見出し画像

AIコーチングの未来予測、根拠なき「予測」に気づけるか

AIの答えは、問いの立て方で変わる 第1回

AIに「これからどうなると思う?」と聞いてみたことがある人は、多いかと思います。整然とした分析が返ってくる。出典も並んでいる。読んでいて、とくに引っかかりはない。そのまま「なるほど」と受け取る。

前回の0回目では、この連載の概要と「いじりみよ」という編集工学の型の紹介をしました。

今回は、まず前提を特に絞らずにAIを使って整理した第1稿を掲載します。よくまとまった答えに見えました。しかしその中に、型を使わなければ見えない欠落がありました。


まず、型に沿って整理してみた

「AIセルフコーチングは、コーチの仕事を奪うのか。」 コーチとして活動する自分にとって、避けて通れない問いです。

この問いを「いじりみよ」の型に沿って整理するよう、AIに依頼しました。また、「不足している箇所があるなら、空欄でよい」と併せて指示しました。AIは文脈に基づいて、よく言えば確率の高い、悪く言えばもっともらしい回答を提出してきます。この「空欄でよい」という一言は、AIにわからないことは「わからない」と回答させるための工夫です。

前提条件は特に指定しませんでした。まずは制限なしに、型に沿って整理してもらうことにしたのです。


第1稿:最初の「いじりみよ」

以下が、AIが出力した第1稿の全文です。

い(位置づけ):そのトピックは何か

ChatGPTやClaudeなどの汎用AIを「セルフコーチング」のパートナーとして活用する人が急速に増えている。The Conference Board(2025年10月)の調査では、AIはコーチングの日常的な機能の最大90%を提供でき、利用者の96%が「自分の目標や文脈に合わせた回答だった」と答え、91%が「また使いたい」と回答した。AIコーチング市場は2023年の約4.8億ドルから2028年には24億ドルに達する見通し(年平均成長率28%)で、従来の人間コーチの領域に大きく踏み込みつつある。

じ(状況づけ):その背景にある動向は何か

コーチング業界全体は2024年時点で約62.5億ドル規模に成長し、リーダーシップ開発・キャリア支援を含めれば1,000億ドル超の巨大市場を形成してきた。しかしその恩恵は主にエグゼクティブ層に偏り、一般の従業員にはコーチがつかないのが実情だった。一方でAIの対話能力が飛躍的に向上し、24時間・低コスト・多言語で利用できるAIコーチングが「すべての働く人にコーチを」という民主化の可能性を開いている。

り(理由づけ):なぜそれが起きているのか

直接的な理由は、生成AIの対話品質が実用水準に達したことにある。構造的な目標設定、オープンクエスチョンによる内省の促し、ロールプレイへの対応、具体的な行動計画の提示といった、コーチングの中核スキルの多くをAIが一定水準でこなせるようになった。加えて、人間のコーチは1時間数万円の費用がかかるが、AIは月額数千円で深夜でも即座に応じる。この「コスト×アクセス」の圧倒的な差が、コーチングの初期段階や日常的な壁打ち・振り返りの領域でAIへの置き換えを加速させている。

み(見方づけ):空欄
(確信を持って書ける独自の見方がまだ十分に練れていないため、あえて空欄にします。)

よ(予測づけ):今後どうなるか

短期的には、定型的・スキルベースのコーチング(目標設定、行動計画、アカウンタビリティ管理など)がAIに大幅に置き換わり、低〜中価格帯コーチの仕事は確実に減少するだろう。日常はAI、感情的危機や重要なキャリア判断時は人間コーチへエスカレーションという「ティアード・ブレンデッド・モデル」が企業の標準的な運用形態になると見られる。人間のコーチには「AIにはできないこと」への専門特化が求められ、業界は二極化していく。


よくまとまっている。しかし「み」が空欄のまま「よ」がある。

「い」「じ」「り」は整然として破綻はないように感じました。出典も明示されています。しかし「み」が空欄のまま、「よ」が書かれていました。

「いじりみよ」の型では、「よ(予測づけ)」は「み(見方づけ)」の趣旨に沿って書くものです。その視座がないまま、予測だけが出力されています。これは「よ」に記載された予測の精度が必ずしも高くないことを意味しています。型を使わなければ、この欠落は簡単にはわからなかったと思います。調べれば誰でも書ける予測が、整った文体で出力されている。

AIにこの理由を質問してみました。「み」は大局的な意味や独自の視座を示す場所であり、根拠に基づいた十分な情報がなければ書けない。一方で「よ」は、「り」で述べた因果関係をそのまま未来方向に伸ばせば生成できてしまう。これが、「み」が空欄のまま「よ」が出力された理由です。

なお、市場の大きさがドルで記載されていることからもわかるのですが、データはいずれもグローバル(主に北米)の数値です。日本市場に限定した話ではありません。私が知りたかったのは、日本の動向。そもそも前提が違っていたのです。


次回予告

次回、第2回では、「これは日本市場の話ですか?」という問い直した結果を掲載します。前提を日本市場に絞り直すと、「り(理由づけ)」の因果構造はどこまで変わるのか。また、「み」と「よ」がどうなるのかを紹介したいと思います。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

いいなと思ったら応援しよう!

なおさん 気に留めて頂きありがとうございます。いただいたチップは情報発信の活動費に使わせていただきます!

この記事は noteマネー にピックアップされました

noteマネーのバナー