短編小説『ここに〇〇があります』
今回は『ふと、振り返るとそこには』の書き出しで書く『過去回帰や回想無し』の縛り3000〜5000字以内のブロマンス〜BL小説です!
私を含めて17人の作家さんが投稿してくれています、明日の17日に全員分の小説を収録したまとめ記事も出しますよ〜。
気になった方もご一緒にレッツ #noteでBL !
あらすじ
俺は充時、ブラコンの童貞だ。
いや、ブラコンだから童貞だ。
ブラコンの俺、俺の親友で兄貴の彼氏のリキ、俺の先輩で兄貴の元彼の巴先輩は、ひょんなことから兄貴の家に集結した俺の兄貴の愛の奴隷。
寝室の床に落ちていた一枚の愛らしい女性用の〇〇が引き金になり、男達の不毛な論争勃発!
過去の男、今の男、脳内の兄貴は美少女のブラコンの一触即発ラブコメディ!
果たして俺は美少女の兄貴と今夜一戦交えれるのか?!
本編『ここに〇〇があります』
ふと、振り返るとそこには、愛らしいフリルの白いパンツが落ちていた。
見るからに女性用のそれは間接照明の光をツルツルとした素材が反射し、今まさにすとんと床に落として足を抜いたような生々しさでくったりと床に横たわっている。
ここは俺の兄貴の一人暮らしのマンションの主寝室のベットの床の上。
兄貴に彼氏はいるが、彼女も嫁も姉妹も家に呼ぶような間柄の女友達もいない。
ということは。
このパンツは兄貴の完全なる私物。
「事件だ!」
俺はパンツを掻っ攫い、寝室からリビングへ出た。
そこにはリキと巴先輩が2人並んで腕を組み、全く同じポーズでソファに並んでW杯のアジア予選を観戦してる。
注目を自分に集めるためリビングの壁づけにされた液晶の前に立つと、邪魔だと言いたげに2人は同時にモーゼみたいに両サイドにぱかっと別れて俺を避けた。
「ちょ、充くんどいて!88年ぶりに日本が中国に勝つかもしれんねんて!」
「充時ぃ〜やべぇんだっ…うわ、バックドア!完全に裏読まれてる!」
リモコンは巴先輩が握りしめている。
ハーフタイム開け3Q残り2分で追加点無し、2人は絶対に俺に興味なし。
ブツッ――
俺は即座に壁のコンセントから黒いプラグを引き抜き、中継を強制終了させた。
突然のブラックアウトに理解が追いつかない2人は、液晶に映った自分達の間抜けな顔を呆然と見つめる。
アナログな壁掛け時計のコツ、コツ、と時を刻む音を8秒やり過ごすと、巴先輩はリモコンの赤いボタンをギチっと押し込んだ。
何度繰り返しても反応しないテレビに首を傾げ、電池収納部を開けて電池を抜き出すと、手の中でコロコロし始める。
事態を把握できずにポカーンと顎を落としたままだったリキが、やっと我に返った。
「ふぇ?有時さんの家のテレビ、時間規制とかあったっけ?」
間延びした声で部屋の主である俺の兄貴の名前を親しげに呼んだリキは、俺の高校からの親友で俺の兄貴の今の恋人だ。
「みつ君、単3電池の在庫どこか知っとる?」
俺の兄貴にフラれたが、諦めきれずに尻を追い続けている執念深さは大阪一の巴先輩は、俺の大学の先輩で俺の兄貴の同期で元・恋人だ。
「先輩、リモコンに問題はないので速やかに電池を戻して下さい」
「これいけん?」
「いけます」
ローテーブルを挟んだ2人の向かいにオッドマンを置いて座り、咳払いを一つして空気を切り替え、俺の手汗でしっとりした愛らしいパンツを開いて見せた。
「ここに、パンツがあります」
テーブルに優しく置くと巴先輩の口角が不快に下がった、下着であるパンツを食事をするテーブルに置かれたのが嫌なんだろう。
それに気付いたリキが、即座にティッシュをしゅぱぱっと3枚抜いて「失礼します!」とパンツをそっと持ち上げて下に敷き、直置きを避ける。
なんの効果があるのか不明だが、リキの配慮のおかげて3人の成人男性の真ん中にパンツとティッシュという、解釈次第では淫猥でシュールな構図が爆誕。
性の目覚めと共に童貞捨てたような2人は落ち着いたものだが、母親以外の女性の下着に初めて触れた俺の口の中はカラカラで、潤そうと飲んだ唾が喉でゴクッと音を立てた。
