青春短編小説『DT ゾンビ.』
短編企画小説!今月のお題!
「夏祭り」「ゾンビ」「水」
この3つのお題を使ったブロマンス〜BL小説
後ほど他の参加者様の小説も集めてまとめ記事を出します!
まとめ読みしたい方はそちらからどうぞ!
*男性同士の恋愛を含むよ!
*ブラコン末期だよ!
*ちょっと童心にかえるよ!
レッツ♪ #noteでBL !
本日のキャスト
30歳・童貞・兄貴の弟のブラコンの充時
包容力と体がデカい兄貴の恋人で俺の親友リキ
一途が度を越す心配性の兄貴の元彼の巴先輩
なんてたって俺の兄貴の・・・好きすぎて呼び捨て出来ない、俺の兄貴
名前はまだないねこ
本編『DT ゾンビ.』
俺は宗谷 充時、30歳、童貞。
「俺は人間をやめるぞ!リキ―――!!」
20代の終わり。
俺は高校からの親友リキに宣言し、人間を辞めて魔法使いチェリーになった。
だが。
目眩く魔法ライフは、ただの三十路ブラコンの童貞ライフでしかなかった。
「ある意味でモンスターじゃん」
人の実家で家人より寛ぐ親友のリキは、エアコンのきいたリビングの床に寝そべっている。
その背中に両親が飼い始めた子猫が飛びついた。
気のいい親友は、旅行中の猫の世話と留守を預かった俺のところに遊びにきてくれたのだ。
「非童貞はダァーッとれッ!!」
「じゃあ今日の充時はずっと独り言決定〜」
「なんてない。童貞とは孤独との戦いだからな」
自分の体温で床が温もると、またゴロリと寝返りを打つ、子猫は上手にそれを避けて首についた鈴を鳴らして飛び退いた。
全てがこいつの遊びになっている。
「名前は?」
「名前はまだない」
「……逆に大御所感あるな、猫なだけに」
子猫も俺もリキも、一歩たりとも外には出たくない灼熱の外。
梅雨明けもよくわからないまま蝉が鳴き出し、水田のオタマジャクシに足が生えた。
俺は童貞のままだが、こいつらは立派に蛙に向かっている。
「てか兄貴は?一緒かと思ってたけど」
俺の兄貴はリキの恋人で付き合ってもう1年になる。
「有時さん病院」
「ちょ、え?体調?怪我?」
「う〜ん、有時さんでなく巴先輩」
「あっ。…いつものあれか」
そして兄貴の元彼の巴先輩は、兄貴と物理的距離が離れすぎたり、1ヶ月顔を見ないと具合が悪くなる。
熱中症だと医者は毎回診断するが、暑さに騙されているだけな気がする。
それはリキも然り。
巴先輩は破天荒だが人間はできているし、ちゃんと心配だけど、どうも胡散臭い。
「なぁなぁ、充時はさぁ。病院までの交通費電子マネーで送金してから倒れるのどう思う?」
「丁寧な仮病?」
「帰りに俺への土産持たせるのなんでだと思う?」
「一握の申し訳なさと、理解してくれ、の気持ち?」
救急搬送は税金の無駄遣いだからとか、そんな事を言わない理由は、ちゃんと具合が悪くて医学的にも危険な状態にまで陥るかららしい。
お付き合いした数年間に致死量レベルの兄貴を摂取した離脱症状と俺達は思う事にしている。
兄貴は律儀に見舞いに向かったが、今回巴先輩が搬送された病院は「家族以外の面会禁止」で入れない。
仕方なく、駐車場から電話をかけて窓越しに対面しているそうだ。
