先輩の夢:5月3日
5月3日(日)憲法記念日。
本来ならゴールデンウィークの真っ只中、兄の謙二朗とどこかへ出かけるか、家でだらだらと過ごしているはずの日だった。だが、朝を過ぎ、昼を過ぎても、兄は昨夜から戻ってこない。
リビングのテーブルには、昨朝兄が読みかけにしていた憲法の判例集が置かれたままだ。
(お兄ちゃん、やっぱりあの人のところから帰してもらえないんじゃ……)
胸を騒がせるのは、五十嵐麻衣という女性が放つ、あの冷徹で底知れない独占欲の気配だ。兄を心配するあまり、私はいても立ってもいられず、合気道部の相模慎太郎先輩に電話をかけていた。
「……事情はわかった。長谷川が心配なのはもっともだ。今から笹塚に行く」
相模先輩の落ち着いた声に少しだけ救われた気がした。合流した私たちは、兄が以前こぼしていた住所を頼りに、麻衣さんのアパートへと向かった。
絶望の迷宮、五十嵐麻衣のアパート
その頃、麻衣さんの部屋の中では、現実離れした光景が繰り広げられていた。
カーテンが閉め切られた薄暗い部屋。兄、謙二朗は、二日間にわたる執拗な責めによって、もはや立つことさえままならない状態に追い込まれていた。
「まだなの、謙二朗くん? あなたのその意固地な『理性』は、いつになったら私に降伏するのかしら」
麻衣さんの冷ややかな声が響く。彼女は疲弊しきった兄の顔面に、容赦なくその雪白の臀部を沈めた。
顔面騎乗。
「んぐっ……! ……んんんーーっ!」
鼻と口を塞がれ、兄は激しく身悶えする。だが、麻衣さんはその動きをあざ笑うように、自らの腰を激しく振り、さらに体重をかけていく。
「さあ、言いなさい。『私は五十嵐麻衣の犬です』と。そうすれば、新鮮な空気を吸わせてあげるわ」
一瞬だけ腰を浮かせ、空気を吸わせたかと思えば、今度は強引に自らの秘部へと兄の顔を押し付ける。
強制クンニリングス。
「じゅる……ん、んぅ……。……嫌、だ……。僕は……っ」
「まだ喋れるのね。生意気な舌だわ。なら、もっと辱めてあげる」
麻衣さんは兄の顔の上で、わざとらしく腹部に力を込めた。
「……ぷぅっ、……っ、……ぷすぅ……」
放屁プレイ。
「あ……がはっ! ……っ、……うぅ……」
「私のガスまで愛せてこそ、真の隷属でしょう? 謙二朗くん」
彼女の攻めは止まらない。次は床に倒れた兄の胴体に、しなやかで強靭な両脚を絡ませた。
胴締め。
「ふんっ……! ……はぁっ……! 砕けなさい、あなたの……プライドと一緒に……!」
「う、ぐあぁぁ……っ!!」
肋骨が悲鳴を上げ、肺から空気が搾り出される。さらには、意識が遠のきかけた兄の首を、逃げ場のないヘッドシザーズで締め上げる。
「堕ちなさい……私の……底なしの愛の中に……!」
兄は朦朧とした意識の中で、真っ赤な警告音が鳴り響く脳内にしがみついていた。
(僕は……君の……奴隷じゃない……。愛、して……いるから……こそ……誓わない……)
死の淵を彷徨うような責苦の中でも、兄の魂の最深部にある「対等な愛」への執着だけは、どうしても麻衣さんに明け渡すことができなかった。
突入と救出
アパートの前に到着した私と相模先輩は、幾度もインターホンを押したが、返答はなかった。
「……中で何かが起きている」
先輩の表情が険しくなる。私たちは建物の裏手に回り、一階にある麻衣さんの部屋のベランダを確認した。微かに、兄の苦悶する呻き声が聞こえてくる。
「長谷川、下がってろ」
相模先輩は躊躇なく、備え付けの消火器を手に取ると、窓ガラスを叩き割った。
ガシャアアン! という激しい音と共に、私たちは部屋へと乱入した。
目の前に広がっていたのは、全裸に近い麻衣さんが、ぐったりとした兄の首を太ももで締め上げているという、異様な光景だった。

「お兄ちゃん!」
「何……? 誰よ、あなたたち……不法侵入よ!」
