漢方を始める前に、これだけは知っておいてほしい|30年の漢方相談でわかった「選ぶ・続ける・見直す」の基本(#186)
〜8月20日 00:00
「漢方って飲み始めると、ずっと飲まなきゃいけないんでしょ?」
30年間、漢方相談をしてきた中でも特に、初めて漢方を飲む方から、よくお聞きする声です。
さらに、
「だって、漢方って長く飲まないと効かないんでしょ?」
とも、よく言われます。
お気持ちは、よくわかります。
どうやら
「漢方は長く飲むもの」「長く飲まなきゃ効かないもの」
というのが、定着した一般的なイメージのようです。
でも、必ずしもそうとは限らないのです。
なぜなら、どれくらい飲むのかを考える前に、
それを決める大切なことがあるからです。
それは、
その人が、「何のために漢方を飲むのか?」です。
目的が違えば、漢方との付き合い方も変わります。
だから、「どれくらい飲むのか」も十人十色なのです。
「漢方飲み始めたら続けなくてはいけない」
ということはないのです。
この記事を読んでくださった方が
どこかミステリアスな漢方相談の門を叩く前に、
なるべく納得して、ちょっとでも安心して漢方始められるように
という思いで書かせていただきました。
第1章 「いつまで?」の前に、「何のために?」
では、「何のために漢方を飲むのか?」とは、
どういうことでしょう。
ここで、
海に浮かぶ氷山を思い浮かべてみてください。
水面の上には、氷山の一角が見えています。
これを、今目の前に現れている症状だとします。
東洋医学では、このように表に現れているものを「標(ひょう)」と捉えます。
でも、
氷山は水面から見える部分だけではありません。
水面の下には、見えていない氷山の本体があります。
同じように、目の前の症状だけではなく、
その背景にある身体の状態にも目を向けていく。
東洋医学では、こちらを「本(ほん)」と捉えます。
そして、
「標」への対応を「標治(ひょうち)」、
「本」への対応を「本治(ほんち)」
と呼びます。
名前を覚える必要はありません。
「なんのために漢方を飲むのか?」
が標治と本治とで変わるってことです。
たとえば、花粉症を例にしてみましょう。
今、鼻水がズルズル出てつらい。
そんなときは、まず、
「この鼻水を何とかしたい」と思いますよね。
これは、
目の前に現れている「標」に注目しています。
一方、
花粉症の時期が過ぎて症状が落ち着いてきたら、
「どうして私は、毎年この時期になるとつらくなるんだろう?」
と、今度は目の前の症状だけでなく、その人の
体質や身体全体にも目を向けていく。
これは、「本」に注目した考え方です。
ここでは、
どちらが正しいということではありません。
今のつらさに注目することも、
その人全体に注目することも、
どちらも
「何のために漢方を飲むのか」につながります。
だから、
「漢方は長く飲まないと意味がない」
とも、
「症状がなくなったら、もう必要ない」
とも、一律には言えないのです。
今のつらさへの対応を目的にするのか?
その先の
身体の状態まで見ながら付き合っていくのか?
それによって
「いつまで飲むか?」は変わるということです。
では、
「漢方は長く飲まないと効かないか?」
について。
もちろん、
効いたかどうか?はとても大事なことです。
でも、そもそも
漢方の効いたかどうか?は、化学薬品とは
ちょっと違ったイメージなんです。
相談の現場で実際に効果を実感した方の声は
「気がついたら、ちょっといいかもしれない」
そんな感じで表現される方が多いです。
なぜ漢方は、
こういう独特な、ちょっとわかりにくい
効果の現れ方をするのでしょう?
第2章 飲み始めてからの「身体の声」をひろう
「先生、効いているかどうか、よくわからないんです」
これも、特に漢方を飲みはじめのお客様から、
言われることがあります。
そんなとき私は、
「飲み始める前と比べて、何か変わったことはありませんか?」
とお聞きします。
すると、
「うーん……そういえば、最近ちょっと眠れるようになったかも」
「朝が前より楽な気がします」
「夜中に起きてトイレに行く回数がちょっと減ったかも」
なんて言葉が、ぽろっと出てくることがあります。
そうなんです。
漢方を飲んでからの変化は、いつも劇的に現れるとは限りません。
そしてメインの症状以外の体調の変化として
現れることがあります。
だから、すぐ効かないと言うよりも
薄皮を一枚ずつはがしていくように、
少しずつ変化していくイメージです。
だから私は、お客さまには
「気がついたら、ちょっと体調がいいかもしれない。
その感覚はとてもいい傾向ですよ」
とお話しします。
実は、
一番困っている症状以外の、一見関係なさそうに感じる、小さな身体の変化には、
改善の兆しが見えることがあります。
ラスボスの前に、子分キャラを攻略するイメージです。
五臓六腑は互いに関係しあっていると考える、
東洋医学ならではのものの見方なんです。
そして、漢方を飲まれているご本人がピンとこなくても
その小さな改善の兆しを
先に家族の方が気づくことも良くあります。
ご夫婦で店頭に来てくださるお客さまなどでは、
「最近、顔色がよくなったんじゃない?」
「そういえば、いびきが減ったね」
などと、ご本人が気づいていなかった変化を、
横からご家族が教えてくださることもよくあります。
ただし、
何でも「良い変化」と考えるわけではありません。
気になる変化があったときに、どう考えればよいのか。
これは後ほど、もう少し詳しくお話しします。
まずは、漢方は
「劇的に効いた?」という視点だけでなく
漢方を飲み始めてから、
「どんな体調の変化があるだろう?」
と、身体の声をひろってみることが大切です。
「漢方は長く飲まないと効かない」ということではなく、効いたということの捉え方が違うのです。
その上で
もう少し続けた方がいいの?
