第20回【MAXの薬でも届かない場所 ―― 扉の向こうの真っ赤なおでこ】
■ ひとりになると聞こえる「声」
あの子にとって、一人の時間はとても心細い時間でした。
自分を否定する声に、支配されてしまうからです。
「お母さんはすぐに帰ってくるからね」
そう言い聞かせても、私が買い物で少し家を空けるだけで、静かな家の中にあの声が響いてしまう。
あの子はそこから逃れたくて、どうしようもない衝動に駆られていきました。
■ 買い物から帰った日の、真っ赤な現実
ある日、買い物を終えて家に帰ると、あの子のおでこが真っ赤に腫れ上がっていました。
私がいない間、激しい否定の声に一生懸命に耐えようとして、自分で壁に何度も打ち付けてしまったのです。
痛々しいおでこを見て、胸がぎゅっと締め付けられました。
「仕事を辞めてずっと傍にいるのに、どうして止めてあげられないんだろう」
娘はすでに、薬をMAXまで飲んでいました。これ以上、増やすこともできません。
「今の薬の力だけでは、どうにもならないのかもしれない」
おでこに絆創膏を貼り、抱きしめるしかできなかった。
■ 家族のバトン、そして母の願い
「ひとりにしておくのが不安」
それからは、家族で交代して、あの子を一人にしないように動き始めました。
夫も、私も、みんなでスケジュールを合わせ、バトンを繋ぐように誰かが必ず傍にいる。それはあの子を守るための、家族の必死な思いでした。
けれど、それぞれの生活もある中で、少しずつ限界も見え始めていました。
何より、そこまでしても娘の苦しみを根本から消すことはできなかったのです。
いつも怯え、緊張しきっている娘の表情。
このままでは、あの子の毎日はただ辛い時間に耐えるだけになってしまう。
「なんとかしてあげたい。あの子の人生を、辛いだけの時間にしたくないな」
もう一度、「楽しむ時間」を取り戻してあげたい。
家族の力でも、今の薬の力でも届かないのなら‥
私は自分で調べ始めていました。
そこで出会った言葉が、「最後の砦」でした。
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