麻衣さんは狂気を孕んだ瞳で私たちを睨みつけた。彼女は兄を解放しようとせず、むしろさらに脚に力を込める。
「すぐに警察を呼んでやるわ。住居侵入罪であなたたちを一生刑務所に入れてあげる!」
だが、相模先輩は一歩も引かなかった。彼は合気道の構えを微かに見せながら、氷のように冷たい声で言い放った。
「勝手にすればいい。だが、警察が来た時に困るのはどちらかな? 二日間にわたる監禁と暴行、そして薬物すら疑われるようなこの惨状。あなたの『キャリア』は、住居侵入どころの騒ぎじゃ済まなくなるぞ」
麻衣さんの顔から、すっと血の気が引いた。彼女の脚から力が抜け、兄の体が床に力なく転がった。
私は駆け寄り、意識の混濁している兄を抱き上げた。
「お兄ちゃん! しっかりして!」
「あ……晶……? 相模、先輩……。僕は……僕は、負けて……ないよ……」
兄はそう呟くと、糸が切れたように私の腕の中で眠りに落ちた。麻衣さんは部屋の隅で、ただ呆然と、割れた窓から差し込む夕日を見つめていた。
帰路の違和感
なんとか兄をアパートから連れ出し、私たちは近くのドラッグストアで高単位の栄養剤や経口補水液を買い込んだ。
タクシーで笹塚のマンションへ戻る車中、兄はずっと私の肩に頭を預けて眠っていた。その首筋には、くっきりと麻衣さんの太ももが食い込んだ痕が紫色の痣となって残っている。
自宅に兄を寝かせ、ようやく一息ついた時、相模先輩が玄関先でぽつりと呟いた。
「……しかし、あの五十嵐っていう女性。あんなに細い体で、よくあそこまでの重圧を……」
私は先輩の言葉に頷こうとした。だが、続く彼の言葉に、心臓が冷たく凍りついた。
「……正直、あんな風に完璧に制圧されて、自分を失うまで責められるのって……男としては、少し、されてみたいかもな」
先輩は冗談めかして笑ったが、その瞳には、先ほどの麻衣さんの行為に対する、ある種の羨望と好奇心が混じっているように見えた。
「……先輩、何言ってるんですか。お兄ちゃん、死にそうだったんですよ?」
「ああ、悪い。不謹慎だったな。じゃあ、また明日、道場で」
先輩が去った後、私は静まり返ったリビングで、眠り続ける兄を見つめた。
(先輩も……あの麻衣さんのような『支配』を求めているの……?)
兄を心配する気持ちと、自分の中に芽生え始めた相模先輩への「試してみたい」という昏い情熱が、ドロドロと混ざり合っていく。
深夜:笹塚のマンション。夢の支配。
自分の部屋で眠りにつくと、すぐに琥珀色の霧が現れた。
そこに立っているのは、インクブスのタロだ。
今夜の私は、昼間に見た光景、そして相模先輩の言葉によって、かつてないほど昂ぶっていた。
「タロ……。今日はね、いいことを教えてもらったの」
私は逃げようとするタロの髪を掴み、床へ引き倒すと、躊躇なくその顔面に腰を下ろした。
顔面騎乗窒息。
「んぐっ!? ……んん、んんーーーっ!!」
私の小麦色の太ももが、タロの呼吸を完全に奪い去る。
昼間、麻衣さんが兄にしていたように。そして、相模先輩が「されてみたい」と望んだように。
「ほら、舐めなさい。一滴残さず、私の全てを!」
私はタロを床に押し付けたまま、無理やり自分の秘部を彼の口に押し当てる。
「んむっ……! じゅる、……んんっ!」
さらに私は、タロの腹部を両脚で締め上げた。
胴締め。
「ふんっ……! 苦しい? でも、先輩はこれがいいんですって」
「あ……が、はぁっ……!」
仕上げは、彼の背後から。私はタロの逞しい首に、自分の小麦色の太ももを回し、全体重をかけて締め付けた。
ヘッドシザーズ(頸動脈絞め)。
「さあ、堕ちなさい。……お兄ちゃんみたいに耐えようなんて思わないで。あなたはただ、私の前で崩れ去ればいいのよ」
「……あ……あ……っ……」
タロの意識が刈り取られていく。私はその小麦色の肢体に力を込め、夢の中で完璧な支配者として、至高の悦楽を貪り続けた。
