わくわくする瞬間ーまだ行ったことのない九州へ
日本列島のほとんどを旅してきた。
気づけば、行っていない場所は、九州だけになっていた。
以前は、そんなことを意識したこともなかった。
行った場所、見た景色、通り過ぎた街。
旅はただ、時間の流れの中に自然にあった。
けれど、人生を「旅」だと捉えるようになってから、
ふと、考えるようになった。
私は、あとどれくらい旅を続けられるのだろう、と。
そう思った瞬間から、
まだ行ったことのない九州が、
不思議と頭から離れなくなった。
そして最近は、
それが「いつか行きたい場所」ではなく、
「もうすぐ訪れる街」として、
私の中に居場所を持ちはじめている。
地図を眺める時間が、少し変わった。
路線図の線が、ただの線ではなく、
これから辿る道のように見えてくる。
時代を編む、万華鏡のような福岡。
静寂に宿る、銀の輝き 佐賀。
祈りを灯す、坂道の長崎。
不屈の炎、立ち上がる火の国 熊本。
湯煙に溶ける、豊穣の癒し 大分。
天孫降臨、光あふれる神話の宮崎。
灰を纏い、明日を睨む黒潮の鹿児島。
どの街も、まだ知らないはずなのに、
そこに暮らす人々の笑顔が、自然と浮かんでくる。
聞き覚えのない沿線。
知らない駅の名。
初めて耳にする言葉たち。
それらは、もう遠い未来の話ではない。
近いうちに、現実になる予感が、
胸の奥で静かに息をしている。
切符は、まだ手元にない。
具体的な日付も、決まっていない。
それでも私は知っている。
この旅は、もう始まっている。
わくわくする瞬間は、
何かが起きたときだけに訪れるのではない。
「もうすぐ行く」と心が決めた、その時から、
静かに、確かに生まれている。
まだ行ったことのない九州は、
私にとって、
これから出会う未来そのもの。
そう、わくわくする瞬間なのだ。