それとも、一度見直した方がいいの?
という判断をして頂きたいのです。
では、漢方はどのくらいの期間で、
一度立ち止まって見直せばよいのでしょう。
第3章 「いつまで続ける?」より、「いつ見直す?」
「先生、じゃあ、どのくらい飲んだら一度見直せばいいですか?」
そう思いますよね。
できれば、
「まず1週間」
「1か月たったら」
「漢方だから3か月」
なんて、数字で教えてもらえた方がわかりやすい。
でも、ここが難しいところなんです。
みんな同じ期間、とはなかなか言えません。
「何のために飲むのか」も違えば、「どう変化していったのか」も、一人ひとり違うからです。
たとえば、
・今、とてもつらい症状があって飲み始めた漢方。
・何年も繰り返している悩みと付き合うために飲み始めた漢方。
同じ1週間でも、意味が違いますよね。
だから私は、
「いつまで飲む?」より、「いつ見直す?」
と考えます。
「このままでいいかな?」
と、一度立ち止まってみることです。
「今の私に、これは必要なのかな?」
と確認してみる。そんなイメージです。
これって、漢方だけの話ではないと思うんです。
薬でも、サプリメントでも、健康食品でも、
「そういえば、なんとなく続けているなあ」
というものはありませんか?
始めたときには目的があったはずなのに、いつの間にか「飲むこと」が習慣になっている。そんなこともありますよね。
でも反対に、
「今、困っていないから必要ない」とも限りません。
先々のことを考えて続ける。
いわば、「転ばぬ先の杖」的な考え方も、
続ける目的の一つです。
大切なのは、
「今、私は何のためにこれを続けているんだろう?」
と、ときどき確認してみること。
私は、それが「見直す」ということだと思っています。
ここまで、三つのことをお話ししてきました。
「何のために飲む?」
「どう変化していった?」
「いつ見直す?」
今、漢方を飲んでいる方なら、一度ご自身に問いかけてみてください。
「私は、何のために飲んでいるんだろう?」
「飲み始めてから、どう変化してきただろう?」
「そろそろ一度、見直してみた方がいいかな?」
そんな問いが一つでも生まれたら、それも自分の身体と向き合うきっかけになると思います。
ただ、実際に自分のことになると、
ここからが難しいんですよね。
ここから先は、
「じゃあ私は、何を見ながら、
続ける・見直す・相談するを考えればいいの?」
そんな方に向けて書いています。
また、漢方を学んでいる方や、専門家として漢方に関わり始めた方にも、
「実際の相談現場では、何を見ながら考えているのか?」
を知る一つの参考になればうれしいです。
ただし、ここからお伝えするのは、
「この症状なら、この漢方」
「あなたには、この処方」
というお話ではありません。
ご自身だけの判断で、今飲んでいる漢方を続けたり、やめたりするための答えでもありません。
ここからお伝えしたいのは、
自分の身体と漢方との付き合い方を考えるための「ものさし」です。
30年間の相談現場で、私が失敗から学び、身につけてきたことを、
「漢方を始める時の7つの判断基準」
として、一つずつお話ししていきます。
第4章 「漢方を始める時の7つの判断基準」
では、ここからは、漢方薬をはじめてみようかな?と思っている方や
漢方家になりたての方々にむけて、
漢方を始める前に、知っておきたい7つの判断基準をお伝えします。
漢方を飲む側の方が、少しでも納得して心配なく漢方に向き合えるように
漢方を勧める側の方が、少しでもスムーズにお客さまと向き合えるように。
漢方を自分で選ぶ方が、自分自身の身体と向き合えるように。
そんな風に役立てていただけたら幸いです。
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8月13日 20:30 〜 8月20日 00:00
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