トロント最古級の邸宅博物館|Campbell House Museum
トロントのダウンタウンを歩いていると、高層ビルのあいだに突然、赤レンガの美しい邸宅が現れます。
場所は Queen Street West と University Avenue の角。すぐ近くには Osgoode Hall や裁判所があり、普段なら何気なく通り過ぎてしまいそうなエリアです。でも、この建物を少し立ち止まって見ると、トロントがまだ Toronto ではなく、Town of York と呼ばれていた時代の空気が残っていることに気づきます。
それが Campbell House Museum です。
私も友人とダウンタウンを散歩中にCampbell Houseのお庭でアクセサリーなど販売しているブースを見かけて立ち寄ったのがきっかけで知りました。

1822年に建てられたこの家は、William Campbell と妻 Hannah Campbell のための邸宅でした。Campbell はのちに Upper Canada の首席判事となる人物で、この家は当時の一般的な住宅というより、社会的地位のある家族が来客を迎え、会食をし、都市の中心で暮らすための立派な家でした。
この記事では、Campbell House Museum の歴史、建物の見どころ、そしてトロント観光で立ち寄る意味を、日本人旅行者や在住者向けにわかりやすくまとめます。
Campbell House Museum ってどんな場所?

トロントがまだTown of Yorkだった時代の家
今のトロントは、カナダ最大級の都市として知られています。
地下鉄が走り、高層ビルが並び、移民の文化が混ざり合う大都会。でも、
19世紀初めのこの場所は、まだ Town of York と呼ばれる小さな町でした。

Campbell House は、その時代から残る貴重な建物です。1822年に建てられたとされ、現在は博物館として公開されています。
日本の感覚でいうと、江戸時代後期に建てられた邸宅が、東京の中心部にそのまま残っているような不思議さがあります。しかも場所は、Queen駅やOsgoode駅から歩けるようなダウンタウンの真ん中。周りのビル群とのコントラストがあるからこそ、この家の存在感がより強く感じられます。
誰の家だったのか


この家は、William Campbell と妻の Hannah Campbell のために建てられました。William Campbell はスコットランド出身の法律家で、1811年にヨークへ来て裁判官となり、1825年に Upper Canada の第6代首席判事に就任した人物です。1829年にはナイトの称号も受けています。
ここで覚えておきたいのは、家が建てられた1822年の時点では、まだ首席判事になる少し前だったということです。つまり Campbell House は、すでに地位ある法律家だったCampbellが、これからさらに社会的な立場を高めていく時期の都市邸宅でもあります。

ただ住むだけの家ではなく、来客を迎え、食事をふるまい、会話をし、当時の上流層の暮らしや社交を支える場所だったと考えると、部屋の造りや玄関の立派さも少し違って見えてきます。
建物のどこを見ると面白い?
赤レンガと白い柱がつくる整った美しさ
Campbell House の外観でまず目に入るのは、赤レンガの壁と白い柱です。写真でもわかるように、正面は左右対称に整えられています。窓がバランスよく並び、黒い雨戸がリズムを作り、中央には半円形の玄関ポーチがあります。玄関上部の扇形の窓も、ただの飾りではなく、建物全体に上品な印象を与えています。
建築様式としては、1820年代らしいジョージアン/新古典主義建築とされています。古代ギリシャやローマ建築を意識した、整った比率と品のあるデザイン。派手に見せるというより、家主の教養や社会的地位を静かに伝える建物です。
大きな観光施設のような迫力とは違いますが、近くで見ると、白い柱、レンガ、石の基礎、窓枠の細かさなど、写真に撮りたくなるポイントが多いです。
玄関ポーチに立つと時代が変わる

Campbell House の正面に立つと、周りには車が走り、すぐ近くに路面電車や地下鉄の駅があります。それなのに、白い階段を上がって玄関ポーチを見ると、急に時間の流れがゆっくりになる感じがあります。
ここを19世紀の来客が通ったのかもしれない。そんな想像が自然に出てくる場所です。
トロント観光では、CNタワーやナイアガラのような大きな名所に目が向きがちですが、こういう小さな歴史スポットを挟むと、街の見え方が少し変わります。
この家は、ただ古い建物が残っているだけではありません。トロントがどのように町から都市へ変わっていったのか、その途中を感じられる場所です。
実はこの場所に建てられた家ではありません