「巴先輩さぁ、兄貴への愛で俺のブラコンを上回らないでほしい。兄貴溺愛キャラの商売仇には強すぎる」
「絶愛の白瀬、ブラコンの弟。俺の方が敵が多いわ!俺の有時さんだぞ!」
ちなみに今回の土産はリクエストに応えてくれた水羊羹らしい。
ブラコンの弟、元彼、今彼の俺達は、異常なくらいに俺の兄貴のプロバスケットマンの宗谷 有時が大好きだ。
この話の舞台が韓国なら俺達はきっと泥沼だ。
でも俺達は日本人、同じ「兄貴が大好き」という共通点の元、紳士協定を結んで仲良く共有している
俺の兄貴は魔性の男だ。
色々説明が面倒なので簡単に言うと、俺は物心ついた頃からブラコンを拗らせ、兄貴に全てを奪われたくて童貞を貫いている。
まだ疑っている君に、俺のブラコンエピソードをひとつ教えよう。
去年、俺は念願の恵比寿の本社行きが決まった。
だが、秒で断った。
今の事務所の社宅が、兄貴の所属チームのホームアリーナまで徒歩圏内という好立地なのだ。
試合に行きやすいし、帰りに兄貴がふらりと俺の家に立ち寄ってくれる。
そんなの、会社の福利厚生にブラコンが入っているようなものじゃないか。
俺の人生の天秤は兄貴への愛に秒で傾き、その勢いで投石器のように出世をぶっ飛ばして上司の度肝を抜いた。
これが後に語り継がれる、ブラコン・カタパルト事件である。
「そだ!今夜町内会の祭りやんだって!晩飯になんか屋台だけ覗きに行こうぜ?俺、表でねこと待ってるから」
「それ採用」
みゃあ
「お前を置いていかねぇよ!」
と、頬を擦り寄せるが、即ため息を吐く。
「兄貴がいたらリキにねこを任せて2人で行けたのに」
「有時さんがいたら充時にねこ任せて2人で行けたのに」
みゃあ
「ごめんなぁ、お前が邪魔って言ってんじゃねぇの、浴衣でデートの魔力が強いの」
リキは子猫を抱き上げて鼻先にちゅっとする。
するとその一瞬だけきょとんと黙るが、またみゃあ、みゃあ、と口をいっぱいに開けて鳴く。
口を開くたび上げ下げされる口髭が「置いていくなよ!」の必死の抵抗に見えた。
後ろ足で蹴ったりもせず、丸まりもせず、テロンと伸びて完全に身を任せ、腹だけぽっこり出ている姿がなんとも幼くて愛らしい。
「浴衣で祭りで、帰ってそのままエッチ、最高なのになぁ〜」
聞き捨てならん。
「兄貴の弟の前でふしだらな!しかもここは神聖な兄貴の実家だぞ!」
「だってしてぇじゃん!浴衣で祭りなんか鴨がネギ背負ってきてるようなもんだぜ!」
浴衣での交わりなど童貞の俺には強すぎる。
非童貞が言う『恋人と浴衣で祭りの後にエッチ』と俺達、童貞族が言うそれは重みが違う。
こいつらは「朝起きて月曜日…と思ってたらまだ日曜日だった!」くらいの程度だが、俺達からすれば「10年以上推しているアイドルが全裸でラブホテル背負ってきた?」レベルの最重量カモネギ現象。
ここで非童貞民は言う「据え膳」と。
バカ言っちゃなんねぇ。
俺達、童貞は思慮深い民族だ。
全裸でラブホで待ってるなんて99.9%童貞を殺す罠と警戒する。
憧れの人が自分の前で股を開くなど天変地異の前触れ、もしくは挿入5秒で誤射して辱められた上に「責任とれ」と言われ残りの人生、稼ぐ金を貢がされる未来を想像してしまう。
