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思考の旅・「イッシュー」からはじめるべきか? はじめざるべきか?

イッシューから
 はじめるべきか、
 はじめざるべきか、
 それが問題だ。

その仕事、何のため?

 朝、オフィスに足を踏み入れると、デスクには山積みのタスクリスト。
 メールの通知は次々と鳴り響き、会議の予定はぎっしり詰まっている。

 あなたは今日も、目の前の仕事を一生懸命こなしていく。

 でも、ふと立ち止まって考えてみてほしいのです。

 「一体、この仕事は何のためにやっているのだろう?」と。

 多くの人は、与えられた「To Do」をこなすことに精一杯で、その仕事の「なぜ?」や「何が問題なのか?」という根本的な問いをすっ飛ばしてしまいがちです。

 まるで、目的地もわからず地図の端から端まで線を引いているようなもの。

 それが、今回みなさんと一緒に掘り下げていきたい

「イッシューからはじめるべきか、はじめざるべきか」

というテーマです。

 この問いは、ビジネス書でよく聞かれるフレーズですが、実は私たちの日常生活にも深く関わる、とても本質的な問いかけなのです。

 さあ、一緒に思考の旅に出かけましょう。


1.「イッシューからはじめる」という哲学

 「イッシューからはじめる」とは、簡単に言えば、「本当に解くべき問題(イッシュー)は何か」を徹底的に見極めてから、具体的な解決策を考えるというアプローチです。

 たとえば、会社の売上が落ち込んでいるとします。
 多くの人は、「新しい商品を開発しよう」「広告を増やそう」「価格を下げよう」といった、いきなり解決策に飛びつきがちです。
 しかし、「イッシューからはじめる」人は、まず立ち止まります。

  「なぜ売上が落ちているのか?」

 顧客のニーズが変わったのか?
 競合が強力な新サービスを出したのか?
 それとも、そもそもターゲット層がずれていたのか?

 この「なぜ?」という問いが、まさにイッシューです。

 野球の試合に例えてみましょう。
 ピッチャーは、バッターを打ち取るために球を投げます。
 しかし、ただ闇雲に速い球を投げるだけでは、打たれるリスクが高まります。
 優れたピッチャーは、「このバッターの弱点は何か?」というイッシューを考えます。内角の速球が苦手なのか? 変化球に弱いのか? 相手の特性というイッシューを見極めることで、最も効果的な一球を投げることができるのです。

 このアプローチは、無駄な労力を減らし、本当に価値のあるアウトプットを生み出します。
 まるで、大海原で遭難した船が、羅針盤を頼りに最短ルートで目的地を目指すように、私たちはイッシューという羅針盤によって、確実な成果へと導かれるのです。


2.イッシューからはじめない思考の落とし穴

 一方で、「イッシューからはじめない」という考え方もあります。
 これは、「To Do」や「How(どうやるか)」から思考をスタートさせるアプローチです。

 よくあるのが、「とりあえずやってみよう」精神です。
 一見、行動力があって良いことのように思えますが、これはしばしば「頑張ったけれど、結局何も得られなかった」という悲劇を生みます。

 たとえば、とあるIT企業のエンジニアチームが、「最新のAI技術を導入しよう」と意気込み、莫大な時間と費用をかけてシステムを開発したとします。
 しかし、完成したシステムは誰も使わず、数年後には倉庫の奥で埃をかぶっていました。
 なぜなら、彼らは「どんな問題を解決するのか?」というイッシューを無視して、「ただ最新技術を使いたい」という手段から始めてしまったからです。

 これは、まるで高級なステーキを焼くために、最高級のフライパンや調味料を揃えたものの、そもそも誰も肉を食べたがっていなかった、というような状況です。
 料理の腕前や道具の品質は素晴らしいのに、食べる人がいない。
 これほど悲しいことはありません。

 イッシューを軽視することは、努力の方向性を誤らせ、時間と資源を無駄にしてしまう大きなリスクを伴うのです。


3.イッシュー思考の危険な側面

 では、「イッシューからはじめる」ことは常に正義なのでしょうか?

 答えは、「状況による」です。

 イッシューから入ることには、落とし穴もあります。
 それは、「完璧なイッシューを探し求めるあまり、何も行動できなくなる」というケースです。

 分析に時間をかけすぎて、好機を逃してしまう。

 会議で「本質的な問題は何か?」と議論を重ねるうちに、具体的な行動が全く決まらない。
 これは、まるで「どの道を行けば最も早く目的地に着くか」を完璧に計算するあまり、一歩も家から出られなくなってしまうようなものです。

 イッシュー思考は、行き過ぎると「分析麻痺」を引き起こします。
 現代社会は変化のスピードが速く、すべての情報を集めてから行動するのでは遅すぎることが多々あります。

 また、イッシューは、必ずしも明確な形で存在しているわけではありません。
 特に新しい分野や、まだ誰も解決したことのない問題に取り組む場合、イッシューそのものがぼんやりとしか見えないこともあります。

 このような時は、まずは小さく行動を起こし、その過程でイッシューを探索するというアプローチも重要になります。

 つまり、「イッシューを探しながら進む」というハイブリッドな思考法です。


4.結局、どうすればよいのか?

 では、私たちはどうすればいいのでしょうか。

 結論から言うと、「イッシューからはじめる」ことを思考の第一歩としながらも、それに固執しすぎない柔軟性を持つことが最も重要なのです。

 まず、仕事に取りかかる前に、5分だけでもいいから立ち止まって、自分自身に問いかけてみましょう。

 ・「この仕事は、一体誰の、どんな問題を解決するのだろう?」

 ・「この仕事が成功したとして、その結果として何がもたらされるだろうか?」

 この問いを習慣にすることで、あなたは無駄なタスクに時間を費やすことがなくなり、より本質的な価値を生み出す仕事に集中できるようになります。

 もし、問いの答えがすぐに見つからなくても構いません。
 その場合は、小さく実験してみる。
 そして、その結果から得られるフィードバックをもとに、改めてイッシューを探っていくのです。

 まるで、探偵が手がかりを一つずつ集めながら、事件の全体像を明らかにしていくように。

 私たちは、イッシューという真実のパズルを解きながら、より良い未来を築いていくのです。


書籍の紹介

イシューからはじめよ[改訂版]――知的生産の「シンプルな本質」 Kindle版
 安宅和人 (著)
 英治出版 (2024/9/22)
 イシューとは、「2つ以上の集団の間で決着のついていない問題」であり「根本に関わる、もしくは白黒がはっきりしていない問題」の両方の条件を満たすもの。世の中で問題だと思われていることのほとんどは、 イシュー(今この局面でケリをつけるべき問題)ではありません。 本当に価値のある仕事は、イシューの設定から始まります。
( ※ 書籍の解説等は原則としてリンク先(Amazon)における解説をベースに記載しています。詳細内容はリンク先を参照願います。)

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