昔の恋人のような冬と、結局今も一緒にいる
寒い夜だから~♪頭の中で懐かしい歌が流れている。寒さが本当に苦手。暑さはまだ耐えられる。でも寒さは無理。暖房がかかっていない場所(起きたての部屋やトイレ、脱衣所)では身体の芯が冷えて泣きたくなる。
小学校の時に、父親の仕事の都合で一時、新潟に住んでいた。市内なので豪雪地帯というわけではなかったが、毎朝、家前の霜が降りた地面を歩くと「ザクッザクッ」っと固めのクッキーを食べているような音がした。ありとあらゆる水場には氷がはり、定期的に柔らかくも凶暴な雪が降った。
その時から寒さは天敵だった。まず、手や足の先の色が紫というか土いろというか、おかしな色になる。(医者に毛細血管が細いせいと言われた記憶があるけど、詳しくはわからない)しもやけみたいにかゆくなったり腫れたり、とにかく寒くなると身体の調子が悪くなる。
そして、私が通っていた中学校に行くまでの大きな坂。サッカーのゴールラインくらいあるんじゃない?という長い坂なのだけれども、これが冬になると凍る。驚くほどツルツルしていてちょっとでも油断するとすっころぶ。長いだけにずっと転ばないように集中しなければならない。緊張感が途切れると転ぶ。冬は毎朝必ず一人はすっころんでいる人をみた。私も、もちろん豪快に転んだ。これがとても痛くて。冬嫌いの原因の一つにもなっている。
雪かきも辛かった。たまに降る大雪。家族総出で雪をかいた。春になるとなくなってしまう雪に対して、こんなにも労力がかかることをしなければならないなんて!淡々と受け入れてこなすには、私の心は未熟すぎた。文句こそ言わないけれど、雪が降る度に不満はたまっていった。
そんな背景も手伝って、冬を嫌いになった。
独身の若い頃、一度だけ本気で南の方で生きることを考えたことがある。働いていた会社が倒産して、どうせ転職するなら南に行こう、冬はいらないと思ったのだ。リスタートを切るなら今だ。実際に就職先も探した。でも結局は今の地元(関東)で転職活動をした。
その時に少しだけ、思い出してしまったのだ。冬のやさしさを。寒い日に家族で囲んで食べるあったかくて湯気で覆われた鍋だとか、転びながらもどんどん滑れるようになるスケートのたのしさとか、空気が澄んだ冬の美しい空に映える神社の立派な木々。結局「いやだいやだ」と言いながら、嫌いになりきれない昔の恋人のような冬を私は捨てられなかったのだ。
だから今もこの地(関東)で寒さに震えています。寒い夜だから~♪今日はまた鍋にでもしようかな。
