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トラッドが「しっくりくる」理由を考えてた。

 みなさまお久しぶりでございます。カイです。書こう書こうと思いながらも、なかなか自分の思想を外に出すに至れなかったこの2年弱。ようやく「自分の理解」と、「自分にとってのトラッド」がなんなのか、淡く輪郭を帯びてきたので、これは良いタイミングだ、とデスクワークで物理的にも重くなってしまった腰を上げてiPadのキーボードに向かっております。(心なしかタイピングも早くなりました。)まずは、僕にとっての「トラッド」とは、ここから言葉を紡いでみたいと思います。

カナダとアメリカをたなびかせる僕

 両親ともにカナダ・アメリカ在住経験があり、さらに僕自身も幸運なことに幼少期をアメリカで過ごせた経験から、「アメリカ」は僕にとって非常に身近な存在でした。好き嫌いが多かった僕がうどんと焼き魚以外で初めて美味しいと思ったものはチーズバーガーだし、未だに一番好きな食べ物は揚げた芋です。でも意外にも僕のアメリカでの経験は、日本人としてのアイデンティティをより強固にしてくれたのをよく覚えています。「紅白歌合戦観ないヤツは日本人じゃない」なんて訳のわからない日本人論を展開する小学生はまあ稀だったでしょう。

アメリカで8歳の誕生日。揚げた芋(コロッケ)は今でも大好物。

 小学校高学年で日本に帰国してからは普通の公立小学校に通う訳ですが、もちろんランドセルなんて持ってなかった僕は、アメリカで使っていた赤いバックパックで登下校していたのを覚えています。背面にでっかくKaiって書いてあるやつ。たかだか2年程度のためにランドセル買うなんてもったいないし、何より僕自身がランドセルを背負いたい欲もなく、小学校生活を無事にノーランドセルで終えました。今思えば、アメリカ赤バックパックが象徴する「アメリカ育ちとしての自分」を1ミリも疑わずに済んだ経験は、僕のトラッド感にも大きな影響を与えたと思います。先生と両親のファインプレーです。加えて、母の趣味で食器はほとんどファイヤーキングだし、服は父のお下がりのジェイクルーやラルフ、エルエルビーンなんかもよく着てたので、土台には薄っすらとアメリカを感じられる暮らしが流れていました。

父とお揃いのエルエルビーンのネルシャツ。
アメリカ自宅リビングの棚。机の花瓶もファイヤーキング。

 大学生になり、制服を脱ぎ、「毎日服決めるのって面白いかも」と自覚をし始めた時、僕が自然と興味を持ったのがアメリカ的なスタイル、つまりはアメリカントラディショナルでした。あまりに自然で、好きである自覚すらなかったくらい。父から貰った着るのが面倒なシオシオ生地のジェイクルーのシャツはポップオーバーのシアサッカーって言うらしいとか、チクチクするから好きじゃなかった雪模様のセーターはノルディックって柄に分類されてるとか、自分の身の回りにあるものが急に理解できるものになったことが嬉しくて、それらを起点にしながらどんどんと見識を深めていきました。

シオシオ生地のジェイクルーのシャツ。まだあります。

 高校生の時着てたコートはダッフルコートっていうんだ、とか、ブレザーもどうやらアメリカンらしいぞ、とか。当時は服の歴史を掘ったり学びを深めていたつもりだったけれど、今思えば、身近な服が自分のもうひとつのアイデンティティでもある「アメリカ」と接続している感覚が面白かったのでしょう。「なぜ僕はこれが好きなんだ?」と自問する時も、「ああ、これはアメリカ的だからか」と納得ができる。つまり、僕は好きだからトラッドを選択した、のではなく、惹かれた先にトラッドがあった。これってなにも特別なことではなくて、自分の在り方を突き詰めた結果、僕の場合はそれがたまたま「トラッド」と名前のついたものだったってだけ。これはきっと、誰にでもある感覚なんじゃないかなと思っています。

ポロの星条旗セーターを着る僕。

 だからこそ、僕にとっては、着せてもらったもの、自分が選んだもの、これまで選んできたもの、すべてが「トラッド」です。子どものころ着せられた星条旗のセーターも、高校の制服のネクタイも、親戚のイタリア土産のアルパカのマフラーも、アメリカ出張で買ったスウェットも。気づけばそれらは、僕の中で静かに積もった、小さな歴史になっていました。そんな小さな歴史の積み重ねこそ、僕の在り方、つまり「トラッド」なんだと思います。スタイルのジャンルに留まらない、考え方としてのトラッド。僕と同じように「トラッド」に在り方を見出す方も、まったく別のスタイルに自分らしさを重ねてきた方も、この「トラッドのハナシ」を通じて、みなさんにとっての「しっくりくる」に触れるきっかけになれたら、なんて思っています。

バロン(犬)とバーガーキングとランズエンドのシャツ(たぶん)の僕。

 信じられないくらい理屈っぽくて、なのにどこか感覚的な、そんな僕にとっての「トラッド」を、これから少しずつ言葉にしていきます。改めましての自己紹介、こんなハナシにほんの少しでも何かを感じてくださったのなら、ぜひともこの先も一緒にトラッドの海を航海していきましょう。

すっかりオジサンになりました。
photo credit : Satoshi Naito

ハヤノ カイ

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