プロ鍼灸師Toshi・山本の治療家人生物語~独立編⑦~
右膝半月板損傷の手術後の膝関節痛を救った例
実業団サッカー選手のケガ
ある日、神奈川県川崎市在住(27歳男性)実業団サッカー選手のSさんが紹介されて来院した。
Sさんは実業団のサッカー選手で、サッカーの試合中に右膝半月板損傷した。
「東京G医大スポーツクリニックにて、内視鏡を使って半月板のヒビを削る手術を行いました。
術後、右膝に水が溜まるようになり、サッカーボールも蹴れないほどの痛みが出てきました。
今月中旬には再度、本格的な手術を行う予定ですが、試合などのスケジュールが立て込んでいて、いま戦列を離れるわけにはいかないし、チームにも迷惑をかけることになります。
手術が成功してもリハビリやその他で6ヶ月~1年間は、確実に試合に出場できなくなります。
また、たとえ手術が成功したとしても元のようにボールが蹴れる膝に戻れるとは限りません。
あと4~5年はサッカー人生を諦めるわけにはいかないのです。
悩んだ末、友人、知人に相談したところ先生を紹介されました。
先生のところで治らなければ、諦めて膝の手術を行います」
と悩み抜いた顔で言われた。
術後の膝の状態は悪く、さらに腰も痛めていた
Sさんの右膝を視診すると、明らかに水が溜まっている様子が分かる。
その場で膝の屈伸をさせると、動作が鈍く、痛みに顔をしかめている。
膝を損傷している人は、膝をかばって歩くために腰に負担がかかり、腰と膝の両方を痛めていることが多い。
まずは腰部の治療から
このSさんも、腰の前屈動作を行うと痛みがあると言うので、膝関節を治療する前に、腰部の治療から始めた。
左右の三焦兪、腎兪穴、気海兪穴、大腸兪穴、志室穴、室穴、腰眼穴の六穴を選び20分間置鍼を行った。
スポーツ選手なので、治療の効果を分からせるために、腰の治療が終了した時点でベッドから立たせ、腰の前屈、捻転を充分に行わせて様子を聞いたところ、
「立っているだけでしばらくすると腰にくるドーンとした重い痛みが気にならない程度になりました」と言う。
次に本丸の膝治療。効果や如何に?
腰の動きが軽快になったことを確認させたところで、膝関節に対しての本格的な治療を行った。
膝の前面の穴として、血海穴、梁丘穴、犢鼻穴、曲泉穴、陰谷穴、陰陵泉穴、陽陵泉穴、足の三里穴の八穴を選んで、10分間置鍼を行った。
次に、膝の後面、膝裏の穴から委中穴、委陽穴、委上穴、合陽穴の四穴を選び、10分間の置鍼を行った。
腰痛治療と同様に治療終了後、すぐに膝の屈仲と回転運動を行わせたところ、
「来た時よりも膝の曲げ伸ばしが随分と楽になり、ひっかかる感覚がなくなりました。痛みも多少残っていますが、それほど気にならなくなりました」
と目を丸くしていた。
初めての鍼治療の効果に驚きと納得のSさん
Sさんは、膝の感覚を確かめるように、何度も何度も膝の屈伸を繰り返していたが、納得するように一人頷いていた。
本人は、手術のためにサッカー人生を半ば諦めかけていたところなので、1回目の治療の結果に対して、たいそう感激しながら帰って行った。
一週間後の様子
一週間後に治療後の膝の様子を聞くと、
「一回目に治療して頂く前には、日常動作の動きの中でも腰に痛みが走りましたが、現在は腰の痛みは収まっています。
ただ、準備運動の中で体を反らせる運動をすると、少し違和感を覚える程度です。
一回目の治療をしてから六日目に軽めの練習を再開しましたが、後半に少し膝の痛みを感じた程度です。
それでも治療する前の膝の痛みと比べれば、断然楽です。
それに、膝に溜まっていた水も、段々と無くなってきました。」
という喜びの答えが返ってきた。
治療家も生きている、患者さんの細胞や筋肉も生きている。
何でもかんでも一発で治せばよいというものではない。
細胞や筋肉に無理をさせないように、それでも運動が再開できるように、治療を行うことが必要である。
治療家が意識をコントロールしていれば、患者さんの細胞や筋肉も素直に応えてくれる。