もしくは、帰り道で童貞喪失の余韻の中で財布とスマホを同時に落とす。
そんなもの据え膳な訳あるか、99.9%童貞を殺す罠だ。
『絶対、毒入ってます。台所の屋根裏で隠密見たし、庭で青い結晶落ちてて蟻が死んでたから』って言われた後の毒味係だ。
童貞歴歳の数の俺の審美眼をみくびるな。
「その鴨、確実に青酸カリ使ってる」
「なんの話?」
リキの胸の上で野生を忘れた今時の子猫が、へそ天で昼寝を始めた。
人間だったら全裸でおっ広げ、そんな姿を易々と人前でするなんて俺には考えられない。
「こいつ無防備すぎない?」
「はは!充時が防御率高いだけだろ!鉄のパンツ履いてるし」
「非童貞はダァーッとれッ!!」
「お兄ちゃんの有時さんは、ほぼノーパンなのにな」
「それな。俺も兄貴があんなパンツのゴムの緩い人とは思わなかった」
俺が何度も脱・童貞チャンスを見過ごす隣で、兄貴は真面目でおとなしい顔をしながら、順調に経験値をあげていた。
思えば、中学生の時に部屋で当たり前に一緒に宿題をしていた兄貴のクラスメイトのあの子も、大学に入る直前に行った卒業旅行と称した男女3対3の旅も、バスケの3onXをしに行ったのではなく夜のエス・イー・エックスをしに行っていた訳だ。
流石に大学で男子寮に入った時は兄貴の武勇伝もここで赤玉と思ったが、40年に1人の逸材と言われ、のちに年俸が億を超える天才・巴先輩と懇ろになって帰ってきた。
これに母さんは全国制覇以来のガッツポーズ。
父さんはやけ酒で夜を明かし、俺は河川敷で1人石を投げ「ロマンスってなんだ!」と途方に暮れた。
非童貞でもいい、だが俺の兄貴を非処女にした罪は重い。
だってなんか、だって。ちょっと色々下半身で期待しちゃうじゃんか。
ちなみにだが。
兄貴と巴先輩が暮らした寮の4階の角部屋は『出世部屋』と呼ばれている。
プロ選手を2人も排出した伝説の部屋は、金を積んででも皆んな入りたがった。
だが、俺からするとラブホの一室でしかない。
夜な夜な巴先輩に衣服を剥がれ、霰もない姿で喘ぎすがる兄貴を想像してしまうしかなかった。
リキは見事に出世部屋に入り、俺達の同期の中で唯一プロ入りを果たす。これは絶対にご利益がある証拠だ。
さらに晴れて兄貴の恋人にまでなったから伊達じゃない。
「今、俺の兄貴のパンツ内遍歴を脳内で整理したんだが一つ気付いた事がある」
「お前さぁ、人の恋人の下世話なデータとるなよ」
「出身校がそこそこで、一般人よりバスケが出来る程度の高校生だった巴先輩は、兄貴と出世部屋で懇ろになって、大学の4年で日本代表選出までいったよな?」
「あ。俺も出世部屋からプロ入りして、有時さんとお付き合いして、初めてエッチした次の日にHCからA代表の誘いの連絡受けた」
これはあの部屋の魔力か、それとも兄貴の尻の魔力か。
「おかしい。ピースは揃っているのに俺だけ出世してない」
俺は兄貴が入寮するまでの15年間、同じ部屋で暮らしていた。
兄貴と暮らすことが出世の近道なら、俺は何故になんの恩恵も受けていないのだ?
