SpaceX上場5週間で−45%。巨大IPOはいつ下げ止まるのか、売り勝負もあり?
統計が好きで、株のデータ分析を中心に発信しているトレードノートです。
6月12日に上場したSpaceX(ティッカーSPCX)は、調達額で米国史上最大のIPOでした。公開価格135ドルに対して初値150ドル、4日目にザラ場225ドルまで買われ、そこから5週間で123.99ドル(7/17終値)。高値から−45%、公開価格も割り込みました。どこまで下がるのかと気になっている方は多いはずです。
こういうとき、日々の材料を追う前に、同じ構造を持った過去の巨大IPOがどこで下げ止まったかを数えることにしています。
まずこの記事の結論から。
過去の巨大IPOの底は、ロックアップ解禁の「前」に来たことがほぼありません。底が入ったのは大型解禁を通過した後、決算がカタリストになった局面です。SpaceXの解禁は8月から12月にかけて段階的に来るため、過去のパターンをそのまま写すなら、下げ止まりの候補は早くて9〜10月、遅ければ12月。深さの過去分布は公開価格比−16%から−54%に散らばっています。
ロックアップという時限装置
念のため定義から書きます。ロックアップとは、IPO(新規上場)の際に、経営陣や既存株主が一定期間株を売れないよう契約で縛る仕組みです。上場直後に出回る株(浮動株)を絞って値崩れを防ぐ代わりに、期限が来ると封印されていた株が市場に出てきます。
SpaceXの場合、この設計がかなり特殊です。
発行済株式は約131.5億株。うち上場で売り出されたのは約4%だけ
8月上旬の決算発表後に20%が解禁。以後8月21日に7%、9月10日にさらに7%
株価が公開価格の30%上(175ドル)を超えると、追加で10%が前倒し解禁
10月末の決算後に約28%、12月8日に180日ロックアップが全解除
最大の塊は2027年6月14日。マスク氏保有分を含む64億株
浮動株4%の市場に、9月上旬までで最大44%分の売却可能株が積み上がります。単純計算で、市場に出うる株数が数ヶ月で10倍になる設計です。
それでも「指数に組み込まれるから買われる」という期待があります。実際、この銘柄は上場翌月にはNasdaq 100へ組み入れられました。
指数の買いは、思ったより小さい
では、その指数買いは解禁の売りとつり合うのか。つり合いません。理由は指数のウェイトの決め方にあります。
Nasdaq 100もMSCIも、組み入れウェイトを時価総額ではなく浮動株ベースで計算します。浮動株が4%しかない今のSpaceXは、時価総額1.6兆ドルの巨人としてではなく、その4%分の会社として指数に入ります。指数ファンドの買いも、その小さいウェイトの分だけです。しかもNasdaq 100への組み入れは7月上旬に済んでおり、この買い需要はすでに通過しました。
もう一つの柱と期待されるS&P 500は、さらに遠い。指数側は6月に大型IPOの早期組み入れ案を否決し、従来どおり「上場から12ヶ月+直近通期の黒字」を要求しています。SpaceXの2025年は営業赤字(−26億ドル)なので、組み入れは早くて2027年半ばです。
つまり今後半年の需給は、桁の小さい指数買いと、桁の大きい解禁売りの組み合わせになります。
過去の巨大IPOは、どこで底を打ったか
売り超の構図だけなら、話は「下がり続ける」で終わりです。しかし過去の巨大IPOは、どこかで下げ止まってきました。上場直後に人気化し、その後公開価格を割った(あるいは割りかけた)大型IPOは4例あります。
Meta(旧Facebook、2012年): 公開価格38ドルから3.5ヶ月で17.55ドル(−54%)。底は初回ロックアップ解禁の約2週間後で、決算ビートを合図に反転。最大の解禁日(11月)は、上昇に転じたあとに通過した
Uber(2019年): 公開価格45ドルから半年で約26ドル(−43%)。底は180日ロックアップ解禁のほぼ当日
Alibaba(2014年): 公開価格68ドルから約1年かけて下げ、16億株の大量解禁の直後に57ドル(−16%)で底
Arm(2023年): 親会社が9割を持ち続け、浮動株が小さいまま維持された例。調整は−9%と浅く、半年で株価は3倍になった
4例に共通するのは、底が解禁の「前」に来ていないことです。解禁が近づくと下げ、解禁を通過して売りが出尽くしたところに、決算などの材料が重なって反転する。逆にArmのように大きな供給が来なければ、そもそも深く下げません。SpaceXは、供給が来る側の設計です。
SpaceXに当てはめると
需給イベントと、過去4例を写した場合の価格の目安を、時系列の一枚にまとめます。

水準に幅があるのは、過去分布そのものが公開価格比−16%から−54%に散らばっているためです。バリュエーションで測っても、現在の株価は2025年売上(187億ドル)の約87倍で、全社では営業赤字。Starlink部門が年+50%で伸びている点を織り込んでも、「割安だから下げ止まる」と言える水準はまだ下にあります。
下は解禁の消化待ち、上は175ドルにフタ。この形は、少なくとも12月までは変わりません。
公平のために
本検証には次の限界があります。解禁日程は公開情報なので、市場がすでに織り込んで前倒しで下げている可能性があります(その場合、底は過去例より早く来ます)。サンプルは4例しかなく、浮動株4%というSpaceXほど極端なIPOの前例はありません。また打ち上げ事業の性質上、Starshipの試験結果ひとつで需給と無関係に大きく動きます。実際、直近の下げの一部は試験中止が引き金でした。
まとめ
SpaceXは公開価格135ドル、ザラ場高値225ドル、7/17終値123.99ドル。高値から−45%で公開価格も割れた
浮動株4%に対し、8月から12月にかけて段階的なロックアップ解禁が続く。指数買いは浮動株ベースで小さく、S&P 500入りは早くて2027年半ば
過去の巨大IPO4例の底は、いずれも大型解禁の通過後に入った。深さは公開価格比−16%から−54%に分布
過去分布を写した下げ止まりの目安は、時期なら9〜10月か12月、水準なら95〜110ドル(下振れ時75〜85ドル)。株価175ドル超で追加解禁が発動するため、戻りにも構造的な上限がある
※本記事は教育コンテンツであり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。
※記載の数値は執筆時点(7/17終値)の市場データと公開情報の検証結果であり、将来の成果を保証するものではありません。
※投資の最終判断はご自身の責任で行ってください。

