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サブスクの「わな」、あなたの財布に潜む「幽霊」 - - ビジネスよもやま話

 サブスクリプションは、現代における『心の年貢』なのです。
 かつての農民が収穫の一部を納めたように、私たちはデジタルの利便性を享受するために、思考の一部を企業に預けて、その対価として毎月決まった額を自動で差し出しています。

 企業にとって最も利益率の高い顧客。それは、毎日サービスを使い倒すヘビーユーザーではありません。一度もログインせず、ただ毎月静かにお金を払い続けてくれる『幽霊ユーザー』なのです。
 彼らはサーバーに負荷をかけず、サポートを煩わせることもなく、純度の高い利益だけを運んできます。


現代の財布は「穴」だらけ

 サブスクリプションという仕組みは、私たちの生活を劇的に変えました。
 映画も音楽も、仕事に必要なツールでさえも、所有せずに「利用する権利」を買う。初期費用を抑えて、常に最新の機能に触れられるその体験は、まるで魔法のようです。

 しかし、魔法には代償がつきまといます。
 かつては財布から小銭が落ちれば音がして気づきましたが、デジタルの決済では音もなく、温かみもありません。
 知らないうちに、私たちは「使っていないもの」にもお金を払うという、奇妙な経済圏に足を踏み入れているのです。


「幽霊経済」が支えるビジネスの裏側

 「幽霊経済」という言葉があります。
 サービスを利用している実態がないのに、解約を忘れたり放置したりしているユーザーによって回る経済のことです。

 ビジネスの現場では「LTV(顧客生涯価値)」の最大化が叫ばれます。
 企業は、いかにユーザーに使い続けてもらうか、いかに離脱を防ぐかに心血を注ぎます。
 しかし、その「継続率」という美しい指標の影には、幽霊化したユーザーの死蔵されたアカウントが少なからず含まれているのが現実なのです。

 企業にとっては、アクティブではないが課金だけが続く状態は、宝の山に見えることでしょう。
 サーバーのリソースを消費せず、カスタマーサービスの手間もかからない。これほど効率の良い収益はないのですから。


解約ボタンという名の「聖杯」を求めて

 いざ、この幽霊を成仏させようと決意したとき、私たちは恐ろしい迷宮に迷い込むことになります。

 まず、解約ページがどこにあるのかが分かりません。
 マイページの深い階層に隠されているのは序の口で、時には公式サイト内をいくら探しても見当たらず、結局「サービス名 解約」で検索をかける羽目になります。

 ようやく見つけたと思えば、そこには長蛇のアンケートが待ち構えています。
  「なぜやめるのですか?」
  「こんな機能もありますよ」
  「今やめるとこれまでのポイントがすべて失効します」。
 これでもかというほどの「未練」を突きつけられて、私たちの決意は削られていくのです。

 さらにひどい場合は、デジタルサービスのはずなのに
  「解約は電話受付のみ」
というケースさえあります。
 平日の限られた時間、繋がらないコールセンターの保留音を聞きながら、私は一体何をしようとしているのかと、遠い目になってしまいます。


企業が仕掛ける「戦略的わな」

 これは単なる不親切ではなく、緻密に計算されたビジネス戦略でもあるのです。

 UI(ユーザーインターフェース)の設計において
  「解約しにくくする」
手法が、時としてダークパターンとして批判されながらも採用されてきました。

 「あと一歩で解約」というボタンの隣に、より目立つ色で「継続する」ボタンを配置する。
 心理学を駆使して、ユーザーに「損をしている」と思わせる。
 開発者たちは、会社の売上のために自らのスキルをその「壁」の構築に費やすことがあります。

 これはある種、作り手と使い手との終わりのない心理戦なのです。


デジタル断捨離で主導権を取り戻す

 このサブスク地獄から抜け出して、幽霊を成仏させるには、少しの工夫と強い意志とが必要です。

 一番効果的なのは、無料トライアルを始めた瞬間に、スマホのカレンダーに「解約期限」を登録すること。これだけで、忘却のコストを大幅に削れます。

 また、月に一度、クレジットカードの明細を「自分への通信簿」として読み解く習慣も大切です。

 BtoBの現場でも同様です。
 退職した社員のライセンスが放置されていないか、使われていないクラウドストレージに高い料金を払っていないか。

 私たちは「便利さ」という麻酔によって、コスト感覚を麻痺させてはいけません。


おわりに

 サブスクリプションは、正しく使えば人生を豊かにしてくれる翼になります。
 でも、その翼が重荷になり、あなたを地面に縛り付けているのなら、一度解き放つ勇気が必要です。

 少しだけ時間を取って、自分のサブスク一覧を眺めてみてください。そこには、今のあなたにとって本当に必要なものだけが残っているでしょうか。

 もし、青白い顔をした「幽霊」が見えたなら、今こそお別れの時かもしれませんよ。

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