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大傑作!映画楽しみ!!『プロジェクト・ヘイル・メアリー』読書感想文

よい作品、質問?イエス。
大傑作、質問?イエス、イエス、イエス!
きみはぼくに話す、質問?オーケイ。
よい考え!きみは話す、ぼくは見守る。

夢(ロマン)と現実が詰まっている、掛け値なしに素晴らしいSF大作だ。現在と過去が交互に語られる推論という燃料(アストロファージ)、「問題 → 仮説 → 検証 → 失敗 → 再仮説」という科学的プロセスの繰り返しのなかで、頭も心も満たしてくれる。エンタメという枠から最大限楽しませてくれるばかりか、ぼくら知的種族にとって大切なことを教えてくれる。
なにより、互いの惑星の危機に協力しあう、最高に愛しいふたりのキャラクター。たったひとりの親友が異星人というバディ物としても大満足。
今までの人生、読書コンプレックスであまり本に触れてこなかったから、読書に目覚めてまだ歴の浅い自分にとって「生涯ベスト級だ!」という表現が適しているかは分からないけど、それでも生涯ベスト級だと叫びたくなった★★★★★。それくらい読後感は圧倒的で、この満たされて思いが巡ってどこまでも広がるようないつまでも引きずる余韻は格別だし、「また読みたい!」とすぐに思えた本は今までにどれくらいあったろう……初めてかも?このふわふわ漂うような浮遊感のある読後感こそ0G(ゼロジー、無重力)だと言いたい。



では、本書の何がそこまですごいのか、ぼくの心を射止めたのか?よい質問。その要素、カタルシス(興奮)の正体を紐解いていきたい。オーケイ、ぼくは科学者でもなんでもない、ゴリゴリの文系だ。

・科学的なワクワク

これは今さら言わずもがな。先にも述べたように「問題 → 仮説 → 検証 → 失敗 → 再仮説」が繰り返されること自体が物語を前に前に転がすというストーリーテリングは、作中展開される理論がチンプンカンプンでも楽しめてしまう。まさしくアンディ・ウィアーの真骨頂と言えるのでは?最後の章の数字表記がヤバい。

・人類を救うという大それた使命に英雄的に立ち向かうわけではないこと

旅立つ時には自分の命を犠牲にできなくて強制連行されたという、皆の想像する「英雄像」とは何光年も離れた(けど読者の大半がきっとそうな)グレースが、最後には自分の命を顧みない他者のための選択をすることで、決断が反復されて変化が描かれる。(一見矛盾したことを言うが)英雄になることを捨てて、唯一無二の親友との友情やその先に待っている種族のために、打算的でない真に自己犠牲的な決断をすることで、真の英雄になる。つまり、何がいいって冒頭から宇宙で頑張るけど、それは選択肢のない状況で、最後は自らそれを選択する。最後には、自らの意思でそれを選び取るということが何よりも大事なのだ!でないと、この物語には目的地までたどり着くために必要なスピンドライブが無いようなものだ。

・宇宙という未開の大海原を舞台に、友情というごくごく私的で身近な、普遍的テーマを作品の根幹に据えていること

「ロッキーは心配事があると、ほんとうに面倒臭い」
「イエス」「よい、よい、よい!」
「ああ、バディ!ぼくだ!」
まさかの歴史専攻なストラットが作中で語るように、人類の歴史とは食糧をめぐる戦争の連続であり、今日まで様々な形でそれは起こっている。今こうしている間にも世界のどこかでは戦争していて、また、最後までグレースがその後地球がどうなったのかを知らないのも、ぼくたち一人ひとりに託されている未来という感じがしてよかった。
そうしたなかで、グレースがロッキーと築く友情というのもには大きな意味がある。「異星人(エイリアン)=敵」という先入観を持つのでなく、そこで互いに同じ目的や同じ時間を共有し、共に過ごせばもっと色々なことがわかるし見えてくる。地球規模に落とし込んでも、それこそがぼくたちがとるべき姿勢ではないのだろうか?
だから、映画化に際して最初の宣伝文句「彼一人ではなかった」や予告からロッキーの存在が隠されていないことも腑に落ちた。彼こそが作品に欠かせない中核なのだから!言ったら『グッド・ウィル・ハンティング』の予告でロビン・ウィリアムズやベン・アフレック出さないようなものだ(どっちがロッキーでどっちがストラットでもいいが)。

