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営業車の半分が「羽毛布団」で埋め尽くされた日。事故の相手が上司だった絶望の午後

建築関連の仕事をしていると、地鎮祭や上棟式、完成披露会などに招かれることが多い。
実はわたし、学生時代に応援団に所属していた。
その経験が功を奏し、声出しやエール、三三七拍子で式を盛り上げられる「縁起のいい男」として、重宝されるようになっていった。

いつしか平日は「しがないサラリーマン」、土日は「祝い事のヒーロー」という二足のわらじを履き、休む暇もない日々を送っていた。
人から感謝されることは無上の喜びであり、オファーを断ることはなかった。加えて、その「副産物」も大きかった。寸志としていただける現金、商品券、お米、お酒……時には家電製品まであった。

中には「うちの娘と結婚してくれ」という、受け取りに困るオファーまであったほどだ。
今で言う「立派な副業」と言えるかもしれない。

会社には内緒の秘密の生活。
しかし、ついにバレる時がやってきた。
当時、自家用車を持っていなかったわたしは、土日の移動に、こともあろうに会社の営業車を無断で使用していたのだ。
いけないこととは分かっていたが、「バレないだろう」と高をくくっていた。

ある日曜の午後。
上棟式を完璧に盛り上げ、出席者全員から感謝の拍手を浴び、気分よく営業所の駐車場へ向かっていた時のことだ。
駐車場のすぐ手前の交差点。
右折してきた車が、わたしの運転する営業車に突っ込んできた。

衝突音。
激しい衝撃。

幸い身体は無事だったが、営業車の側面はベッコリと凹んでいる。
「なにやってんだ!」と憤りながら車を降りると、対向車から降りてきたのは、なんと隣の課の課長だった。

「トミセンス、休みになにやってんだ!」 形勢は一瞬で逆転した。
わたしが被害者であるはずなのに、 課長は凹んだ車内を覗き込み、さらに追及してきた。
「・・・で、これはいったい何だ?」

そう、その日いただいた寸志は「羽毛布団のセット」だった。
営業車の後部座席から助手席まで、布団の山で埋め尽くされていたのだ。

これが決定的となり、わたしの秘密の副業ライフは終わりを告げた。
良かれと思ってやっていたことだが、会社のルールを無視した代償は大きい。
生まれて初めて「始末書」というものを書き、わたしのヒーロー伝説は幕を閉じたのである。

生まれて初めて使った羽毛布団は極楽でした。
(結局、もらったんかい)




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