【第5回/全8回】「身体を変える」食べ方 | 3つの視点でのテクニック
チートデイやリフィード、食べる回数・タイミング・順序といった、『食べ方』のテクニックについて。既にダイエット中・ボディメイク中の人はもちろん、これから身体を変えたい人にも、目を通してほしい内容です。
「チートデイ、入れていいですよね?」
ダイエットを始めた人から、最も多く受ける質問のひとつ。
「減量で落ちた代謝を戻すために必要だ」という情報を、画一的に信じてチートデイを続けた結果、減量が止まってしまう方がいます。問題は、チートデイそのものではありません。課題を明確に捉えずに、画一的に対策を決めてしまっていることにあります。
ダイエットは、科学です。課題を捉えて、仮説を立て、実行して、結果を観察する。その仮説検証の繰り返しです。ですから、まずは正しく課題を捉えることが重要です。
チートデイのほかにも、食べる回数、タイミング、順序。さまざまな論点で、たくさんの情報があふれています。情報に振り回されると、食事管理は複雑になります。複雑になれば、続きません。続かなければ、身体は変わりません。
今回は、その複雑さを、ひとつずつほどいていきます。
「設計」と「運用」を分ける
食事管理は、「設計」と「運用」に分けて考えるとすっきりします。
「設計」とは、何を、どれだけ食べるか。1日のカロリーとPFCのこと(第3回参照)。第3回を読まれていない方は、先に目を通されることをお薦めします。先に設計を理解のうえで運用を考える方が合理的です。
「運用」とは、その設計を、日々の生活でどう回していくか。チートデイ、食べる回数、タイミング、順序——今回扱うのは運用の話です。
設計が外れていれば、運用をどれだけ完璧にしても、身体は変わりません。だから、運用から考え始めても、たいていうまくいきません。
ここでは、第3回の設計を理解されていることを前提に、進めてゆきます。運用を3つの視点に分けて、順に見ていきます。
戦略的な衝動管理
ダイエットを続けていると、「もっと食べたい」という気持ちは、必ずやってきます。その衝動を、気合いで抑え込むのではなく、計画のなかに組み込んでしまう。それが、この章の考え方です。
食べたくなる場面には、二つの種類があります。ひとつは、身体がエネルギーを求めているとき。もうひとつは、心が息抜きを求めているときです。
身体がエネルギーを求めているときーーリフィード
ひとつめは、身体がエネルギーを求めているという課題。
ここで、チートデイとリフィードの考え方を説明します。両者に厳密な定義の違いはありませんが、実践のうえでは、こう分けると分かりやすいです。
・チートデイは、量もPFCも制限を外す
・リフィードは、炭水化物の量を計画して増やす
リフィードのねらいは以下です。
・減量期に枯れがちなグリコーゲンを補う
・疲労を和らげる
・筋力や筋量維持を助ける
・減量による代謝低下の抑制(明確なエビデンスは無い)
やり方は、シンプルです。タンパク質と脂質は普段どおりで、減量中のカロリーと維持カロリーとの差を炭水化物で埋めます。
たとえば、維持カロリーが2,600kcal、普段は2,210kcal(維持の85%)で減量しているとします。リフィードの日は、2,600kcalまで戻し、増やす390kcalを炭水化物から摂ります。
コンテスト出場者のような上級者は、炭水化物を2〜3倍まで増やすこともあります。経験則的に有効とされていますが、明確な学術的根拠はなく、体組成が大きく異なることもあり、初心者の方に必要なものでもありません。
体重減少が止まった、筋力が少し落ちてきた、やや疲労感が出てきた、という局面ではリフィードが有効な可能性がありますので、週に1-2回のリフィードを設けることは有効な選択肢になります。
心が息抜きを求めているときーー「1日」でなく「1食」のチート
もうひとつは、普段がまんしているものを食べたくなるという課題。
その対策として、あらかじめ決めた「1食」だけを、自由にします。『チートミール』と言われます。
・昼にラーメンを食べるなら、朝と夜は設計した通りの食事
・夜に会食があるなら、朝と昼は設計した通りの食事
エビデンスはありませんが、様々なクライアントを支援する中での経験則としては、夜にチートミールを置いた方がうまくゆくことが多いようです。昼や朝にチートしてしまうと、食欲が爆発してその次の食事も好きなものを食べてしまう傾向にあります。
大切なのは、その1食のあと、次の食事から設計した食事へ戻ることです。食べすぎた罪悪感から、翌日に絶食をしたり、長い有酸素運動を足したりする必要はありません。
1食で、身体が完成することがないように、
1食で、体脂肪が蓄積することもありません。
このように、各課題に対して、『リフィード』と『チートミール』を使い分けることがお薦めです。
トレーニングを活かす食べ方
正しくトレーニングしたら、その効果を最大化したいですよね?トレーニングの効果の最大化において、食べ方は非常に重要です。
食事回数とタンパク質の摂り方
ボディビルダーの食事を見ると、1日に5回、6回と食べていることが多いものです。
