俺たちは天使じゃない - - 映画の遊悠エッセイ
俺たちは天使じゃない
We're No Angels
映画の記憶というものは、時に曖昧で、しかし強く心に残るものです。
古いアメリカ映画のラストシーン、
監獄へ戻っていく三人の脱獄囚。
頭上には「天使の輪」が輝いていた。
その光景が記憶に深く刻まれていたのです。
ある日、テレビをつけると目に飛び込んできたのは、「俺たちは天使じゃない」というタイトルでした。
主演はロバート・デ・ニーロとショーン・ペン、そしてヒロインはデミ・ムーア。
記憶よりも新しいキャストに首を傾げつつも、その映画を見始めました。
物語は1935年のアメリカ東部、カナダ国境に近い刑務所から脱獄したネッド(ロバート・デ・ニーロ)とジム(ショーン・ペン)が、ひょんなことから神父になりすまし、小さな町で騒動を巻き起こすというものです。
ネッドが聾唖の娘を持つモリー(デミ・ムーア)と恋に落ちるなど、二人の心境にも変化が訪れます。
しかし、あの「天使の輪」のラストシーンは登場しませんでした。
調べてみると、私が見ていたのは1989年にニール・ジョーダン監督、ロバート・デ・ニーロ主演でリメイクされた作品だったのです。
製作総指揮も兼任したロバート・デ・ニーロによるこの新しい「天使たち」は、ネッドはモリーとその娘とカナダへ、ジムは修道院に残り本物の神父になることを決意するという結末を迎えていました。
では、私の記憶にある「天使の輪」は、一体どの作品のものだったのでしょうか?
その答えは、さらに時を遡った1955年制作のオリジナル版にありました。
監督はマイケル・カーティス、
脚本はラナルド・マクドゥガル
そして主演は
ハンフリー・ボガート
アルド・レイ
ピーター・ユスティノフ
という名優たち。
フランスの劇作家アルベール・ユッソンの戯曲を原作としたこのコメディ映画は、1900年代初頭のギアナを舞台に、脱獄囚のジョゼフ、ジュールス、アルバートの三人が雑貨屋を舞台にハートウォーミングな騒動を巻き起こす物語です。
そして、このオリジナル版のラストシーンこそ、私の脳裏に焼き付いていた光景だったのです。
雑貨屋一家の問題を解決して、最終的に刑務所に戻る三人の脱獄囚たち。
その頭上には、まばゆいばかりの天使の輪が輝き、エンディングを迎えます。
映画の記憶は、時に私たちを過去へと誘い、思いがけない発見をもたらしてくれます。
私のように、ある一つのシーンが強い印象として残り、それが実はリメイク版ではなく、半世紀以上も前のオリジナル版の記憶だったというのは、なんとも映画的で、少しロマンチックな話ではありませんか。
そして、私の心の中では、ロバート・デ・ニーロとハンフリー・ボガート、それぞれの「天使たち」が、時間を超えて共演していたりするのです。
古い映画が持つ、時間と記憶とを繋ぐ不思議な力に、改めて魅せられるエピソードでした。
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