「これは、俺の兄貴のパンツですか?」
「…どないやねん、小学生のクイズでももうちょいヒントあるやろ」
「俺の兄貴の寝室の床に落ちてました。だから確実に兄貴のパンツと俺は思うのです。
そも、あんたらがここにいるってことは、ベットの中で女性的な立場になるのは俺の兄貴しかいないってことですから」
核心をついた俺の一言に2人は目を細めてちろりと互いを横目で見た。
元彼と今彼という立ち位置から互いを敵視しているところもあるが、逆に言えば同じ男を愛する仲間意識も無くはない。
兄貴の穴兄弟と言って仕舞えば、ガチの弟の俺より兄貴への愛の魂で繋がったファミリーとも言える。
「どちらかが俺の兄貴から脱がせたパンツですか?」
「んな訳ないやろ」
「そうだよ、有時さんこんなちっちぇえパンツ履かないし」
「じゃあこれは誰の兄貴のパンツですか?」
「誰の兄貴のパンツって…兄貴ってのはよ、殆どがこんなちっちぇパンツ履いたらちんちんはみ出る生き物なんだって」
戸惑う俺を諭しながら2人は冷静にタグまでしっかりパンツを確認し、生地が二重になったちょうど股間が当たる部分を見て、視線を通わせ頷き合った。
童貞の俺だけわからない暗黙の了解が交わされている。
「普通に可愛いな、俺は結構好みかも」
余裕と含みのある台詞を吐いて、巴先輩は背もたれにゆったり背をつけて足を組んだ、そしてコーヒーカップに口をつける。
その余裕、怪しい。
「先輩ってそんな趣味があったんですか?」
「ん?」
「俺の兄貴に女性用の下着つけさせて…」
俺の邪推に先輩はガツっと前歯をカップの淵にぶつけ、その衝撃でコーヒーに出来た波紋が唇にあたり「あッつ!」と唸ってテーブルにカップを置く。
弁解に焦ったのか図星に焦ったのか分からないが、先輩は片手をあげて俺達に手のひらを見せた。
「まぁて待て待て!俺と有時は1年前に別れて以降、体の関係は全くない。やけど!これは今しがたみつ君が拾った有時のパンティやろ?ほな俺、」
プレイ自体は否定していない元彼である先輩のやたら早口の弁解に、今彼のリキの片眉がピクッと引き上がった。
「パンティって言わないでよぉ、生々しい!てか、もしかしてそん時忘れていった先輩の私物?」
「はぁ?俺は過去の男じゃわざわざ言わせんなやボケこらカスぅ今付き合うとるオノレのんとちゃうんかいハゲ」
「ちげぇし!俺は有時さんはパンツなんかないくらいがちょうどいいんですぅ!わざわざ着せるとか意味わかんねぇ!」
「あ、は〜ん?リキはそうゆうのやらしてもらったことないんや、まだ?」
「うっ…らやましくなんかないし!!」
俺はヒートアップする2人の間に入り、渦中のパンツを高らかと掲げてこの不毛な言い争いを止めた。
正直、童貞の俺に到底入れない会話が辛かったのもある。
「静粛に。このパンツは2人にとってやましいパンツなのですか?」
「てて、てかよぉ!ずっと気になってたんだけど毎回“俺の兄貴“ってつけんのなんなの?上の句?」
「違う、枕詞だ。リキは俺の兄貴に本当は女性下着をつけさせたかったのか?」
リキが瞬時に身を引いて、代わって出てきた巴先輩が俺の肩をポンと叩いた。
「みつ君な、兄貴ってのはいつまでも弟のものではおってくれんのやで?」
「お言葉を返します。俺の兄貴もいつまでも先輩のものではありません。女性用のパンツ履かせてエッチしたからフラれたんですか?」
巴先輩は無表情になって拳でドンっと太ももを叩き、つきもしないテレビのリモコンを連打し始めた。
リキはスマホで試合を追って途中経過のスタッズを早口で読み上げる。
もしかしたらどちらとも女性用下着を俺の兄貴につけさせた覚えがあり、それをひた隠すためパンツをなすりつけあっているような態度に見えてイラッとする。
俺の兄貴をなんだと思っているんだ。の、怒り2%。
羨ましい48%、残り全ては希望的観測だ。
今夜みんなでW杯のアジア予選を観戦しようと俺達をここに集めた兄貴は、俺が到着した頃には急な所用で出た後だった。
先に到着していた2人に出迎えられ、俺は本日の兄貴に会っていない。
と、言うことはだ!
