我が営業所に語り継がれる、恐怖の「スシ食いねぇ」左遷事件
サラリーマン生活を長く続けていると、稀に、理解の範疇を超えるほど強烈な「暴走上司」に出会うことがあります。
私の元にやってきたZ部長は、初っ端から完全にトガっていました。
彼が赴任してきた際の歓迎会。
ちょうど強烈な寒波が押し寄せている時期だったため、幹事は気を利かせて「温かい鍋」をセレクトしたのです。
しかし、卓に着くなり、Z部長は冷ややかに一言放ちました。
「俺は、他人と鍋をつつくのは嫌いだ」
場が一瞬で凍り付きました。
「おいおい、歓迎会でケンカ売ってんのか、このおっさん!」と、その場にいた全員の目が物語っていました。
こんな最悪のスタートだったため、それ以降、部長から食事に誘われても、私をはじめとする平社員たちは「都合が悪い」と極力避けるようになっていきました。
そんなある日の夕方。設計のS課長が、ついに部長から直々にロックオンされてしまったのです。
「S君、これから寿司でも食べにいかんか」
部長は100%「NO」はないと思って誘ったのでしょう。しかし運悪く、S課長はその夜、私たちと「お好み焼き」を食べる約束をしていました。
「あ、申し訳ありません。ちょっと先約がありまして、また今度誘ってください」
その晩、私たちは鉄板を囲み、楽しくお好み焼きを食べながら大いに盛り上がりました。
「いや〜、部長と回らない寿司を食べるより、こっちの方がよっぽど喉を通るよ!」 S課長も本当に楽しそうでした。
悲劇が起きたのは、翌朝のことです。
昨晩の事情をまったく知らない同僚のKさんが、出社するなり、よりによって部長の目の前でS課長に無邪気に声をかけたのです。
「S課長! 昨晩のお好み焼き、めちゃくちゃ旨かったですね!」
カチャ、と部長が顔を上げ、般若のような顔でS課長をキッと睨みつけました。
「S君、君は私との『高級寿司』より、彼らとの『お好み焼き』を選んだのか」
その言葉の響きは、怨念そのものでした。 そして季節は巡り3月。
なぜか営業所の「設計課」そのものが組織改編によって消滅し、S課長は遠方の営業所へと転勤していきました。
私たちはこの恐ろしい粛清劇を、敬意と恐怖を込めて「スシ食いねぇ」事件と呼び、後輩たちへと語り継いでいます。
この話を懐かしいメンバーでする時は、シブガキ隊の「スシ食いねぇ」を歌いながら盛り上がります。
〽︎トロは中トロ、コハダ、アジ
