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パーソナルコンピュータの夜明け - - パソコン黎明期の記憶

 かつてコンピューターは、大学・企業・政府機関などが所有する大型のもの(メインフレーム)でした。
 それは一つの部屋を占領するほどの巨大な機械で、非常に高価なうえに、扱うには専門知識が必要でした。

 それがどうでしょう。今や手のひらサイズになり、私たちは場所を選ばずに、世界中の情報に瞬時にアクセスすることができるのです。

 この記事では、この劇的な変化の主役である「パーソナルコンピュータ(パソコン)」がどのように生まれ、そして私たちの生活やビジネスを変えたのかと言う、その黎明期の記憶を辿ります。


1.パソコンとは何か

1.1 ハードウェアとソフトウェアの革命

 1960年代〜1970年代にかけて、半導体技術とマイクロプロセッサの発展によって、安価で小型のコンピュータを個人が持てる時代が到来しました。

 パソコンの実現には、二つの大きな技術革新が不可欠でした。

 一つは、コンピュータの頭脳であるCPU(中央演算処理装置)を、手のひらサイズの集積回路(ICチップ)に凝縮したこと。
 これによって、それまで巨大だったコンピュータを、机の上に置けるサイズまでに縮小することが可能になりました。

 もう一つは、「ソフトウェア」です。
 ハードウェア(機械)が小型化しても、使い方が複雑では個人には普及しません。
 誰もが簡単に操作できるオペレーティングシステム(OS)や、ワープロ、表計算といった実用的なアプリケーションの登場が、コンピュータを「研究者の道具」から「万人の道具」へと変貌させたのです。


1.2 「パーソナルコンピュータ」の語源と概念

 そもそも「パソコン」とは何でしょうか?
 正式には「パーソナルコンピュータ」と言います。

 「personal computer」
  ・personal(個人の、個人的な)
  ・computer(コンピュータ、計算機)

 文字通り、「個人(パーソナル)が使うためのコンピュータ」という意味です。

 つまり、「個人が自分で使うための計算機」という意味が原義となっています。

 この「パーソナルコンピュータ」という言葉が広まった背景には、アメリカでのある運動があります。
 それは、1970年代に生まれた「ホームブリュー・コンピュータ・クラブ」のような、ITオタクやアマチュアたちが集まって、自分たちでコンピュータを組み立て、自由に使いこなそうという草の根的なムーブメントでした。

 彼らが求めたのは、企業や政府の「支配」から解放されて、個人の創造性や自由のために使えるコンピュータでした。

 ここに、「パーソナル」という概念が強く結びついて、単なる機械ではなく「個人の能力を拡張するツール」として、その存在が確立されていったのです。

パーソナルコンピュータ(PC)とは
 個人が所有し、個人の目的(仕事、教育、娯楽など)のために使用することを想定した、汎用の小型コンピュータ。
 【特徴】
  ・個人が購入・操作可能な価格・大きさである
  ・オペレーティングシステムを備え、複数の用途に使える
  ・入出力装置(キーボード・ディスプレイ等)を備える
  ・一人の利用を前提とする

1.3 「マイコン」と「パソコン」の違い

 実は、日本では「パソコン」という呼び方が定着する前に、「マイコン」という言葉が広く使われていました。
 これは「マイクロコンピュータ」の略です。

 初期のコンピュータは、電子工作の部品のように自分で組み立てるものが多く、趣味の道具という側面が強かったため「マイクロコンピュータ」と呼ばれていました。

 しかし、1980年代になってNECの「PC-8001」などの、完成品として販売され、家庭やビジネスで実用的に使われる機種が登場すると、「パーソナルコンピュータ」を略した「パソコン」という呼び方が主流になっていったのです。


2.パソコン誕生から定着まで

2.1 パーソナルコンピュータ黎明期の動き

 パーソナルコンピュータの歴史を語る上で欠かせないのが、1970年代半ばのアメリカです。

(1)1975年 Altair 8800の登場
 世界初のパーソナルコンピュータとされています。
 個人向けの組み立てキット形式で販売されて、熱狂的なマニアが購入しました。
 雑誌『Popular Electronics』で紹介されたことで、「personal computer」という言葉が広まる契機になりました。

(2)1976年 Apple Iの登場
 組み立て済みで販売された最初期の「個人用コンピュータ」です。
 スティーブ・ジョブズ とスティーブ・ウォズニアックによって作られました。