突然清楚な兄貴が美人兄貴になりましてラッキースケベで股間が一触即発の脱童貞の危機!が今から始まろうとしている可能性しかないという事!
天に召します兄貴の弟の神よ。
肉親にこんな下心を持つなど兄貴の弟の風上にも置けないが、俺の兄貴が美少女でフリフリパンツのパンチラが拝めるなら、俺は全力で風下に待機しラッキースケベを賜りたい罪深き弟です。
兄貴の弟のブラコンの俺はもう過去のものになり、今日から俺は、美少女になった兄貴と未来を生きるシスコンになれる日がきた!
ブラコン勝利の勝鬨をあげよ!
「俺の兄貴はついに今日、美少女になったんだ!
と言うことは、俺も兄貴のフリフリおパンツ姿を見れるチャンスがあるってことだよな?」
この可能性に賭けた俺は大興奮だが、今まで大焦りだった2人はガクッと肩を落とした。
つかないリモコンを諦めてテーブルの角に合わせて置いた巴先輩は、なんやそっちの話かよ…と呟いて肘置きにくたっとしなだれた。
続いて脱力したリキも先輩にもたれる。
「あんなみつ君、そろそろ認めろよ?兄貴の兄貴である所以をよ」
何を言われても俺は挫けない。
俺は兄貴の弟に生まれて30年間この日を夢見て生きていたのだから。
「違います先輩!俺の兄貴はさっきまで俺の兄貴だったけど、数時間前に俺の兄貴の蛹から羽化した俺だけの美少女兄貴の蝶になりました!ラッキースケベも見込めます!」
「妹系ラノベのタイトルか」
「違います、美少女兄貴系です」
はぁっと巴先輩は重い息を吐いて俺の手の中でくしゃっと丸まったパンツを指差した。
「ほなな、みつ君の兄貴が美少女になったとしよう。その状態でここにパンツが落ちていると言うことは、どうゆうことか分かるか?」
リキを押し退けて起き上がった先輩は、俺の手からパンツを奪って綺麗にたたみ始めた。
大ぶりのリボンの端まで整え、膝に置いて手のひらでぽん、と叩く。
俺の兄貴が俺の美少女になり、何かのきっかけで寝室でパンツを脱いだ?