「兄貴と暮らしただけで懇ろにならなかったからか?」
「ちょ、待てって充時。出世は自分でブラコン・ボナパルトしたんだろ?」」
「誰がナポレオンだ、カタパルトだ!てかな、もしも俺が恵比寿の本社なんか行ってみろ、兄貴不足で巴先輩と同じ道辿るじゃねぇか!」
「月一で具合悪くなるの?」
「それはないけど。なんかしら拗らせる」
「もう充分、末期のブラコン童貞モンスターじゃん」
「話がそれてる!俺が兄貴と懇ろになっていたら、今頃俺は違う人生だったはずだ!」
「それは違うぜ?つかさぁ、そもそもお前は兄貴の弟だから懇ろにはなれねぇんだよ」
「そんなのズルい!!俺だって兄貴で脱・童貞したい!」
俺達の声に子猫が飛び起き、リキの上から転げ落ちた。
見事なバランスで着地した子猫を、リキが「びっくりしたな、悪いな」と大きな手で包んで胸の上に戻すと、子猫はまたうとうととキトンブルーの目を細めた。
俺の兄貴をも抱き込む包容力は半端じゃない。
「充時が童貞なのはよぉ、有時さん云々じゃなくて自分が現実から逃げてるだけだろ。
童貞と水掛け論しないで、自分のちんちんと会話しろよ?脳内童貞ゾンビネーションとりあえずやめろよぉ」
「だってここまで大切にしてきたんだから、一番理想の状態で手放したいじゃねぇか」
「逆逆!理想を追いすぎてここまで腐らせたんだよ!」
あぁ言えばこう言うが納得もしてしまう。
「兄貴とエッチさせてください」
「それは俺の決める事じゃねぇし、俺達だけで決定する事でもない。
でも、エッチじゃなくてコミニケーションの一環でイチャイチャするなら良しとは出来る。兄弟の戯れ程度ならいいぜ」
「ありがとう親友!早速だが、兄弟の戯れの話なんだけど」
俺には、幼い頃に父さんに全力でカンチョーをして激怒された過去がある。
激怒の理由はカンチョーに驚いた訳でも、恥ずかしかった訳でもなく、尻の穴の周りに生えた毛とパンツがカンチョーで絡み、さらに細い指のせいで中に入り込んでしまい、解くのが壮絶に痛かったかららしい。
怒られながら俺は信じられなかった。
そんなところに毛が生えてるなんて想像したことも無かったからだ。
尻の穴を確認しなければ。
当時小学4年生の兄貴との入浴中、先に湯船からあがろうとした幼く細い兄貴の腰を俺は掴んだ。
そして目の前にあった白い尻をむりっと剥いて中を覗いた。
「ない、毛」
当たり前だがツルツルだった。
兄貴は怒る事もなく、ニヤリと笑って俺にやり返した、小学生なんてそんなもんだ。
「兄弟の戯れの最高到達点がここなんだが、これをまた兄貴にやっていいのか?」
晩飯調達に祭り会場に向かいつつ、近づく祭囃子をBGMに俺は全力で熱弁した。
俺の話に放心したリキの手の中から子猫が顔を出し、りりん、と赤い鈴を鳴らして手から逃げ、肩に登ってするりするりと首元に柔い体をすり寄せる。
ふわふわとした毛の色は白、ピンとしたしっぽの下に可愛い肉球とお揃いのピンクのお尻の穴が丸見えで、淫らな期待と混ざってしまう。
呑気にうずうずする俺の隣でリキは眉間を揉んだ。
「ごめん、ちょっとテレフォン使っていい?」
「え?兄貴に?」
帰ってきたら即実行か?
「いや、巴先輩」
「なんで元彼に兄貴の体の権限があるんだよ?」
「俺達の界隈の決まりなんだけど、有時さんを嫁に欲しかったらまずは巴先輩を倒してからお父さんに挨拶に行かないとなんだよ」
「兄貴のクエスト複雑すぎない?!」
「色々あんだよ!」
「めんどくせ」
「童貞はダァーッとれッ!!」
ちょい書き
*「ゾンビ」はゾンビネイション、「水」は水掛け論、祭りは食料調達で回収してください。
ゾンビネイションについて
スポーツ観戦にはつきものの音楽。
NBAでは基本HIPHOP、日本のBリーグはロック中心だが、「ゾンビ」ソングがめっちゃ多い。
VINAI の「Zombie」やKernkraft 400の「Zombie Nation」など。
ゾンビネイションは社会的にはネガティブな比喩表現ですが、スポーツにおいては「何度死んでも甦るさま、あきらめの悪さ」を表す。
小説ではこっちの意味で使ってます。
「息子が天才イケメンの玉の輿に乗る世界線なんてお父さんは許しません」
大学生の巴と有時の夏祭りデートを阻止したい有時のお父さんのギャグ小説が書きたくて震えましたが、文字数的に無理があったんでやめました。
岡田あーみんの「お父さんは心配性」みたいなんを書きたかったけど、構想の時点でお父さんより巴の心配性が上回って負けました。
霊長類最強の心配性です。