Adelaide Street East付近から移動してきた家
Campbell House の一番面白いところは、実は現在の場所に建てられた家ではないことです。
もともとは、現在地ではなく Adelaide Street East と Frederick Street 付近に建っていました。
ところが1970年代、都市開発の流れの中で取り壊されそうになります。当時のトロントでは、古い建物を壊して駐車場や新しいビルにすることも珍しくありませんでした。
そこで、弁護士たちを中心とする保存運動によって、この家は救出されました。そして1972年、建物を壊さず、丸ごと持ち上げて現在の Queen Street West と University Avenue の角へ移動させたのです。
距離にすると約1.5kmほど。地図で見ると短く感じるかもしれませんが、レンガ造りの邸宅をそのまま動かすと考えると、かなり大きな出来事です。
トロントの保存運動を象徴する建物

添付写真の看板にも、Campbell House がトロントの歴史的保存運動における重要な初期の救出例として紹介されています。
この一文がとても大事です。
Campbell House は、単に昔の偉い人の家を保存しただけではありません。トロントという街が、古い建物を壊すだけでなく、残して活かす方向へ少しずつ目を向けていく、そのきっかけのひとつになった建物でもあります。
今のトロントには、歴史的建築を残しながら新しいビルと組み合わせる景色がいくつもあります。もちろん保存のあり方にはさまざまな意見がありますが、Campbell House を見ると、街の記憶をどう残すかというテーマを自然に考えたくなります。
なぜ裁判所の近くにあるの?

Osgoode Hallのそばという意味
現在のCampbell Houseは、Osgoode Hallや裁判所のすぐ近くにあります。
これはとても象徴的です。
William Campbell はUpper Canadaの首席判事となった人物なので、法律の歴史と深く関わっています。その家が、現在も法律関係の施設が集まる場所の近くにあることで、建物の意味がより伝わりやすくなっています。
Queen Street West を歩いていて、Campbell House と Osgoode Hall をセットで見ると、トロントの司法と歴史のつながりが少し見えてきます。
博物館であり、今も使われる公共空間

Campbell House は、現在は歴史博物館として公開されているだけでなく、展示、イベント、演劇、地域の集まりなどにも使われる場所です。
添付写真の看板にも、訪れる人に学びや刺激を与える公共空間として紹介されていました。古い家をただ静かに保存するだけではなく、今のトロントの人たちが集まり、話し、作品を見たり、イベントを楽しんだりする場所として使われているのが面白いところです。
歴史ある建物が、過去のものとして閉じているのではなく、今の街の中でまだ役割を持っている。その感じが、Campbell House Museum の魅力だと思います。
観光でどう楽しむ?
Queen Street West散歩に組み込みやすい
Campbell House Museum は、トロント観光の動線に入れやすい場所にあります。Queen Street West 沿いなので、Eaton Centre、City Hall、Osgoode Hall、アートギャラリー周辺と組み合わせやすいです。
所要時間は、外観だけなら短時間でも見られます。中まで見学するなら、展示内容や開館状況によって変わるので、事前に公式情報を確認しておくと安心です。
雨の日や冬の観光にも向いている
トロント観光で困るのが、雨の日や冬の寒い日です。
外を長く歩くのがつらい日でも、ダウンタウン中心部の博物館なら予定に入れやすいことがあります。特に冬は、外観を見るだけでも足元が冷えるので、近くのカフェや他の屋内スポットと組み合わせると無理がありません。トロントに住み始めたばかりの方にも、こういう小さな博物館はおすすめです。大きな観光地ではなくても、街の歴史を知ると、普段歩いている通りに少し意味が出てきます。Queen Street West を歩くときに、ここは昔どんな場所だったのだろう、と考えられるようになるだけで、トロント生活が少し楽しくなります。
まとめ

Campbell House Museum は、トロントがまだTown of Yorkと呼ばれていた時代の空気を感じられる、ダウンタウン中心部の歴史スポットです。
1822年にWilliam Campbellと妻Hannahのために建てられ、のちにUpper Canadaの首席判事となる人物の暮らしや、当時の上流層の都市邸宅の雰囲気を伝えています。
さらに面白いのは、この家がもともとの場所から約1.5km移動してきたこと。1970年代の保存運動によって取り壊しを免れ、現在のQueen Street WestとUniversity Avenueの角で博物館として残されています。
赤レンガ、白い柱、左右対称の窓、玄関上部の扇形の窓。外観を見るだけでも十分に美しいですが、背景を知ると、ただの古い家ではなく、トロントの司法、建築、保存運動が重なる場所として見えてきます。
観光でトロントを訪れる方にも、留学やワーホリ、駐在で住み始めた方にも、街の見方を少し深めてくれる一軒です。
観光はもちろん、駐在、留学、ワーホリなど新しくトロントで生活を始める人はTorontokiki.comにご相談ください。
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