【⚾️】サインボール
選手からのサイン。基本的に私は姿を見ているだけで満足してしまうので貰いに行くことは無いのだが、貰うのが好きな人はユニフォーム、ボール、色紙に留まらず様々なグッズや私物がサインで溢れている。チーム愛でいっぱいだなあと思いつつ、こんな風に自分色を出して応援アピールしてみるのも良いのかもと思ったり。恥でも失礼でもないし。
しかし、我が家にはたった一球だけサインを直接貰ったボールがある。

2016年の1月のある日、ロッテ浦和球場では新人合同自主トレが開かれていた。新たに入団した選手はここで顔を合わせ、ランニングやキャッチボールをこなす。そんなトレーニングの合間には、見学に訪れたマリーンズファンのために即席のサイン会が開かれた。高卒大型ショートのドラフト1位・平沢大河選手や甘いマスクのドラフト3位・成田翔選手はさすがの人気ぶり。そんな中私がサインを貰いに行ったのが、育成ドラフト2位・柿沼友哉選手だった。当時、マリーンズファンにほぼなりたてだった私は野球選手からサインを貰うことも当然初めて。こうしたサイン会は、選手達は不愛想で流れ作業の様に進んでいくとばかり思っていたが、1人1人に丁寧に対応する穏やかな雰囲気が柿沼選手から生まれていた。
そしていよいよ私の番。他のファンの方と同じ様に親切に対応して下さった。野球選手にサインをもらうのが初であることを伝えると「はじめてなのに僕で良いんですか?大河じゃなくて」と返す柿沼選手。「良いんです。平沢選手に負けないくらい頑張って下さい!」と返すと「頑張ります!」と微笑んだ。ほんの20秒くらいのやり取りだったが、9年経った今でも覚えている。

そんな柿沼選手は、一軍と二軍を行き来することが多かったものの、井口監督時代には「柿の種バッテリー」として若かりし種市選手とよくバッテリーを組んで成長を支えたり、いわゆる「抑え捕手」として9回にマスクを被って勝ち試合を締めくくる等、グラウンドで黒子役を確実にこなす姿をたくさん見かけた。全て、とても大切な役割だ。特に抑え捕手はサインが勝敗に直結するのでミスが許されない。そんな中で粛々とこなせているのは当然のことではない。


普通の仕事にも内容や印象が派手なものと地味なものがある。とりわけ後者は憧れられることもなく、職に就いていてもやり甲斐を感じられない人も多い。なぜなら、日常の小さな支えから世界規模の大発明まで、何をやろうが世間からは「当たり前」で片付けられてしまうから。そんな裏方達の心の支えはその当たり前の部分を見てくれる人の存在に他ならない。だから、当たり前に対してスポットライトを当ててしっかりと感謝の気持ちを伝えておきたいと思う。伝えられるうちに。

柿沼選手は今年限りで契約満了によりマリーンズを退団することになったが、2016年入団組の中では誰よりも長く白黒のユニフォームに袖を通した。そして、来季以降はスワローズでプロ野球選手を続けることが発表されている。はじめてホームランを放った神宮で(欲を言えば大松尚逸選手くらいの)復活を遂げ、スワローズクルーを喜ばせる活躍ができますように。
あたりまえに、ありがとう!
