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「日本製」の靴下に、中国の糸が入っている。― 産地より、物を見る ―

こんにちは!
靴下工房Toréを運営しているアクルです。

これまで大手アパレルOEMの現場で、中国工場と一緒に数百万足の靴下を作ってきました。
このnoteでは、その経験をもとに、普段あまり意識されない靴下の仕組みをできるだけ分かりやすく書いています。

靴下はとても地味な存在ですが、実は身体・工業・文化が交差する、なかなか奥の深い世界です。

今日は、「日本製」という言葉について深掘りしてみようと思います。


靴下を選ぶとき、「日本製」という表示を手がかりにしている人は多いと思います。

品質への信頼など、理由はさまざまですが、「日本製」の表記が、判断の根拠になっていると思います。

私もこの業界に入る前はそうでした。

ただ、製造の現場に長く関わるようになってから、この言葉の意味が、思っていたものとは少し違うということを知りました。



産地表示の仕組み

まず、「日本製」という表示がどういうルールで決まるか、少し整理します。

繊維製品の原産国表示では、「商品の内容に実質的な変更をもたらす工程」がどこで行われたかが重要になります。

衣料品では一般に縫製国が原産国とされますが、靴下やセーターのような編物では、編立を行った国が原産国と考えられます。

つまり、中国など海外で作られた糸を使っていても、日本の工場で編立を行えば、原産国表示として「日本製」と表示します。

これはルール違反ではありません。
むしろ、現行の表示ルールに沿った表示です。

ただ、多くの消費者が「日本製」という言葉に込めている期待——原料も、糸も、編みも、すべてが日本——とは、必ずしも一致しません。

基本的にルールで決まっています

靴下の原料は、ほぼ輸入に頼っている


靴下に使われる主な糸の原料を考えると、この構造はさらにはっきりします。

綿はインドや米国などで生産されます。
ナイロンやポリエステルの原料は石油由来で、精製・加工の多くはアジア圏で行われています。
ウールであれば、オーストラリアやニュージーランドが主な産地です。

日本国内で原料から一貫して生産できる繊維は、ごく限られています。

「日本製」の靴下であっても、その糸が日本の土から生まれているケースは、非常に少ない。

これは靴下に限らず、繊維製品全般に言えることです。

原料は輸入に頼っています

寝具で見た話


靴下の話からは少し外れますが、産地表示について考えるとき、私がずっと頭に残っている光景があります。

とある寝具の製造現場に関わる話です。

業界では、海外で作られた製品に国内でタグ付けや簡単な加工をして、「日本製」と見せようとする場合があります。

ただ、原産地のルールを正確に読むと、ラベルやタグの貼り付けは「実質的な変更」とはみなされません。

つまりそれだけでは「日本製」を名乗る根拠にならない、というのが本来の考え方です。

消費者に誤認させる表示は景品表示法上の不当表示にあたるリスクがあり、業界では以前から問題として語られてきました。

これは靴下の世界に直接当てはまる話ではありませんが、「産地表示が何を保証しているか」を考えるとき、この話は一つの基準点として残っています。


では、何を信じればいいのか

ここで少し立ち止まって考えてみます。

産地表示は「どこで主要な加工が行われたか」を示すものです。

品質そのものを保証するものではありません。
逆もまた然りです。

「海外製だから品質が低い」という話でもありません。

私が長く関わってきた中国の工場の中には、非常に高い技術を持つところがあります。

同じ設計の靴下でも、工場の腕によって仕上がりが変わる。

そういう場面を、何度も見てきました。

産地と品質は、イコールではありません。

考えてみればそう

「本当の日本製」を選びたいときは

ところで、産地にこだわりたい人のために、一つだけ補足します。

繊維製品には、J∞QUALITY(ジャパンクオリティ)という認証制度があります。「織り・編み」「染色整理加工」「縫製」など、主要な生産工程を日本国内で行った製品に与えられる認証です。

通常の「日本製」表示よりも、工程の透明性を確認しやすい目安になります。

ただし、原料そのものまで日本産であることを意味する制度ではありません。

産地にこだわって選ぶときの、一つの手がかりとして頭に入れておくといいかもしれません。


産地より、物を見る

では結局、何を基準にすればいいか。
私が思うのは、「物を見る」ということです。

素材の配合、編みの密度、縫製の仕上げ、履いたときの感触。
そういうものを一つひとつ確かめていく。

最初は違いがよくわからないかもしれない。

でも、いろいろ試して、履き比べて、失敗もしながら経験を積んでいくと、少しずつ自分なりの基準が育っていきます。

「この履き心地がいい」「この素材が自分の足に合う」という感覚は、産地の表示ではなく、自分の体が教えてくれます。

その感覚を、大事にしてほしいと思っています。

そういうふうでいたい

最後に

「日本製」という言葉は、嘘ではありません。
ルールに沿った表示です。

ただ、その言葉が何を保証していて、何を保証していないのか。
少し知っておくと、選び方が変わるかもしれません。

国産が全部いい、海外が全部劣る、という話ではありません。
産地で決めるより、物で決める。

そのために、たくさん履いてみてください。
靴下は毎日履くものです。試せる機会は、毎朝あります。


最後まで読んでいただきありがとうございます。

靴下は毎日履くものなのに、意外と仕組みを知られていない道具でもあります。

靴下工房Toréでは「派手ではないけれど毎日履ける靴下」をテーマに、そんな設計をこれからも続けていきます。

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