「大将とわたし」
佐木隆三氏は、昔、犯罪ノンフィクション、ルポルタージュものをよく読んだ。
小説仕立てではあるけど、松下竜一氏に続いて、「下筌ダム反対闘争(蜂の巣砦闘争)」を闘った老主人公・室原知幸氏について書いていたなんて。
国家権力を相手に、昭和の田中正造の如く、老体にムチ打って闘う、まさに“肥後もっこす”の室原氏を、仲間だった雇い人の視点から描いた傑作である。
室原氏は、“暴には暴、法には法”で対処しつつも、何が何でもダム建設を止めさせるということよりも、「私は民主主義のなんたるやを身をもって示す。私のやってることの意味を一人一人のものとして考えてほしい」と常々言っていたように、戦後における曖昧模糊とした民主主義・資本主義と個人の関わりを炙り出し、その中における人間の権利とは何かを考えさせる孤独な闘いであったのだ。
ドキュメンタリーを撮りたいと現場に来た大島渚監督と思われる人物とのやり取りもある。連帯せずに孤立化する闘争の意味を問う、全てに勉強不足の監督に対して、「帰れ!」と一喝する室原氏は気概を感じて気持ちが良い。
他に収録する二篇の小説は、日本人のほとんどが“中流意識”を持つ時代になったことを予見するような内容であった。



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脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。