53歳。17年目の「畳表替え」
今朝の盛岡は、曇り気味ですが気持ちのいい天気。
ただ、冷え込みは少しだけ厳しくて、朝7時の時点でマイナス3度。

キリッとした空気の中、空を見上げたらマガンの群れが列をなして飛んでいくのが見えました。ああ、季節が動いているんだな、と感じる朝ですね。
さて、昨日で内丸の岩手医大に通うのも最後になりました。
振り返れば17年。
この「17年」という月日の重さを、今朝の寒さと空の青さの中でしみじみと噛み締めています。
17年という月日。医大の最後の日と、畳の寿命の話。
53歳。

僕がこの病院に、年4回の定期検診で通い始めてから17年が経ちました。
一区切り、という言葉では言い表せないくらいの時間です。
病院が矢巾に移転することもあり、僕もこれからは地元の「かかりつけ医」にお世話になることになりました。
診察室を出るとき、なんというか、自分の人生の大きな一章が、パタンと閉じたような音がした気がします。
この17年という時間は、僕の仕事である「畳」の世界で見ても、実は一つの大きな目安になる歳月でした。
16年、17年使った畳はどうなるのか
仕事柄、いろんなお宅の畳を見させていただきます。
先日伺ったお宅では、16年ほど使われた畳がありました。16年、17年経った畳がどんな状態になるか、想像がつきますか?

一般的には「ボロボロなんじゃないの?」と思われるかもしれません。
でも、そのお宅の畳は、比較的きれいに使われていました。

もちろん、新品のときのような青さや香りはもうありません。色はすっかり黄金色に変わっています。
でも、表面の「い草」の艶が、どこか落ち着いた深みを持っている。
これは、住んでいる方が大切に、丁寧に暮らしてこられた証拠なんです。
畳表の産地と、使い方の話
よく「賃貸用の中国産の畳は持ちが悪い(寿命が短い)」と言われます。
確かに、素材の強さだけで言えば、国産の良質なものには敵いません。
どうしても擦り切れやすかったり、表面が傷みやすかったりする面はあります。
でも、結局のところは「使い方次第」なんです。
こまめに目にそってほうきをかけ、湿気に気をつけて、直射日光を適度に遮る。
そうやって気にかけてもらっている畳は、たとえ安価な中国産であっても、10年、15年と頑張ってくれます。
逆に、どんなにいい素材を使っていても、扱いが荒ければ、例えば掃除機で雑にガガガっとみたいな、数年でダメになってしまうこともある。
勉強机を置いて椅子を移動させるタイプの使い方は、僕のみてきた中では最悪の使い方です。勉強熱心なお子様では1年でボロボロ。
そして、それはなんだか、僕の体とも似ているな、なんて思ったりします。
「体質的にガンになりやすい」と言われてきたけれど、こうして17年、先生に診てもらいながら、自分なりに体に気をつけて生きてきた。
だからこそ、今こうして元気にマガンの群れを見上げていられる、うん。
畳も人間も、手をかけてあげることが、何よりの薬なのかもしれないな。
最近の畳の「お付き合い」の形
昔から、畳は「5年で裏返し(ゴザをひっくり返して再利用)」、さらに「5年経ったら表替え(新しいゴザに張り替え)」が目安だと言われてきました。
でも最近は、少し様子が変わってきています。
「擦り切れるまで、とことん使い切る」
そういう方が増えているんです。
裏返しをせずに、10年、15年と使い込む。
そして、いよいよ表面が毛羽立って、服に草がつくようになったら、そこで初めてゴザを新しくする「表替え」をする。
それはそれで、今の時代に合った一つの賢い付き合い方だな、と職人の目から見ても思います。
僕の病院通いも、17年という節目で「表替え」をするようなものかもしれません。
通い慣れた場所を離れ、新しい先生のところで、また一から。
2009年のあの日から、今日まで
一回目の手術をした日のことを、今でも思い出します。
あれは2009年、4月2日でした。
菊池雄星投手が、岩手のみんなの夢を背負って、春の甲子園の決勝を投げていた日。
あの熱い1日から、もう17年も経ったんですね。
あの日、病室で負けたと聞いて眠りについた僕は、今の自分を想像できていただろうか。
二度のガンを経験したけれど、こうして53歳になって、今朝のマイナス3度の寒さを「心地いい」と思えている。
それは、本当に幸運なことだと思わずにはいられません。
内丸の医大の先生、そしてあの建物。
17年間、僕を、僕の人生を支えてくれてありがとうございました。
これからは地元の先生にバトンを渡して、また一歩ずつ。
畳が黄金色に、いい味に変わっていくように。
僕も、これからの時間を丁寧に、地道に過ごしていこうと思います。
今朝の空を飛んでいたマガンのように。
そうそう、畳の寿命が長いといえば最近はやりの化学畳表。
そちらの記事も書いていますのでよろしければ、ご覧くださいませ。
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それでは素敵な一日。
前田まさとし

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