教室へやってきた、新しいペン【島学#15】/離島の小学校三年目の学び編 15
2004年9月。
東京での学会発表を終え、島の宿舎へ戻ると、一つの荷物が届いていた。
送り主はWACOM。夏の研修会でお願いしていた液晶ペンタブレットだった。
東京から帰るタイミングを待っていたかのような荷物に、疲れも忘れて箱を開けた。
1.帰ってきたら、新しい教材が待っていた
翌朝は教頭先生が出張だったため、いつもより少し早く学校へ向かった。
先週金曜日に出しておいた自習課題を確認し、子どもたちの学習の様子を見ながら朝の仕事を進める。
その合間には来週また上京する会議のための学校CMSの検証も行ったが、島の通信環境では画面が切り替わるたびに待ち時間がある。
今では考えられないような速度だったが、仕方がなかった。
待ち時間を利用して、届いたばかりの液晶ペンタブレットをノートパソコンへ接続してみた。
以前からプロジェクターとノートパソコンを組み合わせた授業は続けていた。
プロジェクターはOHP用のカートに載せ、算数では教科書の掛け図ソフトなどもよく使っていた。
しかし、デジタルボードで書き込みをしようとすると、その都度設定をやり直さなければならない。
マウスでは細かな線が思うように書けず、説明したいところがうまく伝わらないことも少なくなかった。
液晶ペンタブレットは、その不便さをあっさり解決してくれた。
試しにスキャナーで取り込んであった写真を映し、その上へ直接ペンで書き込みをしてみる。
指示したい場所を丸で囲み、矢印を書き加え、説明を補足する。
画面の上へ紙に書くような感覚で文字や線を書き込めるだけで、授業の進め方が大きく変わりそうな予感がした。
「これは、いろいろな場面で使えそうだ。」
そんなことを考えながら、次はどの授業で試してみようかと思いを巡らせていた。
放課後には、久しぶりにバドミントンの練習も再開した。
10月が近づくにつれ日暮れは少しずつ早くなる。
練習時間も前へずらさないといけないし、そろそろイカ釣りの季節も始まる。(笑)
そんなことを考えていると、台風21号の進路も気になり始めていた。
2.学校も島も、少しずつ秋へ
翌日は遠足の計画を起案し、学校ホームページも行事予定を中心に少し更新した。
全校音楽では市音楽会へ向けた練習が始まり、自分はハンドベルとキーボードの補助を担当する。
放課後にはITCE2級試験の願書も届いた。
3級のCBTには合格したので、今度はプレゼンの2次試験なのだが、正直難しいだろう。
しかし、とりあえず挑戦してみようと思っていた。
速達で送っていただいた願書を持って、その日のうちに郵便局へ向かう。
学校へ戻ると、CMSの検証メールにも目を通し、気が付けば1日があっという間に過ぎていた。
午後には、島に新しく完成した焼却炉の運用に合わせ、小中学生を対象にしたごみ分別研修会が開かれた。
始まる前には子どもたちと一緒に会場づくりを行い、シートを敷き、椅子を並べる。
研修ではクリーンセンターの仕事を紹介するビデオを見たあと、ごみカードを使って分別を体験した。
空き缶はつぶさずに出すこと、ペットボトルはラベルを無理に外さなくてもよいことなど、それまで知らなかったことも多かった。
夜になると、今度は地域の方々を対象にした説明会が開かれた。
ビデオやプレゼンテーションは昼と同じ内容だったが、多くの島民が集まり、新しい焼却炉の使い方やごみの分別方法について熱心に耳を傾けていた。
3.ローマ字の授業で試してみる
数日後、その液晶ペンタブレットをローマ字の授業で使ってみることにした。
子どもたちは「キーボー島アドベンチャー」で名誉島民になるほど、大文字はほとんど迷わず入力できるようになっていた。
しかし、小文字になると急に手が止まる。画面の中では入力できても、自分で正しく書けるとは限らない。
そこで、実際に書きながら覚える活動を取り入れることにした。

英字ノートを使うことも考えたが、罫線の幅が少し狭い。
一太郎で英字用のワークシートを作り、3本目の罫線だけ赤色にして印刷した。
文字の高さが分かりやすくなれば、子どもたちも書きやすいと思ったからだ。
そのワークシートをプロジェクターで約150%に拡大して映し、液晶ペンタブレットで文字を書いていく。
これまでなら黒板へ書いていた筆順も、画面の上でそのまま示すことができる。
文字がどの位置まで伸びるのかも、一目で分かった。子どもたちは前を見たまま筆順を確認し、自分のプリントへ書き写していく。
思っていた以上に使いやすかった。
写真へ書き込むだけではなく、ワークシートにも使える。
これなら算数でも、理科でも、総合的な学習でも活用できそうだ。
授業が終わったあと、ペンを片付けながら次はどの場面で使おうかと考えていた。
新しい教材が1つ増えただけなのに、教室の景色まで少し変わって見えた。
これまでなら黒板へ書いていた筆順も、画面の上でそのまま示すことができる。
文字がどの位置まで伸びるのかも、一目で分かった。
子どもたちは前を見たまま筆順を確認し、自分のプリントへ書き写していく。
今では電子黒板ならごく普通にできることだが、当時はこうした授業をどう実現するか、一つひとつ試しながら工夫を重ねていた。
次回に続く・・・
前回の話👇👇
◆本シリーズについて(初めて読んでいただく方へ)👇👇
約25年前の2002年、船が生活のすべてを左右する離島の小学校に赴任しました。
予定通りにいかないことが当たり前の中で、学校と暮らしが地続きの毎日を過ごしていました。
そんな環境の中でも、子どもたちに自信をもたせたいと考え、総合的な学習の時間に取り組んでいました。
この話は、離島の小学校勤務2004年度当時の日記をもとに、島の学校編では収まらないプロジェクトや情報教育、外部との関わり等について描いていきます。
※本文中の地名・固有名詞は一部仮名としています。
離島の小学校編Season3マガジン👇👇👇
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