ドラマ10『しあわせは食べて寝て待て』最終回|自分で自分を「しあわせ」にしながら生きていく
めちゃくちゃ楽しい!先が気になる!
ということではないのに、色々と見たいものがたまった録画の中でも優先的に見てしまう魅力があったドラマ『しあわせは食べて寝て待て』。
穏やかで、ゆったりしていて、
心が少し軽くなるような、
この先、何か辛いことが起こっても頑張りたいと思えるような、
しあわせはすぐそこにあるということを気づかせてくれるドラマでした。
殺人事件もないし、
不倫する女もいないし、
男女のいざこざで揉めることもないし、
巨大な組織と戦うわけでも、
横領事件があるわけでも、
天才医師が失敗しないわけでも、
ゾンビと戦うわけでもない。
ラブストーリーではないし、
お仕事ものでもないし、
青春ものでもないし、
ホラーでもないし、
弁護士ものでも医療ものでもない。
けれど、じゃあただ穏やかでゆったりしたドラマだったかと言えばそんなこともなく、
主人公のさとこは「一生付き合わなくてはならない」病気になって、会社を辞め、夢も諦め、家賃を下げるために引越しまでしなければいけない状況から物語は始まりました。
その状況だけ書くとなんだか暗い話になりそうな気がしますが、このドラマは何故かほっとするような空気感がいつもありました。
38歳で、独身で、やり甲斐のあった仕事を辞めて、週に4のパートに切り替える。歳が近いので、その辛さや悔しさ、未来への不安がよくわかります。いくら能力があっても周りと同じようには働けないし、職場の人間が自分を疎んでいるならなおさら働き続けることは難しい。
もう、そんなところで戦う気力は残っていなかったんだと思います。
さとこの母親が、さとこ自身が色々なことを諦めていることに対して怒りをぶつけるシーンもありましたが、さとこはきっと諦めない方法を探して、頑張ってもダメで、そこで今の自身が置かれている状況を冷静に見つめ、「目の前の生活を大切にする」というところまで来たんですよね。
無理なく働ける環境で、家賃の安い団地で、身体に優しい薬膳ごはんで日々を過ごす。
決して諦めているわけではなくて、さとこはその時その時で自分にできることを探して、考えて実行しようとします。
それでももちろんうまくいことばかりではありません。
よくあるドラマの展開だと、例えば7話、8話あたりで主人公が窮地に立たされて辛い状況になり、そこからラストに向けて怒涛の快進撃が起きたりするものも多いですが、このドラマには大きな展開はありません。
嬉しいことや希望が描かれて、ここからうまくいくのかな?と思ったら、やっぱりうまく行かなかったり、どうしてもできなかったり、体調が悪くなってしまったりする状況が描かれる。
うまくいったり、うまくいかなったり、元気だったり、元気じゃなかったり……1話の中で日々の小さな気持ちの上がり下がりがあって、それがなんというか私たちの毎日のようで、そこがこのドラマの魅力だったように思います。
仕事は大変だし、
生活にお金はかかるし、
怒らないでいたいと思っても子供に怒ってしまったり、
料理も面倒だったり、
もっと色々したいのにできなかったり、
それら全てに疲れて果ててしまうこともある。
それでも、
大きな仕事が終わった時は達成感があるし、
給料は子供ができる前に比べるとだいぶ減ってしまったけれど給料日はテンションが上がるし、
子供の寝顔はめちゃくちゃかわいいし、
作った食事を「おいしい」と言ってもらえたら嬉しい。
大したドラマは起こらなくても、ずっとハッピーな状態ではなくても、私たちはそうやって日々を送っているし、ちゃんと「しあわせ」を感じることができる。
さとこも何度も、うまくいかなかったり体調が悪かったりで、ちょっと不幸の空気が漂う状態になったことはありました。
それでも、親しい友人と食事をしたり、自分で薬膳を作ったり、そういう小さいことで「しあわせ」を感じ、「自分を不幸のままで終わらせない」強さがありました。
ドラマは毎話、いつもほんの少し幸せや希望を感じる穏やかな空気で終わっていましたが、それはさとこがちゃんと自分で自分を「しあわせ」にしていたからです。
ないものねだりをせず、
自分ができないことばかりに目を向けて悲観するのではなく、
自分にできること、今の生活の中でできることに目を向ける。
最終回のラストについても、すべてがうまくいったわけでも、すっきり解決したわけでもありません。
カフェは実現できるのはわかりませんし、実現できる方向に進んだとして、そのカフェを誰が管理するのか、運営をどうするのか、ちゃんと給料を払えるくらいの利益を出せるのか、問題は山積みです。
それでも、いろんな問題を少しずつ解決して、うまくいってほしいと祈りたくなる。
働きたい高齢者が働けて、自分の作品を発表したい若者が個展を開けて、ハンドメイドが趣味な人がグッズを販売できて、身体に優しいお茶が飲めて、団地に住む隠れた料理上手な人の食事が楽しめるカフェをさとこに成功させてほしい。
司も戻ってきてくれて、団地にはいろんな人がいて、会社も協力的で、色々難しいかもしれないけど、もしかしたらうまくいくかもしれないと思わせてくれる、じんわりと温かいラストでした。
うまくいくことを祈る一方で、もし万一うまくいかないとしても、がっかりすることになるとしても、そんな日の夜もさとこは薬膳のおいしいスープを丁寧に作って飲んで、元気を出してくれる気します。そして、団地の人や会社の人に支えられて、またさとこは諦めずに別の何かを考えてくれる気がするのです。

(さとこの後ろに「寝て」があるよ)
全てがうまくいくわけではなくても、
辛い日や落ち込む日があっても、
食事をして、よく寝て、
「やれるだけやった」と言える日々を重ねていけば、きっと「しあわせ」になれる。
そうやって自分で自分を「しあわせ」にしながら日々を過ごしていけたらいい。
そんなことをそっと思わせてくれたドラマ『しあわせは食べて寝て待て』でした。
おしまい。
さとこがよくソファーでうたた寝していたので「またそんなところで寝て……!風邪ひいちゃうよ?!」とハラハラしました。
めちゃくちゃいいソファーとめちゃくちゃ気持ちいい肌かけを、『しあわせは食べて寝て待て』視聴者有志でさとこに贈りたい。