タンパク質を複数回に分けることには、意味があります。一度にまとめて摂るよりも、1回20〜40g程度を、3〜4時間おきに摂るほうが、筋タンパク質の合成を高めるうえで有効だと考えられています。
そのうえで、食事の回数について考察します。
結論的には、食事回数を6回にする必要は無く、3回でもよいと考えられます。アスリートを対象に1日3回の食事と1日6回の食事がもたらす影響を分析した研究において、両グループで体重・筋肉量・脂肪量の変化に差はなかったという報告があります。
一方で、別の研究で、「タンパク質摂取のバランスを崩したグループ」と「3食均等にタンパク質摂取したグループ」で筋トレを行い、筋肉量を評価した研究では、後者の方が筋肉量の増加が顕著であった傾向があるとされています。
従って、やはりタンパク質は1度にたくさん摂るよりも、毎食毎に摂取した方が効率的と考えられます。
トレーニング前は「動くため」に食べる
トレーニング前の食事は、運動中に力を出すためのものです。空腹のまま始めると、重量や回数を保てない方がいます。とくに減量中は、トレーニング前の炭水化物が、出力に響きやすくなります。
目安は、トレーニングの1.5時間前までに食事を終わらせること。
トレーニング前の食事は、脂質や食物繊維の多いものは胃に残りやすいので、避けるようにしましょう。
減量中だからといって、トレーニング前の炭水化物まで削る必要はありません。それは余分なカロリーではなく、トレーニングの質を保つためのエネルギーだからです。
トレーニングがきちんとできれば、筋量維持につながり、「体重は減ったけど思ってたカラダと違う…」という寂しい結果を防げます。
トレーニング後30分「ゴールデンタイム」は本当?
かつては、トレーニング後30分以内にタンパク質を摂らないと、筋肉を増やす機会を逃す、と言われていました。この時間帯は「アナボリックウィンドウ」と呼ばれます。
しかし、筋タンパク質の合成が高まる時間は、30分で閉じません。
数時間前にタンパク質を含む食事をしていれば、終わった直後にあわててプロテインを飲まなくても大丈夫です。反対に、空腹のままトレーニングをした場合や、そのあとしばらく食事ができない場合は、早めに摂る意味があります。
トレーニング後の食事は、プロテインとおにぎりでも構いませんし、帰宅して肉や魚とご飯を食べても構いません。大切なのは「30分」という数字ではなく、1日を通して必要な栄養を満たすことです。
「食べる時間」と「食べる順番」
よく語られる「食べても太らない時間」「痩せる食べ順」は、本当でしょうか?
夜に食べただけで、太るわけではない
「22時以降に食べると太る」。
この説明に、体内時計に関わるBMAL1というタンパク質が持ち出されることがあります。
確かに、代謝や血糖の反応には1日のなかでの変動があり、食事を早い時間に寄せることが、食欲や代謝の指標に有利に働く可能性を示した研究もあります。
ただ、それだけを根拠に「夜のカロリーは脂肪になる」と言い切るのは、少し単純化しすぎです。体脂肪の蓄積に大きい影響を与えるのは、食べた時刻よりも、エネルギー収支(摂取と消費の差)だからです。
仕事が遅くまである方が、晩ごはんを抜く必要はありません。むしろ、空腹で眠れない/眠りが浅いくらいなら、夜にも適切に食べたほうがよいでしょう。
夕食が遅くなると分かっているなら、このように分ける方法(分食)もあります。
・夕方に、おにぎりとプロテインを摂る
・帰宅後は、肉や魚と野菜を中心に軽く
「夜中に食べちゃった、もうダメ」という『全か無か』の思考になることは、減量を継続するうえで大きい問題で、意外と多くの方にその傾向があります。夜に食べないこと自体を目的にせず、空腹・睡眠・トレーニングを崩さないように差配することの方が大切です。
野菜から食べても、食べすぎれば同じこと
野菜やタンパク質を先に、炭水化物を後に食べると、食後の血糖値の上昇をゆるやかにできることが報告されています。これはひとつのテクニックとして有効です。
順序を意識するなら、目安はこうです。外食でも簡単に実践できます。
野菜や汁物
肉・魚・卵・大豆製品
ご飯・パン・麺
ただ、前提として、血糖値を抑えることと、体脂肪が落ちることは、別の話です。 野菜を最初に食べても、摂取カロリーが維持カロリーよりも大きい日が続けば、体脂肪は増えます。
この前提を理解していれば、満腹感が出て主食や脂っこい料理を食べすぎにくくなる、といったメリットもある食べ方になります。エネルギー収支の考え方を前提にして、うまく使ってゆきましょう。
さいごに
今回解説した「運用」は、カロリーとPFCの「設計」を実践しやすくするためのものです。
食事管理とは、生活を食事に合わせることではありません。自分の生活のなかで、目的に合った食事を、繰り返せるように運用することです。
少しでもお役に立てたなら、スキとフォローで教えていただけるとうれしいです。また、「このテーマを扱ってほしい」というご要望があれば、ぜひコメントで教えてください。
次の第6回では、トレーニングの応用的なテクニックを扱います。
あなたの身体は、思っているよりも早く変わる。
