30年の経験が教えてくれた、自分らしく働くということ
はじめに
航空・ホテル・金融。まったく異なる三つの業界を渡り歩いて、気づけば30年が経っていました。
振り返ると、どの職場でも共通して問い続けていたことがあります。
「自分らしく働くとは、どういうことだろう」
その答えを探す旅が、私のキャリアだったのかもしれません。
空港のランプを駆け抜けた日々
最初に就いたのは、ルフトハンザ航空での仕事でした。
機内食や備品の搭載管理からはじまり、チェックインカウンター、ゲート業務へ。空港内の「ランプ」と呼ばれる、巨大な飛行機が行き来するエリアを業務車両で走り回った日々は、今でも鮮明に覚えています。
ルフトハンザは定時性と安全性でブランドを築いている航空会社でした。そこで叩き込まれたのは、どんな状況でも優先順位をつけて正確に業務を進めるということです。
混乱した状況の中でも、何を先にやるべきかを瞬時に判断する。その習慣が、後のホテルでのクレーム対応でも、金融機関でのWXPの仕事でも、私の軸になっていきました。
ホテルの夜が鍛えてくれたもの
航空会社でのリストラという転機を経て、次に向かったのはホテルの世界でした。
東京ドームの横に開業した大型ホテルで、デューティマネージャーとして8年間、1,000件を超えるクレームやトラブルと向き合いました。その後、お台場のホテルへ転職し、ブランドチェンジという荒波も経験しました。
夜勤が中心のデューティマネージャーは、孤独な仕事です。総支配人が不在の夜間に、すべての判断を自分でしなければならない。
1,000件を超えるクレームと向き合い続けた8年間で、私はある感覚を体で覚えていきました。
マニュアルはすべてのケースをカバーできない。最後に判断するのは、担当者個人です。そしてその判断の質は、その人が自分の軸をどれだけ持っているかで決まる。
自分を見失った人間は、相手の感情に飲み込まれます。自分の軸を持っている人間だけが、冷静に、誠実に向き合えます。
ただ当時の私には、それを言葉にする術がありませんでした。言語化できたのは、後にアメックスでWXPと出会ってからのことです。
アメックスで出会った、働くことの別の景色
50歳を超えて、全く未知の世界に飛び込みました。外資系金融機関でのファシリティマネージメントです。
サービス業とは雲泥の差の事務の細やかさ、コンプライアンスの徹底。ホテル時代には一切なかった激しい動悸や目まいを経験した、初めての職場でもありました。
そんな苦労の中で出会ったのが、アメリカン・エキスプレスのオフィス移転プロジェクトと、日本初となる「Workplace Experience(WXP)プログラム」の導入でした。
新しいオフィスに一歩足を踏み入れた時、言葉を失いました。ゆったりとしたデスク、ホテルのロビーのような休憩スペース、東京タワーを一望できるエントランス。それは「働く場所」の概念を根底から覆すものでした。
私の役割は、このWXPマネージャーとして従業員の皆さんが喜びを感じて働ける「体験」を届けること。お弁当やスナックのデリバリーから、お餅つき、母の日のカーネーション手配まで。あらゆる方法で「働く場の体験価値」を高めていきました。
ある日、従業員の方からこんな言葉を聞きました。
「お母さんに、いい会社に勤めているねと言われました」
この言葉が、すべてを物語っていると思います。
会社から大切にされている人間は、お客様をも大切にできる。ホテル時代に体で覚えてきた感覚が、ここで初めて言葉になった瞬間でした。
自分らしく働けている人が、本当の意味で相手に向き合える。
それは個人の話であり、同時に組織の話でもあります。
30年が教えてくれたこと
航空・ホテル・金融。三つの業界を経て、私がたどり着いた答えはシンプルです。
自分の軸を持っている人間だけが、相手に誠実に向き合える。自分を大切にできている人間だけが、本当の意味で相手を大切にできる。
このnoteでは、そんな「自分らしく働くこと」について、経験から言葉にしていきます。同じように問い続けている方に、少しでも届けばうれしいです。
働く人が誇りを持ち、顧客から信頼される組織は、つくれます。
アメックスで見てきたことは、特別な企業だけの話ではありません。業種も規模も文化も違う。でも、その会社らしいWXPの形は必ずある。
そのお手伝いをしたいと思っています。
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