呪われた営業所。主力3課長のアキレス腱が「連鎖断裂」した恐怖の数ヶ月
それは、ある夏の日に始まった。
転勤してきた営業マンとの親睦を深めるために開催された、社内ソフトボール大会。
その悲劇は、とあるプレーの最中に起きた。N課長が、ホームに滑り込んだ瞬間、まるで周囲の歓声をかき消すかのような、嫌な音が響き渡った。
「ブチっ」
その場にのけ反るN課長。 足首から先が力なくブラブラしているその状態から、誰もが直感した。アキレス腱の断裂。
転勤者歓迎するはずの爽やかなイベントは、一瞬にして凄惨な「労災現場」へと変貌した。
だが、これはほんの序章に過ぎなかった。
そのわずか1か月後。月末の売上未達という重苦しい空気の憂さ晴らしに、我が第1課のメンバーはスナックで憂き目を晴らしていた。
すでに泥酔状態のS課長が、マイクを握りしめて矢沢永吉の『ファンキー・モンキー・ベイビー』を熱唱し始める。
「君はファンキー、モンキー、ベイビー♪」
激しくツイストを決めた、まさにその瞬間だった。カラオケの重低音を切り裂く、あの聞き覚えのある音がスナックの店内に響いた。
「ブチっ」
悲鳴とともに崩れ落ちるS課長。のちに右足アキレス腱の見事な断裂が判明した。
「2度あることは3度ある」とはよく言ったものだが、まさかこれほど正確に予言が的中するとは誰も思わなかっただろう。
季節は流れて秋。地区対抗のスポーツ大会が開催された。
学生時代にバレーボールのエースアタッカーとして鳴らしたO課長(身長189cm)は、過去2人の悲劇を教訓に、念入りの念を入れたウォーミングアップを行っていた。
試合が始まり、女子社員に向けて優しくトスを上げた、まさにその一瞬。
「ブチっ」
体育館に、またしてもあの「魔の音」がこだました。
身体をくの字に折り曲げてうずくまる、189cmの巨体。
ジャンプではなく、トスを上げた瞬間に踏み込んだ左足のアキレス腱が逝ってしまったのだ。
営業所の未来を背負う、主力の3課長。
彼らのアキレス腱が、数ヶ月の間に順番にすべて断裂するという前代未聞の異常事態。
緊迫した空気が漂う月例会議の席上、ついに営業所長が頭を抱えて嘆いた。
「我が営業所最大の『アキレス腱(弱点)』は、この3課長たちだ」
座布団をあげたいほど上手いことを言っている場合ではないのだが、
所長もよほどショックだったのだろう。
翌日から、営業所の朝礼メニューに「アキレス腱をこれでもかと伸ばす体操」が追加されたのでした。