(3)1977年  「御三家」の誕生
 Apple II、Commodore PET、Tandy TRS-80が相次いで登場しました。
 これらは「完成品」として販売され、キーボードやモニタを接続してすぐに使える形だったため、一般への普及を後押ししました。
 特にApple IIは、美しいカラーグラフィックスと、Visicalcという初の表計算ソフトの登場によって、それまで手作業だった複雑な計算業務を劇的に効率化しました。
 これによって企業の意思決定のスピードを上げ、「パソコンはビジネスに不可欠な道具だ」という認識を決定づけたのです。

(4)1981年 IBM PCの登場
 巨大企業IBMが参入したことで、パソコンが「ビジネスツール」としての地位を確立しました。
 「Personal Computer(パーソナル・コンピュータ)」の略称である「PC」 が一般名称として定着しました。
 現在のWindowsパソコンの基本構造である「オープンアーキテクチャ」の土台を築きました。

(5)1984年 Macintosh の登場
 現在のパーソナルコンピュータの原型を形作った革新的な出来事でした。
 グラフィカルユーザーインターフェイス(GUI)、マウスの採用、オールインワン設計が特徴です。
 このMacintoshは、後のWindowsのGUIにも多大な影響を与えました。
 発売当初の主なアプリケーションは MacPaint(お絵描きソフト)と MacWrite(ワープロ)。
 クリエイティブ分野(デザイン・DTP・音楽など)では特に愛用され、Appleのブランドイメージを確立しました。


2.2 日本での「パソコン」定着とビジネス革命

 日本では、1979年にNECから発売された「PC-8001」が、「マイコン」から「パソコン」への架け橋となりました。
 「PC」という名称を冠したこの機種は、高い性能と比較的使いやすい設計で、日本におけるパソコンブームの火付け役となります。

 その後、シャープの「X1」シリーズや富士通の「FM-7」など、様々なメーカーが参入して、激しい競争が繰り広げられました。

 この競争は、ゲーム文化の発展を促すとともに、ビジネス分野では日本語ワープロや表計算ソフトの開発を加速させて、日本企業のデスクワークを根底から変革していきました。


3.歴史的意義と残された余韻

 パソコンの誕生は、単なる技術革新ではありませんでした。
 それは、「情報の民主化」をもたらした、人類史における大事件だったのです。

 巨大な組織にしかなかった情報を扱う力を、個人一人ひとりの手元にもたらしたこと。
 これが、パソコンの最大の歴史的意義と言えるでしょう。
 これによって、個人が情報を発信し、ビジネスを立ち上げ、世界と直接繋がることが可能になりました。

 パソコン黎明期の記憶は、私たちに「未来は、誰か偉大な発明家が作るのではなく、熱意ある普通の人々の手に委ねられている」という真実を教えてくれます。

 今、あなたの手元にあるコンピュータは、その挑戦と自由の精神との結晶なのです。

 この物語は、もちろん終わりません。
 クラウド、AI、量子コンピュータ・・・・
 新しい技術が次々と登場して、私たちは常に「パソコンの次」を探し続けています。
 しかし、その根底にある「個人の能力を拡張して、世界を変える」という精神は、パソコンが灯した光として、これからも受け継がれていくことでしょう。





書籍の紹介

スティーブ・ジョブズ I /II
 ウォルター・アイザックソン (著)
  井口耕二 (翻訳)
 講談社 (2011/10/24)
 アップル創設の経緯から、iPhone、iPad誕生秘話、そして引退まで、スティーブ・ジョブズ自身がすべてを明らかに。本人が取材に全面協力したからこそ書けた、唯一無二の記録。伝説のプレゼンテーションから、経営の極意まで。経営者としてのジョブズの思考がたっぷり詰まった内容。ビジネス書、経営書としても他の類似書を圧倒。
( ※ 書籍の解説等は原則としてリンク先(Amazon)における解説をベースに記載しています。詳細内容はリンク先を参照願います。)

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僕らのパソコン 30年史 ニッポン パソコンクロニクル Kindle版
 SE編集部 編集
 翔泳社(2012/12/20)
 写真で振り返る、ニッポンのパソコン歴史教科書。30年以上を通して変化したパソコンを2部構成で、写真を多用し世相にも触れながら、時間の流れの中で大きな変化をわかりやすく解説。第1部を年代ごとのトピックの解説にあて、当時の開発者や関係者への「証言(ターニングポイント)」を盛り込み、開発秘話などを明らかにしている。第2部では、PCアーキテクチャなどをテーマごとにまとめている。
( ※ 書籍の解説等は原則としてリンク先(Amazon)における解説をベースに記載しています。詳細内容はリンク先を参照願います。)

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