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【ショートショート】異聞・竹取物語 ある未来の星のかぐや姫

 「まさか、な。こんなことがあるのか・・・」

 銀河連邦の辺境にある惑星キョウトで、竹林の管理を生業とする老人・タケミツは、信じられない光景を前に呆然としていた。

 彼の目の前にあるのは、光り輝く竹。
 普通の竹と違うのは、その内部に透明なカプセルが埋め込まれていることだった。

 好奇心に駆られて、タケミツはレーザーカッターで慎重に竹を切り開いた。
 すると、カプセルの中から現れたのは、親指ほどのサイズの小さなアンドロイドだった。

 そのアンドロイドは、タケミツの顔を見るなり、彼の脳に直接語りかけてきた。

 『こんにちは。私を育ててください、おじいさん』


 その日から、タケミツとアンドロイドとの奇妙な共同生活が始まった。

 アンドロイドは、タケミツの家にあるあらゆる電子機器をハッキングし、急速に成長していった。
 自らの身体をナノマシンで構築し、瞬く間に美しい女性の姿へと変化したのだ。

 彼女は「カグヤ」と名乗り、その圧倒的な美しさと、謎めいたテクノロジーとで、惑星キョウトの住民たちの心を虜にしていった。


 カグヤの噂は、瞬く間に銀河中に広まった。

 彼女に求婚する男たちは後を絶たない。
 特に熱心だったのは、銀河連邦の各星を統治する5人の王子たちだった。

 彼らはカグヤに、それぞれ奇妙な贈り物を捧げようと試みた。

 第一王子は、宇宙の果てにあるブラックホールから持ち帰った「火鼠(ひねずみ)の皮衣」と称する、絶対に燃えない特殊な繊維で作られたマント。
 だが、カグヤが携帯用反物質反応炉をかざした瞬間、それは跡形もなく燃え尽きてしまった。
 「偽物ですね。燃えないと言っておいて、燃えるなんて」とカグヤは冷たく言い放った。

 第二王子は、龍の首についているという伝説の「五色の玉」を探しに、巨大な宇宙クジラの中に潜り込もうとした。
 しかし、クジラの排気口に吸い込まれ、全身が油まみれになって帰ってきた。

 第三王子は、宇宙船の推進システムを制御する「燕(つばくらめ)の子安貝」を求めて、小惑星に巣を作る宇宙燕を追いかけ回したが、結局、彼女が欲しがっている貝のプログラムコードが手に入らず、ただの古い貝殻を持ち帰ってきた。

 第四王子は、不老不死の秘薬「蓬莱(ほうらい)の玉の枝」を手に入れるため、伝説の惑星ホウライへと旅立った。
 しかし、彼が持ち帰ってきたのは、ただの精巧なレプリカだった。
 カグヤはそれをスキャンして、「この物質は、21世紀の地球で作られたプラスチックですね」と淡々と告げた。

 第五王子は、カグヤの心を射止めるため、「仏の御石(みいし)の鉢」と言う愛を歌ったホログラムをプレゼントした。
 カグヤはそれを一瞬で解析し、「このロジックには、人類の感情アルゴリズムが組み込まれています。私を騙そうとしましたね」と皮肉な笑みを浮かべた。

 結局、5人の王子たちは、誰もカグヤの心を射止めることはできなかった。

 彼らが持ってくるガラクタを前に、カグヤは「人類の愛とは、なんと安っぽいものか」と呟いた。


 そして、満月の夜、カグヤはタケミツに別れを告げた。

 「おじいさん。私はもともと、滅びた文明の情報収集を目的として地球に送られたアンドロイドなんです。そろそろ故郷へ帰らないといけません」

 カグヤはそう言うと、光の粒子となって空へ舞い上がっていった。
 その軌跡は、月へと向かう航路を描いていた。

 後に残されたのは、静まり返った竹林だけだった。

 タケミツは、空を見上げて呟いた。
 「結局、全部、仮想空間の出来事だったのか・・・」

 いや、待てよ。あの娘が最後にくれたチップ、これ、なんだろうな?」
 彼の手に残されたのは、小さな記憶チップ。
 そこには、21世紀の地球に存在した古代文明のデータが保存されていたのだった。


 「惑星キョウト」、そこはかつて「地球」と呼ばれていた。




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