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大した事ないけれど、どうでも良くも、ない問題

侑太郎さんが、コスプレしてる!!

私はスマホを持ったままその場で立ち上がった。
そうする事で少しでも新鮮な空気を脳に供給し、澄んだ心で侑太郎さんを見たかったからだ。


もうご存知の方も多いだろうが、侑太郎さんはBリーガー。
愛知県は三河地区にあるバスケットボールチーム「シーホース三河」に所属する元気な33歳。
なかやまきんに君お墨付きの三角筋の持ち主で、好きな食べ物はグラタンだ。

お住まいの地域にスポーツのクラブチームがある人にとっては「右足を出して左足を出すと歩ける」くらいに当たり前の事かもしれないが、選手は試合や練習の合間にその地域の自治体や施設に赴いてイベント活動に参加している。

なので、警察署や消防署などで「一日〇〇署長!」的なイベントに選手がお呼ばれすることもあり、侑太郎さんも色んなイベントにお呼ばれしている。

思い返せば、2シーズン前の名古屋ドルフィンズの時は消防署に行っていた。

侑太郎さんは身長190㎝で頭身も高く、股下は5m(私の視点)何着てもサマになる。
だから、イベントで制服を着るならどう考えてもレスキューのオレンジのあれか、紺色の活動服に安全靴姿かな、なんて勝手な妄想を私はパンパンに膨らませていた。

だが、Xに流れてきたのは防火服姿の侑太郎さんだった。

防火服。

消防士が現場で着用している、黒くて全体的なシルエットがストンとしたあれだ。
昔のハリウッド映画では弁当の保冷バックの内側みたいなペリッとしたシルバーに黄色いラインだったが、最近はスタイリッシュになったとは言え、それなんかい。

“消防“と言えばそれやからえぇねんけどな。

そっちにするなら下だけ防火ズボンで上半身裸が良かった。
アメリカで毎年バカ売れしてるマッチョな消防士が無駄に現場で露出してるカレンダー風にして欲しかった。

だがしかし、これは地域の子供向けのイベントも兼ねている。
あわよくば将来の消防士の担い手探し(アスリートも然り)のイベントや、そんな私に都合の良い事が起きてはならない。

起きたとて、侑太郎さんの美しい筋肉の燃焼で灰と化して風になる私と、筋肉好きのお母さん、そして一部のお父さんの黒目をハート型に射抜くだけで終わる。


去年は三河への電撃移籍など気忙しくすごし、特に侑太郎さんのコスプレ案件はオールスターゲームの“めっちゃ良いにおいするごみ収集お兄さん“だけだった。

だが移籍2年目の今年は、瑞穂警察署の「1日警察署長」に選出され、秋の交通安全運動のイベントに登壇、自転車の啓発運動について語った。

大好きなバスケで交通安全を表現した「ようそんなとこに着地させたな」なトークも素晴らしかったが、何よりも侑太郎さんの警察姿が麗しかった。

今までのコスプレの中で一等似合っている。
本気で似合いすぎて違和感が仕事を放棄し、なぜだかうちの近所にもいた気までしてきて、買い物ついでに警察署の辺りをそわそわと彷徨う不審者行動をとってしまうほどだ。

さらに侑太郎さんの麗しい警察コスプレ写真がSNSで拡散されると、普段は圧倒的に女性人気が目立つが、これに関しては男性の黄色い声が目立った。

そうだよな、男子はミニスカポリスの次にこうゆうの好きよな。

筋骨隆々で真面目なアスリートの侑太郎さんが、みんなの憧れ警察の制服着てんや、そんなん鴨がネギ背負ってるどころか、ステーキでステーキサンドを作ったようなもんやもんな。
それが一皿10万円したとしても、自分の熱気でメガネを曇らせながらレジで20万円現金支払いして「お釣りは結構です」って言うてまう、客の下心だけでボッタクリシステムが自然発動する事案でしかないよな。