てことは俺の美少女兄貴は…。
「非処女の美少女?」
「びっくりした、めちゃ上手いこと言うやん。…いやまぁ、俺の兄貴の状態でもそれはもうないけどもやな」
「俺の兄貴は巴先輩が非処女にしたけど、俺の美少女は…誰が姉貴を非処女にしたの?」
「それ聞いてどうすんよ?」
「どんな具合だったかとか、聞きたい」
「あのな、自分の兄貴の密部の体感やぞ?」
「先輩、生々しいっす!てか、マジでこれが有時さんのパンツならノーパンで外出してるって事っすよね?」
「そう、俺が言いたいのはそれ」
ノーパンの美少女姉貴が大慌てで帰宅して玄関で鉢合わせた俺の顔の上に転んでしまって…以下R18自主規制。
「先輩、早まらないでください!童貞の俺には100年刺激が強過ぎます!」
「おぉ、脳内がどうなってんか知らんが、そっちの童貞が100年続くことを祈るわ」
「え?有時さん今、ノーパン?」
どうしよう。
今夜、恋人を驚かせてやろうと寝室に仕掛けたドッキリの女性用下着が俺の居らぬ間に大炎上している。
リビング内の脳内ピンクな会話を聞きながら、廊下をうろうろ20分頭を抱えていたが、ついに俺が女装趣味のノーパン男になった今、決意した。
このまま喋らせても流れ弾しか俺は喰らわない、早々に黙らせなければ。
「ただいま」
しれっと入室すると、まず巴が飼い主の侵入に驚いた猫みたいにビャッと飛び退いてソファの裏に隠れた。
裏からにゅっと伸びた手が、何故かテーブルに敷かれたティッシュの上に下着を置いて引っ込む。
なんの儀式?と首を捻っていると、「ゆぅじすわぁぁあ〜んッ!」と情けない声を上げたリキが、ヨタヨタ歩いて一歩手前で床に丸まり泣き崩れた。
なんで勝手に寝室入るのとか、過去の男との情事を共有されてるのか、言いたいことしか今はないけどとりあえずこの2人をどうにかしようと思った矢先、弟に股間を鷲掴みにされて前屈みになる。
「おかしい。俺の兄貴が…俺の兄貴だ!」
「…俺は、30年前からずっとみつのにぃにです」
「嘘だ!俺のにぃには美少女で、俺に捧げる操を守ってるんだ!」
「別次元の話はやめて、にぃにの股間から手を離しなさい」
「だっ、」
「離しなさい」
「…はい」
俺は弟の兄だから強気で入れる。よし、1匹黙らせた。
項垂れた弟をソファ裏に匿った巴が、にゅっと顔を出し「にぃに風呂でも一緒に入ったれやぁ」と応戦。
嫌味に伸ばされた語尾にコメカミがヒクつき、無言の圧力で両手を顔の横に掲げて爪をたて「シャー」っと威嚇してやるとビャッと毛を逆立てて引っ込んだ。
巴は元彼だからチョロい、2匹目完了。
パンパンっと手を払う間も無く、最後は涙ぐむリキのヤキモチ満載のタックルで盛大に尻餅をつき、諸悪の根源である自分のいたずら心を棚にぶん投げ舌打ちを咳払いに変換。
「有時さん…先輩と可愛いパンツでエッチしたのに俺にはしてくんねぇの?」
「あのね…それは酔った勢いで、」
「じゃあ今晩、俺と素面でしてよ?」
あん。
両手で頬を覆ってしまうほどの、ヤキモチ妬いて泣いちゃう年下の恋人の破壊力!
こちらはキスで黙らせてやった。
エロを封印した結果…
今年に入って『エロくない小説を書く』という手癖の封印を実施しています。
ごめんなさい、辛くてこっそり1万字のただエロいだけの小説書いてました。
絶対に出来ないと思うけど、note創作大賞にR18部門欲しいと思うのは私だけなんだろうか?エロいって意味だけなくて、表現の幅が広がるのになぁと思う。
世の中ってほぼグレーゾーンなんやし。
最後になりましたが、作中の巴のセリフ。
「はぁ?俺は過去の男じゃわざわざ言わせんなやボケこらカスぅ今付き合うとるオノレのんとちゃうんかいハゲ」
を噛まずにワンブレスで言えたらあなたも巴先輩です。
ちなみに悪口ではなく、リキを可愛がっているからこその砕けた言い回しなので悪しからず。
そしてリキもそれを分かっている、2人の関係が今日も良好な証です。
