午前2時の綱引き狂想曲。スナックのママが投げ出した「謎の縄」
今や「2次会」という言葉すら懐かしい響きになりつつありますが、バブル時代、1次会で解散するなどあり得ませんでした。
夜が深まり、3次会ともなれば理性はどこへやら。そこはまさに、大人たちが本能を剥き出しにする「修羅場」と化すのです。
それは、ある月末の打ち上げでの出来事でした。 その月、H課長のチームは売上未達。一方、その穴を埋めて営業所全体の目標を達成させたのがS課長のチームでした。 酒が入り、互いのプライドが火花を散らします。
「お前の指導がぬるいから未達なんだよ!」 「なんだと? お前はたまたま大きな案件が転がり込んだだけだろうが!」
罵声はエスカレートし、二人は立ち上がるなり互いのネクタイを掴んで揉み合いに。若手が必死に割って入りますが、猛り狂った課長たちは耳を貸しません。 S課長が激昂し、手近な皿を掴み上げたその瞬間でした。
今まで静観していたスナックのママが、雷鳴のような声を上げました。 「……店の中でガチャガチャすんな! 表に出んかいッ!!」
圧倒的な迫力に一同が凍りつく中、ママは店の奥からロープを引っ張り出してきました。
「これで決着をつけな。負けた方が今日の飲み代を全部奢りなさい!」
午前2時。人っ子一人いない店の前の公道に、私たちは2人の課長を引きずり出しました。 「課対抗・飲み代をかけた綱引き」の始まりです。
結果は、元柔道部員を擁するS課長チームの圧勝。 あれほど険悪だった二人は、「やーい、いい汗かいたな!」と笑い合っています。
さっきまでの殺気は、どこかへ霧散してしまったようでした。
こうして私たちは、毎回のようにこんな騒ぎを起こしては夜明けを迎えていたのです。 しかし今でも不思議でなりません。なぜ、あのスナックに「綱引き用の縄」なんてものが常備されていたのでしょうか……。