・人生の意味

「ぼくは教師なわけです。教壇に立っているべきなんです。ぼくらは強く生き抜いていく世代をしっかり育てなければならない。これからの世界がうまく回っていくようにするのは、子どもたちの世代です。そしてかれらが引き継ぐのは混乱した世界だ。ぼくは子どもたちがきたるべき世界をきちんと受け止められるよう準備を整えてやることができる」
教師という職業に込められた、次の世代に託すこと。片道切符の宇宙ミッションに行きたくないグレースが語るセリフが、それを端的に表していた。そして、それが最後に繰り返されるという作品全体で円環となるブックエンド方式(差異を伴う反復)。

・それらがすべてグレースという主人公のキャラクターから出ていること

「あなたは基本的にいい人」
つまり、底抜けに明るく絶体絶命な状況下でも決して諦めない口がよく回る皮肉屋交じりのユーモアセンスの持ち主(「何があってもへこたれない性格とピンチを笑い飛ばすユーモア精神」こそアンディ・ウィアーらしい主人公像)だけど、それも元をたどれば失敗を恐れたり、人の意見を気にしたり、人と深くかかわれない自分を守るための予防線だったりする。年を取る内に身につけた傷つかないための処世術かもしれない。そして、それがまた中学校の科学教師という職業設定にもマッチしているかも?そんな主人公グレースの共感性の高さが、この物語を一行目から最後の行まで(文字通り徹頭徹尾!)突き動かすアストロファージばりの原動力だ!だから、ぼくらはこの物語に、グレースというキャラクターに自分自身を重ねてしまう。ポップカルチャーへの言及も。

これまで読んできた本のなかでもとりわけ個性(キャラクター)の立った魅力的な主人公だった。「ビートル」の開発者スティーヴ・ハッチとかも、出番こそ少ないのにキャラ立ちしていて、この辺りは本当に映画的(映像的)なアプローチだなと思う。

「ぼくは信じられないほど運がいい。」
あと、作中何度も異口同音に「運がいい」「ついていた」というような祈りや幸運による展開がセリフがある。「運」というのは何でもできる免罪符になってしまうため、本来は極力フィクションから排除されるべき要素だ。神の手であり、言い換えればご都合主義。だけど、本作においてはそれが何度も九死に一生を得る上できちんと機能していたし、考え方に主人公のキャラクターが垣間見えるような瞬間もあったりして、この壮大な旅路をよりドキドキワクワクするものにしていたと思う。



ここまで聞いてどう?面白い、質問?
面白い、面白い、面白い!この迸る思いをキセノナイトの容器に詰めて、ビートルズで届けたい。Iℓℓ%本心から96.415°Cの熱を持ってオススメしたい!

映画が楽しみすぎる。ユーモアとドラマのセンス・バランスが抜群で絶対的な信頼を置いているフィル・ロード&クリストファー・ミラー監督コンビ(適任すぎ!!)だから絶対に傑作確定だし、ちょっと情けなさ・頼りなさがあって皮肉っぽいユーモアのセンスも持ち合わせたグレース役を演じるライアン・ゴズリングも、地球の危機に全権限を有するストラット役のザンドラ・ヒュラーも適材適所すぎる!ライアン・ゴズリングの控えている次回作は、スター・ウォーズシリーズ最新作『スターファイター』だし、ゴズリングSF時代突入アツい。『ファースト・マン』もこれのためのテスト飛行だったのかと。絶対に公開初日IMAXで観に行くぞ!!
あと、余談ながら、アンディ・ウィアー『火星の人』映画化の際に『オデッセイ』という邦題を付けてしまったがために、今年公開のクリストファー・ノーラン監督作品『オデュッセイア』でも主演を務めるマット・デイモンのフィルモグラフィーがややこしくなること必至(同監督『インターステラー』にも出演していて、こちらも人類存続のために宇宙へ行く話なのでより一層拍車をかけて)。

とてもしあわせ、しあわせ、しあわせ!
フィストバンプ🤜🤛


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