私個人としては「筋肉の強調が少ない、袖を千切って腕をだせばもう5万!両腕揃えて10万でぃ!!」ともう一声叩きたいところだが、侑太郎さんのそこいらの少年よりも純朴な笑顔の眩しさに目が眩んでその場に五体投地した。

馬鹿野郎め。

このアジアの純真を金で叩こうなんて、私はどこまで性根の腐った変態筋肉モンスターなんだ。

こんな自分は変態の風上にもおけない。
侑太郎さんの美しさを噛み締め悔い改め、今日からは風下で生きよう。


ほら、感じてみたまえ。なんて爽やかな風だ。
風上では気が付かなかったが、風下の今なら何でも見えて、空だって飛べる気がする。

突如として私の視野が開け、見落としていた違和感が仕事を始めた。
あれ?この写真の侑太郎さんのお腹周り…おかしくない?


ウエストのベルトが、変だ。


水色のシャツとタックパンツに黒のローファー、ウエストには白いベルトが巻かれている。
これは正式に貸し出された警察の制服だし、白のベルトは交通警察の印だから何もおかしいことはないはずだ。

でもなんかどうも、ベルトをした腰回りがモタっとして見える。

ちょっと写真を拡大したいが、場所が場所だ。

風下の変態に成り下がった私如き女が、世帯を持った殿方の腰回りを拡大するのはさすがに憚られる。

だが、溢れ出る違和感を拭い捨てきれない。

私は侑太郎さんが住居を構える名古屋方面を向いた。
そして真っ先に妻君に「南無三!」と唱え、写真の腰回りを拡大させていただいた。


侑太郎さん、ベルト、2本してる?


ウエストでキチンと履いたスラックスを細く黒いベルトで締め、その上から交通課の印である白い警察のマークが入ったバックルのベルトを重ねてつけていた。

はて?
警察の制服はベルト2本で着るもんなのか?
だって公式の着方よな?警察からちゃんと借りて着てるんやし。これが当たり前なん?

警察官の出没率がイリオモテヤマネコくらい低かったら、全国民が一緒に頭を抱えるかもしれないが、お巡りさんと言われるくらいに彼らは街中をくるくるまわっている。
みんな普通に見て知っているかもしれない。

だが普段から「筋肉鑑賞とセクハラの間で揺れる変態」の私は、警察は年貢の取り立てに来た地頭くらい怖い。
出来るだけ穏便かつ足早に「あ、今日も良い天気でござんすね、アッシはこれにて」と前歯を突き出し揉手で去りたい。

究極を言えば、一瞬でもその姿がチラつこうものなら脱兎の如く駆け抜ける、これが視界に入った警察と私との適正距離なのだ。

ドラマやニュースでも見るやろ、とツッコんだあなた。
私に至ってはそうは問屋がおろさない。

ニュースはニュース内容に気を取られ、ドラマは警察の全てが有太郎さんでなければ視界に入れたくないので、全員モブに見えている。
船越英一郎もモブ、舘ひろしもモブ、ちゃんとなんか見ていない、なんかすんまそん。

でも、今回は侑太郎さんの事なのでちゃんと調べてみた。
警察が外につけるベルトは「帯革たいかく」と言って、警察官の常備品である警棒や無線なんやを下げるためのもの。
「帯革止め」というストラップがついていて、ズボンのベルトと繋ぐ仕組みになっているのだそうだ。

なんや、ベルトで2本であってんかい。
でも帯革は基本、黒の革製らしい。

ほなこの白いのは普通のベルト?あ、職務の時でなく式典とかに出る時の正式なやつ?そしたらそれ1本でどうにか出来るはずでは?

どないなっとんねん、侑太郎さん。

私は一度立ち上がった腰を椅子に落ち着け腕を組み、じっくりと画面と向き合った。

侑太郎さんよ。
自転車の啓発云々も大変に必要なことではあるが、その麗しい腰回りの話と今季の筋肉の仕上がりについて私は重点的に聞きたい。


#なんのはなしですか
#賑やかし帯

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