治療家も生きている、患者さんの細胞や筋肉も生きている、その延長上に、回復が待っているのだ。
二回目の治療、その後
二回目の治療も同じ穴を選び、膝の治療と併せて身体の要である腰の治療を行った。
二回目の治療で、腰を反っての運動に対して違和感を覚えることはなくなり、膝の屈伸や回転も益々スムーズに動くようになり、膝に溜まっていた水も、一週間前の治療時よりも半分程度に減っていた。
三回目の治療、その後
三週間後の三回目の治療が終了してから、五日後に、本人から治療後の経緯の電話が入った。
「先ず、腰のほうの報告ですが、腰は準備体操を入念に行っても、全く痛みがなくなりました。
懸念していた膝のほうですが、治療を始めた時は、見た目でも膝に水が溜まっているのが分かりましたが、現在は、膝の水も抜けてきて、見た目には分からなくなりました。
練習のときにボールを蹴っても、膝に対する不安感もなくなりました。
自分の人生に楽しみがでてきました」
と明るい声が弾む。
「サッカー仲間からは、そんなに動いて大丈夫かと心配されるほど、調子はいいです。
自分では少しセーブしながら動いているつもりですが、仲間から見ると膝と腰を痛める前のプレーと変わらないようです」
と嬉しそうな声が続いた。
三回目の治療では、本人の電話での報告通り、右膝に溜まった水は肉眼では分からないほど回復していた。
さらに一か月後のご本人からの感想
その後1カ月ほど経ったころ、本人からFAXが入っていたので、ここに原文を紹介する。
「四月下旬に、東京G医大スポーツクリニックで診察をうけましたので、ご報告します。
診察結果は、”手術は見送りにして様子を見る。サッカーは通常通り行ってよい”とのことでした。
医師には”仕事が忙しかったため手術ができる状況ではなく安静にしていたところ、膝の痛みが無くなったので再診して頂きたい”と伝えました。
現在の状況ですが、速いボールを繰り返し蹴る練習をした日の1~2日は、右膝に少し痛みがありますが、水が溜まっている様子はありません。
トレーニングは、火・木=練習、月・金=ウエイトトレーニング、水・土=オフ、日=試合、で行なっています。
フットサル(ミニサッカー)の試合がある時は、そちらの試合に出場しています。
電話でご報告しようと思いましたが、診察中ですとご迷惑をかけると思いましたのでFAXにしました。
報告が遅くなり申し訳ありませんでした。
5月に一度、診察を受けたいと思いますのでよろしくお願いします。」
と結んであった。
手術を受けた病院では・・・
膝の手術を行ったことにより、サッカー人生の終焉を覚悟していた患者さんが、わずか3回の治療で膝の水も溜まらなくなり、膝の動きも元の動きとほとんど変わらなくなったと言う。
その後のサッカーの練習や試合においても、フル活動しても膝に水が溜まる気配はなかったと言う。
東京G医大はチームの指定病院なので担当ドクターには、鍼治療に通ったことは伏せて診察に臨んだそうであるが、医師も不思議な回復力に首をかしげていたそうである。
鍼灸治療を受けたことを医者に言うか、言わないか?
私が治療を始めた頃は、鍼灸治療で治したというと、整形外科医は嫌な顔をしたものである。
最近は少なくなってきてはいるが、それでもこの患者さんのように、かかりつけ医には遠慮して方便を使ってしまうようだ。
堂々とありのままを担当医師に言えばいいじゃないかと言う人もいるが、それぞれの人の抱えている人間関係もあるので、私はどちらでも良いと思っている。
要は、患者さんが痛みや苦しみから一日も早く解放されればよいのだから、私はその手伝いをしているに過ぎないのである。
あとがき
今回も、お読みいただきありがとうございます。
プロ鍼灸師Toshi・山本の治療家人生物語はまだまだ続きます。
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