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「カ・イ・カン」から極寒へ。モテたくてオープンカーを買った僕が、北の大地で戦った冬。

平成の若者にとって、カッコいい車に乗っていることは、異性にモテるための必須条件だった。
わたしもご多分に漏れず、未来のデートを夢見て長期ローンを組み、念願のオープンカーを購入した。
「さあ、これで最高のドライブをするぞ!」と夢が広がった直後、非情な辞令が下る。
雪国への転勤だった。

愛車をフェリーに載せ、わたしは北の大地に上陸した。
季節は春。
本州のようなじっとりとした湿気はなく、爽やかな風を受けながら地平線へと続く一直線の道路を駆け抜ける。

映画『セーラー服と機関銃』の薬師丸ひろ子ではないが、思わず「カ・イ・カン……!」と叫んでしまうほど最高だった。

しかし、9月を過ぎ、10月を迎えると事態は一変する。
とにかく、痛いほど寒いのだ。
自慢のオープンカーの屋根(幌)を閉めたものの、所詮はただの「布」。冷気が天井からバンバン容赦なく車内に降り注いでくる。さらに、凍りついた幌に雪がこびりつき、叩いてもびくともしない。

そして何より致命的だったのは、この車が「FR(後輪駆動)」だったことだ。雪道にはめっぽう弱い。
雪国の方なら深く共感していただけると思うが、積雪期でもマンホールがある場所だけは温度が高く、雪が溶けて道路がすり鉢状に凹んでしまう。

そこに後輪がハマろうものなら、もうおしまい。タイヤが虚しく空転するだけで、完全に脱出不能になるのだ。

冬の間、わたしは何回も通りすがりの人たちに車を押してもらい、なんとか窮地を脱出した。北海道の皆さんは、本当に優しくて温かい人ばかりだった。

そんな死闘の冬が終わり、ようやく待ち望んだ春が訪れた。

雪が積もるたびにスノーブラシでガシガシと擦り落とし続けた結果、雪解けとともに現れた自慢のオープンカーは、見事なまでに傷だらけになっていた。

異性を魅了するはずのデートカーが、北の大地で満身創痍の戦闘機へと変貌を遂げた、平成の甘く切ない思い出である。

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