「面白い景品を考えてくれ」その一言から始まったカブトムシ捕獲隊の災難と栄光
「次の8月の展示会の景品は、何か面白いものを考えてくれ」 トミセンスは営業所長からそんな指令を受けた。
普段のイベントでは、お菓子や洗剤、キッチン小物など、もらっても困らないものを中心に選んでいた。
面白いもの=一体何だろう? 「普段手に入らないもの」「その季節にしか手に入らないもの」「欲しいけれど自分でお金を出してまでは買わないもの」あれこれと頭を巡らせた。
そして出した結論が、夏休みにぴったりでお子様が喜ぶ「カブトムシとクワガタ」だった。
たまたま業務担当の女性の実家が果樹園を営んでおり、「夏になると桃の木にカブトムシが集まってくる」という話を聞いていたため、「捕まえさせてもらえないか」と頼むと、二つ返事でOKをもらえた。
場所は車で2時間ほどの山奥。若手を中心に5名の「昆虫捕獲隊」を結成した。
その週の土曜日の昼、樹幹におびき寄せるための仕掛け(トラップ)を塗らせてもらい、私たちは近くの旅館で待機することにした。
日が変わり、日曜日の朝3時。私たちが果樹園へ向かうと、そこにはまるで「虫の楽園」のような光景が広がっていた。 カブトムシやクワガタはもちろん、蝶、コガネムシ、カマキリ、まるで昆虫標本を見ているかのようだった。
手早く虫かごに入れていくと、用意していた箱は瞬く間にいっぱいになった。 「こんなもので十分だろう」と思った、その瞬間。
「なにやってるんだ!」
体格の良い男たちが果樹園になだれ込んできた。
「お前ら、桃を盗みに来たんだろう! 許さんぞ!」
トミセンスは胸ぐらをつかまれると、豪快に投げ飛ばされた。
身体は虫かごを直撃し、数匹のカブトムシが犠牲となってしまった。
「違うんです! 聞いてください!」
鼻血を出しながら、果樹園の持ち主が同僚の親であること、その同僚を通じて事前に許可をもらっていることを一生懸命説明した。
「悪かったな。最近、果物泥棒が多くて青年団で見回りをしていたんだ。許してくれ」
誤解が解けた安堵感でほっとしていると、お詫びにと青年団のメンバーも一緒になって昆虫を集め始めてくれた。
結局集まったのは、カブトムシ100匹、クワガタ200匹。
まさに圧巻の大収穫だった。
さてイベント当日。あまりにも昆虫を前面に出し過ぎた結果、会場はさながら「昆虫博物展」と化し、本来の展示会の目的からは大きく逸脱してしまった。
「お前に頼むと、極端すぎていけないな」 営業所長から呆れ顔で掛けられたその言葉も、今のわたしにとっては最高の勲章だ。

