上げた。

松尾研究所は、愛媛県における高度なAI人材の育成と地域企業のDX推進を目的とし、以下の2つの主要な取り組みを展開した。


(1)AI入門講座の普及推進

愛媛県では、AI人材の創出と還流を促すことを目的として、愛媛大学と連携し「GCI(Global Consumer Intelligence)」の説明会と成果報告会を実施。AI入門講座受講を推進した。

GCIとは、東京⼤学 松尾・岩澤研究室が提供するAI⼊⾨講座。 本講座では、あらゆる分野で武器になるデータの解析・分析スキルのコアとなる機械学習を行う。さらに、ビッグデータを扱う技術、分析結果を効率的に可視化する技術の基礎を網羅的に身につけることで、データサイエンティストとして活躍する入り口に立つことを目指しており、今期は約10,000人が受講した。東京大学 松尾・岩澤研究室では、そのほかにもAI経営講座で約7,000人、LLM(大規模言語モデル)講座で約4,000人が受講するなど、講座数・受講者ともに拡大している状況だ。

GCIは4月と10月の年2回開講しており、受講生は約4ヶ月かけて1講座105分の講座を全15回受ける。講義はすべてオンラインで実施(録画視聴も可能)。講師は現役データサイエンティストやGCI修了生が行い、AI、Pythonの基礎からデータサイエンス、機械学習、マーケティング、ビジネス課題の考え方まで学ぶことができる。オンラインで講座を受けるだけではなく、TA(GCI修了生)によるオフィスアワー(質問対応)や、Slackでの受講者同士のオンラインコミュニティなどで学びを深めることができる。

2024年10月2日に愛媛大学にて、県内の学生・自治体職員などを対象にGCI説明会と交流会を実施した。その結果、「GCI 2024 Summer」は学生6名が受講したのに対し、「GCI 2024 Winter」は学生37名の受講まで伸びた。最終的に、学生3名、社会人3名の6名が厳しいカリキュラムを修了し、高度なAI知識と実践力を習得した。

修了した学生からは
・アーカイブを見ることができたので自分のペースで学べた
・受講生間の疑問点解消や相談がオープンに行われており、参考になった
・プログラミングスキルを学ぶだけではなく、実務に近い事例を通してデータ分析の一連の流れを理解できた
・SlackでのTAや他の受講生との交流が刺激的だった
・自分の力で考える過程を通じて、思考力が大きく鍛えられた
・独学で1年以上勉強した内容が、事前学習教材だけで網羅されていた
などの声が聞かれた。

3月10日に松山市で行われた成果報告会では、GCI修了生によるトークセッションも行われ、自身が取り組んだ内容やGCIの良い点などについて語られ、一般参加者の理解を深める機会にもなった。

2025年も、『GCI 2025 Summer』(2025年4月22日(火)開講)と、『GCI 2025 Winter』(2025年10月開講予定)が実施されるので、興味のある学生(中・高・大学生、専門学生、高専生など)や社会人(教員、公務員など)はぜひ参加してほしい。

(2)地域企業とスタートアップによるAI実装

AI技術の社会実装を促進するため、松尾研究所は地域企業とスタートアップのマッチングイベントを企画・実施し、具体的な協業プロジェクトの創出を支援した。このような取り組みによって、AIを活用した業務効率化の実例が複数誕生し、地域経済のDX推進に寄与している。

Polaris.AI株式会社 × 株式会社藤高

今治市に本社を構えるタオルメーカー・藤高と連携。タオルの柄プリント業務において必要な、ドット修正業務を効率化する自動修正アルゴリズム開発・導入により、タオル業界全体の生産性向上を目指した。タオル事業者は、クライアントから入稿されたデータをタオルのパイルに適したサイズに調整する必要があり、人の手によるドット修正作業が発生している状況だった。その結果、大きな作業負担が発生してしまうという課題があった。

そこで、Polaris.AIは5つのアルゴリズムを組み合わせたAI技術で、情報量を落とさずにデザインの美しさを保った状態で絵柄を出力できることを目指した。アルゴリズムと修正対象の相性を検証し、人間が行う修正点の違いに着目して修正対象を文字・幾何学・背景・モチーフなどに整理することで、特定の修正対象については工数削減効果が見込めることがわかった。今後アルゴリズムの強化により、実業務で工数削減に寄与できるようになれば、担当者は美的感覚が必要な絵柄に集中し修正作業を行える環境を整えることができるだろう。

株式会社ARCRA × 愛媛県の真珠産業

同社は、愛媛県の主要産業の一つである真珠養殖業界において、真珠の仕分け作業をAIで自動化するプロジェクトを推進した。真珠は6つの基準をもとに、ランク・用途別に仕分けられている。しかし品質評価基準は熟練の職人の目視や経験に依存しており、評価基準の統一が難しく、属人性が高いという課題があった。

それを、高精度な画像認識技術を活用し、真珠の傷や形状を自動判定するシステムを開発することで、品質向上と作業効率の大幅な向上を目指した。

約8,000枚の真珠画像を撮影し、AIによる判定精度は85.6%を達成。さらなる精度向上に向けた改良が現在も進められている。今後は、撮影環境を再検討し、テリマキを含めた品質評価判定を目指す。また、県内の協力業者を増やし、社会実装できるモデルを設計する。

このように、AI技術を導入することで、伝統産業における課題解決や労働生産性の向上が期待されている。

今後の展望

松尾研究所は、2024年度に得られた成果を踏まえ、愛媛県におけるAI人材の育成および社会実装のさらなる推進を目指している。今後の具体的な方針として、以下の取り組みを計画している。

GCI受講推進の継続と拡充

これまでの実績を活かし、受講生のさらなる増加を目指して、より幅広い層へのアプローチを強化する。また、愛媛大学等と議論し、受講環境の充実や受講後のフォロー体制の構築を目指す。

地域企業との松尾研発スタートアップとのマッチング機会創出

地域企業ごとの具体的な課題に応じたAI活用支援を行うため、県庁や地方銀行などの公的機関とも連携を深めることで、より魅力的なマッチング機会の場を整備する。

AI技術の実装支援

AIの導入に課題を抱える企業に対しては、松尾研発スタートアップとの実証実験の支援を提供し、地域特化型のAIソリューションの開発を積極的に推進する。

現在、愛媛県では生成AIソリューションの導入に関心が高まりつつあるものの、どのように活用すればよいか分からない、あるいは大手ベンダーの提供するシステムが高額で導入が難しいといった課題を抱える企業が多い。松尾研究所は、こうした課題に対応するため、引き続きAI人材の育成と技術の社会実装を目指す。

■公式ホームページ
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