[企画参加作品]自動 #風まかせ文芸部
世界とは理不尽でできている。
それは、転生した先でも変わらないらしい。
目が覚めたら知らない人の家にいた。
中学の制服のままで。
どうやら森で倒れているところを助けてくれたらしいのだが、何せお互いの言語が通じない状態なので、詳しい状況は分からない。
いや、言語能力って、飛ばされる時に自然と付与されるものじゃないのか?
正直、目覚めた途端に見知らぬ顔に囲まれ、知らない言葉を浴びせられるのは恐怖でしかなかった。
喋っている言葉もわからなければ、書いてある文字も意味不明だ。
かろうじて数字が拾えるかなといったところ。
そして、異世界転生といえば期待するのが特殊スキル!
剣と魔法の世界に飛ばされたからには、何か戦いに有利な能力が付与されているはず。
そうでなくても、道具作りやダンジョン攻略に使えるチート技があるはず!
そう期待していたのもこちらに来て1ヶ月くらい。
試行錯誤して俺に付与されたスキルを見つけようと頑張ってみたが、結局何も見つからなかった。
要は、本当にただの中学2年生が、元の世界と同じ知識と体力でいきなりここに飛ばされたということだ。
いやいやいやいや、冗談きついよ。
唯一の救いは、計算ができたこと。
それも特殊なものじゃなくて、小学校の四則演算。あと、1リットルが1キロだとか、その程度。
それだけでも俺の存在価値ができ、なんとか拾ってくれた家にそのまま滞在することができた。
勉強は好きでは無かったが、今は声を大にして言いたい。勉強は命を救う!
村の人に計算の仕方を教えたりしながら、どうにか3ヶ月がすぎた頃、真夜中に突然部屋の中が光り、飛び起きた俺の目の前に妖精とも天使ともつかないヤツが現れた。
「いやー、どーもこんばんは」
「は? 誰?」
「わたくし、この度の自動能力付与の不備につきまして謝罪と、適正な対応を行いに来ましたタランと申します」
そいつは腰を低くして名刺を差し出して来た。
「この度は我が社の自動能力付与設備になんらかの不具合が起きまして、お客様には大変ご迷惑をおかけしました。つきましては、本来こちらにいらした際にお持ちになるはずだったスキルを付与させていただきます」
「え? 俺スキル持ちになれるの?」
「もちろんでございます。本来であればこちらにお越しの際には、言語理解能力、個人に合ったスキル、神の啓示、軍資金などをお付けするはずだったのですが、こちらのシステム不具合でご迷惑をおかけしました。今後このようなことが起こらないよう、システム構築の見直しと、管理の徹底を行うとともに、幾分かはサービスさせていただきます」
「はぁ……」
あっちの事情はよく分からないが、言語理解能力をもらえるだけでもかなり助かる。
「それでは参りますね〜。はい!」
部屋に閃光が走り、視界が元に戻った時にはタランの姿はなかった。
体に変わったところはない。
しかし、タランの言ったことが本当なら、俺はついにスキル持ちになったということだ。
今更ことの重大さに胸が高鳴っている。
明日の朝、目が覚めてからが本番。
やっと俺の異世界転生の物語がはじまる——のか?
お読みいただきありがとうございます。
こちらの企画に参加せていただきました。
主催者様、いつもありがとうございます。
〜追記? 反芻? 蛇足?〜
【あとがき】
今更ですけど、転生ものってすごく流行ってますよね。
正直出始めの頃はあまり馴染みがなかったのですが、いろんなパターンが出るようになって、少しずつ知識を得ています。
最近のゲームには疎いので、出てくるワードが分からなかったりもしますが、そこはこう、どうにか……
個人的にはいきなりチート能力が備わっているとかじゃなくて、現代の知識や元から持っている自分の能力を活かすことで、順繰りに攻略していくものが好きです。
この主人公も、明日から地道にレベルアップしていってくれたらいいなと思います。
まぁ、多分本人は一発逆転のチートスキルを望んでいるんでしょうけど、世の中そんなに甘くないんでね。
最後までお読みいただきありがとうございました。
またお会いできますことを楽しみにしています。
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