歯科医の麻酔って何を使っているの?
歯科領域で使用される麻酔には、主に局所麻酔、精神鎮静法(鎮静法)、および全身麻酔の3種類があります。これらは治療内容、患者様の全身状態、痛みや不安の程度に応じて使い分けられます。以下に、名称・成分・特徴を詳しく説明いたします。情報は日本国内で承認・使用されている主なものを基としており、実際の使用は歯科医師の判断によるものです。ご自身の体質や既往歴がある場合は、必ず事前に主治医にご相談ください。
1. 局所麻酔(最も一般的な方法)
歯や歯茎の特定の部位の感覚を一時的に麻痺させる方法です。虫歯治療、抜歯、歯周治療などで日常的に用いられます。注射による浸潤麻酔(治療部位周辺に直接注入)と伝達麻酔(神経の近くに注入し広範囲をカバー)の2つに大別されます。
日本で主に使用される歯科用局所麻酔薬(カートリッジ注射剤)は以下の通りです(使用頻度が高い順):
キシロカイン(Xylocaine) 主成分:塩酸リドカイン(2%)+血管収縮薬(アドレナリン=エピネフリン)。 特徴:最も広く使用される標準的な麻酔薬。麻酔の効き目が早く、持続時間は約2〜3時間程度です。血管収縮薬により麻酔効果が長持ちし、出血を抑える利点があります。1.8mLカートリッジが標準。
オーラ注(Ora Injection) 主成分:塩酸リドカイン(2%)+アドレナリン(含有量がキシロカインよりやや多い)。 特徴:キシロカインと同等の効き目・持続時間ですが、防腐剤(パラベン)が含まれていません。アレルギー体質の方や防腐剤過敏症の方に適します。1.0mLまたは1.8mLのカートリッジがあります。多くの歯科医院で第一選択とされることが多いです。
シタネスト・オクタプレシン(Citanest-Octapressin) 主成分:塩酸プロピトカイン(3%)+血管収縮薬(フェリプレシン=オクタプレシン)。 特徴:アドレナリンを使用しないため、高血圧・心疾患・甲状腺機能亢進症などの患者様に適します。アドレナリンより血圧への影響が少なく、心臓への負担が軽減されます。ただし、麻酔の効き目がやや遅く、持続時間は1〜2時間程度と短めです。妊娠後期には使用を避ける場合があります。
スキャンドネスト(Scandonest) 主成分:メピバカイン塩酸塩(3%)。血管収縮薬・防腐剤・亜硫酸塩は一切無添加。 特徴:国内で唯一の血管収縮薬無配合製剤です。高血圧・心疾患・アレルギー体質の方、小児に適します。毒性が低く安全ですが、持続時間は約30分と短く、出血抑制効果もありません。簡単な処置に限られます。
その他の最近の選択肢 2024年9月に承認されたセプトカイン配合注カートリッジ(主成分:アルチカイン塩酸塩+アドレナリン)。浸潤・伝達麻酔に使用可能で、海外では広く用いられています。日本での選択肢が広がっています。
また、注射の痛みを軽減するための表面麻酔(ゲル・パスタ・液状)もあります。例:ジンジカインゲル、ビーゾカイン歯科用ゼリー、プロネスパスタアロマなど。歯茎に塗布または噴霧して使用します。
注意点:アドレナリンを含む製剤は高血圧・糖尿病・甲状腺疾患などで禁忌・注意の場合があります。使用量は年齢・体質により調整され、最大使用量を守ります。副作用(まれにショック・アレルギー・中毒症状)への対応が可能な環境で使用されます。
2. 精神鎮静法(不安・恐怖心を軽減する方法)
局所麻酔だけでは治療が難しい場合(歯科恐怖症、嘔吐反射が強い方、長時間治療)に併用します。意識は保たれ、呼吸も自力です。
笑気吸入鎮静法:笑気(亜酸化窒素)と酸素を鼻から吸入。リラックス効果・軽い鎮痛効果があり、子どもや軽度の不安に適します。治療後速やかに回復します。
静脈内鎮静法:点滴で鎮静剤を投与。より深いリラックス状態になります。インプラントや親知らず抜歯などの外科処置に使用されます。日帰りが可能です。
3. 全身麻酔
意識を完全に消失させ、全身の感覚を麻痺させる方法です。大規模な口腔外科手術、矯正手術、障害者・小児の協力が得られない場合に使用されます。歯科麻酔科医が管理し、入院または日帰り施設で行われます。揮発性麻酔薬(セボフルランなど)や静脈麻酔薬(プロポフォールなど)が用いられます。局所麻酔を併用する場合もあります。
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