見出し画像

【⚾️】マイスターの美学│2026/7/20 千葉ロッテマリーンズ現地観戦記

 2026年7月20日の千葉ロッテマリーンズ対福岡ソフトバンクホークス戦(ZOZOマリンスタジアム)の観戦記録です。

この投稿は、日本プロ野球機構(NPB)の定める撮影・配信規定を一読、遵守の上作成しております。


引き際の形

 「野球が楽しいとか好きという感情が去年ぐらいから芽生えた。自分の中ではそれは違うと思って。」 本日、引退を正式に表明した角中勝也選手は会見で、清々しい表情でそう語った。角中選手は、マリーンズの歴史の中でも指折りの巧打者。首位打者の座を2度も手にしているくらいだ。ステップを踏まずともヒットを量産する独特の打法や、どんなコースの球でもバットに当てる悪球打ち。そして鳥退治。そのプレーやユーモアでスタジアムをたくさん盛り上げてくれた。そんな「角中勝也」を作り上げたのは天性の才能ではなく、猛練習の積み重ね。「練習をした人間は結果を出す」と自他に言い聞かせ、独立リーグからここまで這い上がってきた。とにかく必死で、楽しさを感じる心の余裕はない。だからこそ、「練習が通用しない」と感じる様になった彼の決断は早かった。昨年退団した荻野貴司選手や石川歩選手の様に、ボロボロになって納得するまで続けたいと肩を叩かれても現役続行を目指す道もあっただろう。しかし、角中選手は恥ずかしいプレーは見せられないと自ら身を引いた。現役の終え方に優劣はない(何なら、数年で終わらせられてしまうことが殆どだ)。ただ、野球が好きという感情が芽生えたからバットを置く、というのは非常に「らしい」決断だと思った。

瀬戸際の奮闘

 土曜日からの3連休で組まれているこのカード。マリーンズは首位・ホークスとの対戦に臨むも、ここまで連日の敗戦。後半戦を巻き返すためにもなんとしても乗り越えねばならない。

 先発投手はアンドレ・ジャクソン選手。ローテーション通りに行けば小島和哉選手の登板日だったが、相性の悪いホークスを避けて逆に良い次カードのイーグルスに投げさせるために順番を入れ替えた格好だ。対ホークス戦は初めての登板となるが、この日最速157km/hの直球を軸に序盤2回をノーヒット。非常に素晴らしい出だしとなった。

 その勢いに打線も応える。1回裏には先頭打者の藤原恭大選手がファーストストライクを振り抜き、打球はラグーンに吸い込まれるホームラン!角中選手を模倣した打法で先制点をもぎ取り、試合の流れを作ることができた。

2回裏には角中選手にこの日最初の打席が回り、いつもよりも力のこもった角中コールが響き渡った。無死二塁のチャンスでストレートを懸命に振り抜く。結果はセカンドゴロだが、走者を三塁に進めることに成功。

そして、続く山﨑剛選手が低めの変化球に喰らいつき、犠牲フライでさらに1点を追加。これが嬉しいマリーンズ加入後初打点となった。

 しかし3回表。二死満塁のピンチを迎えたジャクソン選手。相手打者のハーフスイングの判定を取ってもらえず押し出しで1点を失い、何やら前に見た嫌な流れの予感を感じてしまう。不運が舞い込むとそこから崩れてしまうのだ。そして、その予感は最悪の形で的中し、ジャクソン選手は5回4失点と逆転されて降板となってしまうのだった。

一方で、打線は3回裏に山口航輝選手の特大アーチで1点を取っている。これが今季14号となり、年度ごとのホームラン数では自己2位タイ(2023年と並ぶ)。自己最多の16本(2022年)も射程圏内に捉えており、このペースが維持できれば超えてくれそうだ。

 中盤からは頼みの中継ぎ投手達がマウンドへ。八木彰選手、鈴木昭汰選手、中森俊介選手がそれぞれ登板し、無失点で切り抜けた。例年は夏場頃からリリーフの調子が一斉に悪くなる傾向になるが、今年は驚異的な勝ち運を誇る八木選手をはじめ安定した投手が多いのが心強い。

そして8回裏。我らがキャプテン、ネフタリ・ソト選手が物凄い弾道の放物線を描き、ホームランで同点に追いついた。これで初来日から9年連続での二桁本塁打の偉業を達成。白い歯を見せながら、堂々とベースを回った。

 このままサヨナラ勝ちに持っていきたかったマリーンズだが、9回にマウンドに立った横山陸人選手が乱調。2つの四球が絡み1点を勝ち越されてしまう(というよりは、愛斗選手の好守のおかげで1点で済んだ)。

再び追いつきたい9回裏、先頭は角中選手。何とか塁に出ようと懸命にバットを振ってタイミングを合わせにいく。配球は全てストレート。しかし、空振ったり差し込まれたりとタイミングが合わない。それでも、何とか塁に出ようと8球粘るが、9球目を空振り三振。ちょうど3年前、ホークスからサヨナラホームランを放った時と同じ、高めのストレートだった。できていたことができなくなる。抗えない衰え。それをはっきりと実感させられた。
後続も続かずゲームセット。マリーンズは今日の敗戦を以て今季の自力優勝が消滅した。

フェンス際の悲劇

 4回表、ラグーンに入るかどうかギリギリの飛球を追っていた西川史礁選手がドンという大きな音と共にグラウンドに倒れ込み、そのまま起き上がらない。トレーナーが一斉に駆けつける。しまいには担架も運び出される。これによりマリーンズは同点に追いつかれたのだが、もはやそんなことがどうでも良くなるほど頭が真っ白になった。
 昨年は新人王を取り、今季もここまで全試合に出場しキャリアハイを更新中。週が明ければオールスターが待っている。そんなシナリオが目の前で崩れ落ちていった。どうやら膝を負傷した様で、程度によってはオールスターはおろか、今季絶望となりかねない。今は少しでも軽傷であることを祈るしかない。愛斗選手と入れ替わり、自然発生した西川コールを受けながらグラウンドを後にした。

往生際の良さ(悪さ)

 試合後は事前の予告通り、角中選手からマリーンズファンに向けてのスピーチが実施された。私も一言も聞き逃すまいと、議事録を取るように紡がれた言葉を書き留めた。(全文以下)

「死ぬ気でやったので思い残すことはない」と涙で声を詰まらせながらもすっきりとした表情で語った角中選手。一方で、今日の試合では凡退する度に非常に悔しそうな表情を見せていた。本当の引退試合までは時間がある。残された時間で最後まで本気で自分に、マリーンズに向き合って、悔いなくバットを置けることを願っている。

私達は忘れない。Meisterとして、My Starとして強さを教えてくれた君の温もりを。

いいなと思ったら応援しよう!